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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限>引用▶個別事例①(冊子/宣伝チラシ等)

[冊子]
平成27924日大阪地方裁判所[平成25()1074]
被告らは,本件冊子における本件ピクトグラムの絵の部分の利用は,引用に該当する旨主張する。
著作権法32条1項の規定によれば,他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用の目的との関係で正当な範囲内,すなわち,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要である。
本件ピクトグラムは,大阪市の主要な観光施設をサインシンボル化し,これを案内表示等に活用するという同市の国際観光イメージ戦略の一環として制作されたものであるところ,本件冊子は,大阪の観光ガイドとして,地図や路線図を見る利用者に観光対象となる施設とその場所を,掲載ピクトグラムを配することにより認識させるために掲載したものである。そうすると,本件冊子における本件ピクトグラムの掲載は,本件ピクトグラムが有する価値を,本来の予定された方法によってそのまま利用するものであるということができ,他の表現目的のために本件ピクトグラムを利用しているものではないから,このような利用態様をもって,目的上正当な範囲内で行われた引用であるとはいえない。

[宣伝チラシ等]
▶平成30619日東京地方裁判所[平成28()32742]
被告は,被告小冊子,被告パンフレット,被告特別割引券,被告展示案内チラシ,被告イベント案内チラシ及び被告Facebookへの投稿における一竹作品等の複製は,著作権法32条1項の「引用」に当たると主張する。
そこで検討するに,著作権法32条1項所定の適法な引用と認められるためには,①引用されるのが公表された著作物であること,②引用であること,③公正な慣行に合致すること,④報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること,が必要である。
これを本件についてみるに,被告小冊子,被告パンフレット,被告特別割引券,被告展示案内チラシ,被告イベント案内チラシ及び被告Facebookは,いずれも一竹美術館の顧客誘引目的に作成されたものであるところ,それらにおける一竹作品等の利用は,一竹美術館に顧客を誘引するために,一竹作品が美術館の展示品であることを示すもので,それ自体が主たる内容として用いられているものである。旧HPコンテンツの利用も,それ自体を主たる内容として掲載するものである。そうすると,これらはいずれも,そもそも引用に当たらないか,少なくとも公正な慣行に合致し,引用の目的上正当な範囲内で行われているものとは認められないから,著作権法32条1項の「引用」に当たらない。
したがって,被告の主張はいずれも採用できない。

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