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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限>引用▶個別事例②(ウェブページ/投稿記事/ブログ)

[ウェブページ]
平成29321日大阪地方裁判所[平成28()7393]
被告は,原告コンテンツをそのまま自らの本件ウェブページに転載したものであり,不特定多数の者が本件ウェブサイトにアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることからすると,被告は,原告の複製権及び公衆送信権を侵害したものというべきである。
被告は,これら記載の掲載行為は著作権法32条1項の「引用」に該当する旨主張する。
しかし,被告が引用した原告コンテンツの一部の傍らには,本件記載のようなコメントが付されているのであって,これらコメントを付す行為は,原告製品ひいては原告を批評するという公益を図る目的でされたものとは認められず,むしろ原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為というべきものであり,また売主の説明責任を果たすための正当な行為と認めることもできないことからすれば,その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともということはできない。
したがって,被告による原告コンテンツの掲載行為を,著作権法32条1項の「引用」として適法と認めることはできない。
なお,被告は,原告コンテンツはそれ自体経済的価値を有するものとして市場で取引されるものではないなどと主張するが,その指摘はそうであるとしても,これをもって「引用の目的上正当な範囲内で行なわれ」たということはできない。

[投稿記事]
平成30130日東京地方裁判所[平成29()37117]
被告は,本件投稿記事における本件引用部分の複製について,本件投稿記事においては原告記事を批評する目的で本件引用部分を引用したものであり,当該引用は公正な慣行に合致し,正当な範囲内で行われたから,適法な引用(著作権法32条1項)に当たると主張する。
本件投稿記事は,その内容及び個別の投稿記事の終わりの「続く」の記載等を踏まえると,本件投稿記事1~20が,それぞれ一体の文章であると認められる。
以上の一体の文章としてみた各本件投稿記事には,いずれも本件利用者が独自に作成したと考えられる部分(以下「独自部分」という。)と本件引用部分がある。独自部分は各本件投稿記事の冒頭か末尾又はその双方にあり,冒頭にあるものは本件引用部分との間に空白の行があるか破線が記載されるなどし,末尾にあるものは本件引用部分との間に破線が記載されている。
ここで,一体の文章としてみた各本件投稿記事において,本件引用部分が相当のまとまりをもった原告記事を複製したものであるのに対し,独自部分は,特定のURLだけ,短歌1首と記事の標題だけ,短歌2首と本件引用部分の紹介文だけ,短歌1首又は2首だけというものが多く,本件利用者によると考えられる批評等が記載されている記事においても,その批評等はいずれも簡潔なものである。上記のうち,本件利用者によると考えられる批評等が記載されていない本件投稿記事における本件引用部分は,いずれも被告が主張する批評目的による原告記事の利用であるとは直ちには認め難い。また,本件利用者によると考えられる批評等の記載がある記事をみても,その批評等は簡潔なもので,独自部分における批評等が本件引用部分全部を批評するものとはいえないし,本件引用部分全部を利用しなければ批評の目的が達成できないものともいえず,批評のために本件引用部分全体を利用する必要があるとは認め難い。仮に,独自部分の短歌に批評の趣旨があるとしても同様である。
そうすると,本件引用部分の利用は,いずれも,少なくとも原告記事を批評する目的上正当な範囲内のものであるということはできないから,これが「引用」であるか否かその他の著作権法32条1項の要件について判断するまでもなく,本件投稿行為が同項の引用として適法となることはない。

▶令和21014日東京地方裁判所[令和2()6862]
著作権法32条1項によって著作物を引用した利用が許されるためには,引用が,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。
しかし,本件投稿記事は,本件新聞記事2の内容を批評するものであると認められるところ,本件写真を掲載して勤行法要の様子等を伝える本件新聞記事1は,本件新聞記事2とは別の記事であり,内容的にも本件新聞記事2とは無関係であるから,本件新聞記事2の批評のために本件写真を本件投稿記事に掲載する必要はない。
したがって,本件写真の本件投稿記事への掲載は,引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるということはできないので,適法な引用(著作権20 法32条1項)には当たらない。

▶令和3511日大阪地方裁判所[令和2()10932]
ア 認定事実
() 原告画像の掲載態様
本件コーナーは,原告サイトの中でも,「P1 YOUR EYES ONLY」の題名で表示される,一連の雑誌形式のウェブページであり,各コーナーに一人ずつ,前記男女の俳優等の著名人を取り上げている。本件コーナーは,前記著名人の経歴や出演作品等,同人に対する取材記事を中央に配し,その周囲に,同人のポートレート写真数枚(その中に原告画像が含まれる。)を配するほか,取材を行って記事を執筆した者の氏名,及び写真の撮影を行った者として原告代表者の氏名とその経歴が記載されている。
() 本件各記事の内容,構成,原告各画像の利用態様等
(略)
イ 検討
() 著作権法32条1項の引用は,公表された他人の著作物を自己の作品の中に採録する行為であるが,自己の作品と他人の著作物との間に,報道,批評,研究その他の目的のためにこれを利用するとの関係が必要であり,このような意味での引用にあたる場合に,それが公正な慣行に合致するか,引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるかを次に検討することになる。
() 前提事実,上記認定事実ア()及び弁論の全趣旨によれば,本件各記事は,本件各投稿者が各々に投稿したものであって,体裁も内容もそれぞれ異なるものであるが,主として掲載されているのは,原告各画像の被写体である俳優等のプロフィール,経歴,関係作品及びいわゆるゴシップといわれる話題等を含む同人らに関するエピソード等並びにそれらに対する本件各記事の作成者の推測や感想等を記載した文章と,その文章の冒頭や文章中において掲載された原告各画像を含む画像から構成される記事である。
上記認定事実ア()によれば,本件各記事において,原告各画像は,相当程度の大きさで,画像(写真)の全部又は主要部分が掲載されており,その結果,各被写体の写真として鑑賞することができる状態が維持されたまま掲載されているといえる。他方,上記認定事実ア()で検討したとおり,本件各記事の中に,原告各画像を参照して何かを説明したり,原告各画像について論評したり,本件コーナーの記事内容を論評するために,原告各画像に言及するといった記載は一切存在しない。
また,本件各記事は,本件記事19,同20及び同25を除き,原告各画像の出典や,本件各投稿者以外の者によって撮影されたものである事実が明示されていたとは認められないし,本件記事19及び20についても,原告各画像の出典元の記載としては不正確なものであり,本件記事25は,第三者が作成したものを転載したため偶然原告代表者が撮影者であることが掲載されたものに過ぎない。
本件各記事と原告各画像との関係について検討するに,上記認定のとおり,本件各記事において,原告各画像を参照したり,これに言及したりするということがなされていないことから,本件各記事との関係で,原告各画像を利用する何らかの目的があったと認めることはできないし,俳優等の著名人の写真を掲載するにあたり,パブリックドメインに属する写真や本件各投稿者において許諾を取得し得る写真ではなく,原告各画像を掲載しなければならなかったとする事情のようなものも認められない。結局のところ,本件各投稿者は,本件各サイトを閲覧する者を増やす目的で,原告各画像と本件各記事とを共に展示しているにすぎず,何らかの目的で本件各記事の中に原告各画像を採録し,利用するといった関係は存在しないから,本件各記事における原告各画像の利用は,そもそも引用にはあらたないというべきであり,公正な慣行に合致するか否か,その目的上正当な範囲内で行われたか否かを論じる必要はないことになる。
() 以上を総合すると,本件各記事における原告各画像の利用は,引用の法理(著作権法32条1項)により適法とされる場合には当たらない。

[ウェブページ+投稿記事]
▶令和393日東京地方裁判所[令和3()6718]
適法な引用の成否について
ア 証拠によれば,本件ウェブサイトは,各種競艇予想サイトについて,予想が当たるか否かを比較したり,これらを利用した者等から批評の投稿を募り,この投稿を競艇予想サイトごとに掲載したりするウェブサイトであること,本件ウェブページは,本件ウェブサイトのうち,原告及び原告ウェブサイトを批評することを目的とするウェブページであること,本件ウェブページの上部に本件画像が掲載され,「皆様からのTOP TREND(トップトレンド)の情報提供をお待ちしております。」との記載に続いて,「運営会社詳細」として,原告ウェブサイト名並びに原告の商号,運営者,電話番号及び住所が記載されているが,本件発信者自身の原告又は原告ウェブサイトに対する批評は記載されていないこと,上記「運営会社詳細」の記載の更に下には,多数人から投稿された原告又は原告ウェブサイトに関する批評が順次記載され,それらの投稿は,原告の予想やビジネスモデルの適否に関するものがほとんどであり,他方で,最上段には「これが競艇のプロ集団のやるですか」,中段には「写っている人間が金持ってそうに見えないってところ(笑)」,最下段には「ガッツリ顔出してるけど,ここのサイトはどんな感じなんかね?」といった投稿も存在すること,記載された投稿を全て除くと,本件画像は本件ウェブページのうちかなりの大きさを占めていることが認められる。
イ 他人の著作物を引用した利用が許されるためには,その方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要であるというべきである。
前記アの認定事実によれば,本件ウェブページは,主として,第三者から投稿された原告又は原告ウェブサイトに関する批評を掲載するためのウェブページであり,本件発信者自身は,原告の商号や運営者等の情報を記載したものの,原告又は原告ウェブサイトに関する批評を全く記載しておらず,ましてや本件画像に関する意見は何も記載していないということができる。また,本件発信者は,原告に関する情報の提供を呼び掛けてはいるが,本件画像に関する意見を求めたものではなく,実際に投稿された批評を見ても,原告の予想やビジネスモデルの適否に関するものがほとんどであり,むしろ,本件画像を単に揶揄するようなものも含まれている。これらの事情に鑑みると,本件ウェブページにおいて,批評の対象である原告ウェブサイトを示すために,本件画像[(注)原告画像のうち,8名の人物が写った写真(「原告写真」)を含む部分(「原告画像一部」)と同一である]を掲載する必要性は乏しいといわざるを得ない。
さらに,前記アのとおり,第三者からの投稿を除くと,本件画像は,本件ウェブページにおいてかなりの大きさを占めており,また,本件ウェブページを子細に検討しても,その出典が明確に記載されているとは認められない。
以上によれば,本件ウェブページにおいて本件画像を掲載することによる原告画像を利用した行為は,その方法や態様からして,原告又は原告ウェブサイトを批評する投稿を募り,これを掲載するという目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるとはいえないし,引用して利用することが公正な慣行に合致するともいえないから,適法な引用(著作権法32条1項)には該当しない。
ウ これに対して,被告は,① 本件ウェブページは原告に対する口コミ等が中心であり,本件画像は本件ウェブページ全体の表示割合のごく一部を構成するにすぎないから,本件ウェブページと本件画像とを明瞭に区別して認識することができる上,分量的にも内容的にも,原告に対する口コミ等が主であり,本件画像は従であること,② 本件ウェブページは競艇予想サイトを批評することを目的とするところ,原告ウェブサイトがどのようなものかを掲載することはその重要な要素であり,「運営会社詳細」として引用元も記載されていることからすると,本件発信者が本件ウェブページに本件画像を掲載することにより原告画像を引用したことは適法な引用であると主張する。
しかし,上記①について,前記前提事実(等)によれば,本件ウェブページにおける最上段の投稿には本件画像の最上部にある「競艇予想のプロ集団」というフレーズに類似した「競艇のプロ集団」との記載があり,中段の投稿には「写っている人間」との,最下段の投稿には「ガッツリ顔出してるけど」との各記載があることからすると,本件ウェブページの投稿は,いずれも本件画像が掲載されていることを前提としたものであり,本件発信者が本件画像を本件ウェブページに掲載した時点で,第三者からの投稿はなかったと推認するのが相当である。そうすると,前記アのとおり,本件ウェブページには本件発信者自身の原告又は原告ウェブサイトに関する批評は記載されておらず,本件画像が掲載された時点において,本件画像は本件ウェブページにおいてかなりの大きさを占めていたものであるから,本件画像が分量的にも内容的にも従たる役割しか果たしていなかったとはいえない。
また,上記②について,前記アの認定事実によれば,本件ウェブページは,競艇の予想が当たるか否かという観点から,原告又は原告ウェブサイトを批評することを目的としたものであることは明らかであり,本件画像はそのような批評の対象となるものとはいえないから,本件画像を掲載する必要性があったとはいえない。本件画像を見れば,原告ウェブサイトにおける画像であろうことは推測できるが,URLの記載はないし,いつの時点のものかも明らかではないから,引用元が明確かつ正確に記載されたとはいえない(前記前提事実のとおり,原告画像一部は,かつての原告ウェブサイトの一部分を切り取ったものである。)。
したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。

[ブログ]
▶令和2925日東京地方裁判所[令和2()9105]
本件記事は,「夜景見るの好き?」というタイトルのブログであって,「夜景を見るの大好き」,「お父さんが単身赴任中,お母さんと私と妹と愛犬とよく和歌山県の夜景を見に出掛けたことある」,「他の都道府県の夜景もキレイかも知れないけど私は和歌山県の夜景が一番好きかな」との5行の記載に続いて,和歌山県方面ではなく大阪府方面の夜景を撮影した本件写真画像を複製した本件投稿画像が掲載され,その直下に「どの町の夜景もキレイで好き」との1行の記載がされたものであると認められる。
そうすると,本件記事は,本件投稿者が,夜景を見ることが好きであり,特に和歌山県の夜景を一番好んでいるという自身の嗜好を,夜景に関する思い出とともに記載したものであると理解できるが,このような嗜好や思い出を記載する中で本件写真画像を利用する必要性は乏しいというべきである。
しかも,本件写真画像は,大阪府方面を撮影したものであって,本件記事の内容とは直接的な関連がないのみならず,本件写真画像を複製した本件投稿画像が「他の都道府県の夜景もキレイかも知れないけど私は和歌山県の夜景が一番好きかな」との記載と「どの町の夜景もキレイで好き」との記載の間に配置されていることから,本件記事の読者が和歌山県内の夜景写真であると誤認する可能性もある。
また,本件記事は,本文が4文(6行)と非常に短いため,本件投稿画像が本件記事全体の相当の部分を占めているといえる。
以上によれば,本件記事における本件写真画像の利用は,「報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内」のものであるとも,「公正な慣行に合致するもの」とも認められないというべきである。
したがって,本件投稿者による本件写真画像の利用は,適法な引用(著作権法32条1項)には該当しない。

▶令和31019日東京地方裁判所[令和3()14939]
前提事実で認定したとおり,本件投稿者は,元投稿写真及び元投稿記事を複製してブログサービスに投稿して(本件投稿),公衆送信したことが認められる。これに対し,被告は,本件投稿は著作権法32条の引用に当たるため,原告の権利を侵害するものではないと主張する。
しかし,本件投稿記事は元投稿記事の一部及び元投稿写真のみからなるものであって,本件投稿記事において,本件投稿者は,自己の作品中に,元投稿記事及び元投稿写真を他人の著作物として区分して批評等の目的のために利用しているものではなく,元投稿記事及び元投稿写真が引用(著作権法32条1項)されたということはできない。
被告は,スレッドタイトル[注:「【画像あり】 フェミニストが腋毛をアピール『ふさふさしてて可愛いよ』」とのタイトルが付されたスレッドのこと]と本件投稿を一体のものとしてとらえ,スレッドタイトルとの関係で本件投稿が引用であると主張する。しかし,スレッドタイトルはブログサービスにおける特定のスレッドのタイトルである一方,本件投稿は,そのタイトルのスレッドに投稿された一つの投稿であり,スレッドタイトルと本件投稿が直ちに一体のものととらえられるとはいえない。また,仮に本件のスレッドタイトルと本件投稿を一体のものととらえることができる事情が認められ,スレッドタイトルにより本件投稿記事を紹介するものととらえたとしても,スレッドタイトルの内容がごく簡単に事実を述べるものであるのに対し,本件投稿記事は元投稿記事のほぼ全て及び元投稿写真を利用するものであって,元投稿記事等の利用が引用の目的上正当な範囲内のものであるとは認められない。
被告は,元投稿記事にハッシュタグが付されていることをもって,原告が拡散を意図しており,転載を禁止していないと主張する。しかし,元投稿記事にハッシュタグが付されていることが引用(著作権法32条1項)についての上記判断を左右するものとはいえない。なお,ハッシュタグが付されていることから,原告が,元投稿記事及び元投稿写真をその投稿したサービスにおいて多数の読者に閲覧してもらうことへの希望があることが推認できるとしても,このことをもって,原告が元投稿記事及び元投稿写真を,上記による閲覧とは別に複製,転載することを許容しているとは認められない。
よって,本件投稿記事につき,著作権法32条1項所定の引用が成立するとはいえず,他に著作権侵害の成立を阻却する事情は認められない。

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