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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限>引用▶個別事例④(教科書国語テスト/小説

[教科書国語テスト]
▶平成120911日東京高等裁判所[平成12()134]
引用する著作物に当たる平成11年度2学期用の本件国語テストにおいて、引用される著作物に当たる本件各著作物の一部又は全部は、四角の枠で囲んで他の部分と区分して収録されており、引用する著作物の表現形式上、引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができるものと一応認めることができる。
しかしながら、本件各著作物の収録部分(表面上段)と設問部分(表面下段)とについて見ると、該各著作物(教科書に掲載された部分)からの国語テストに収録する部分の選定、設問部分における問題の設定及び解答の形式の選択(穴埋め式の解答文や選択肢の設定を含む。)、その配列、問題数の選択等に、児童による教科書の理解及びその理解度の測定等を目的とした、相手方らの創意工夫があることは認められるものの、その場合における教科書の理解とは、具体的には、教科書に掲載された本件各著作物に表現された思想、感情等の理解ということに他ならず、したがって、右問題の設定、配列等における相手方らの創意工夫も、直接には、児童に該各著作物の収録部分を読解させること、すなわち、本件各著作物の一部又は全部に表現された内容それ自体をいかに正確に読み取らせ、また、それをいかに的確に理解させるかという点に収斂するものであって、該各著作物の創作性を度外視してはあり得ないものであると言わざるを得ない。そして、このことに、本件各国語テストにおける本件各著作物の収録部分とそれ以外の部分(表面下段の設問部分及び裏面の設問等の部分)との量的な割合等を併せ考慮した場合には、引用される著作物の部分を、本件各国語テストにおける、各著作物の収録部分(表面上段部分)に限ってみたとしても、引用する側の著作物が主であり、引用される側の著作物が従であるという関係が存するものとは到底認めることができない。
したがって、平成11年度2学期用の本件国語テストに本件各著作物の一部又は全部を採録したことが、著作権法321項所定の引用に当たるとすることはできない。

[小説]
▶平成160531日東京地方裁判所[平成14()26832]
「引用」とは,自己の著作物中に,他人の著作物の原則として一部を採録するものであり,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ,かつ,上記両著作物の間に,前者が主,後者が従の関係があると認められる場合をいうと解すべきである(最高裁昭和55328日第三小法廷判決参照)。
これを本件について見るに,①利用されたのは中国語で書かれた本件詩9編全文であり,これが日本語に翻訳され,利用したのは日本語で書かれたモデル小説であること,②本件詩の翻訳は,表現形式上は,被告小説の本文と区別して行間を開けた上,本文と異なる字体で記載され,被告小説の巻末に,利用された本件詩の出所が明示されているが,本件詩の一部においてはその題号が巻末以外には掲載されていないし,題号が掲載されているものも本文中に記載されており,本件詩と同じ位置に同じ字体で記載されているわけではないこと,③本件詩は,被告小説において,主人公小悦が「南国文学ノート」と題された詩集に収録されている詩を読むという設定の下に小悦の心情を描写するために利用されたものと,本文中には何の出典もなく単に主人公小悦の心情を描写するために利用されたものとがあるが,いずれも本文中のストーリーの一部を構成していること,④被告小説における本件詩の利用目的は,それを批評したり研究したりするためではなく,本文中においてある場面における主人公小悦の心情を描写するためであることは,前記で認定したとおりである。そして,これらの事情に,当該場面において当該心情を描写するために必ずしも本件詩を利用する以外の方法がないわけではないことを併せ考慮すれば,本件においてその引用が公正な慣行に合致し,かつ,引用の目的上正当な範囲内で行われたものということはできず,被告小説における本件詩の利用は,著作権法321項所定の引用に当たるということはできないと解される。

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