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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限>引用▶個別事例⑧(他のツイートのスクリーンショットの添付の「引用」性)

▶令和475日東京地方裁判所[令和3()14780]
2 前提事実
(1) 当事者
原告は、ツイッター上で、ユーザ名を「@(以下省略)」、アカウント名を「(省略)」とするアカウント(以下「原告アカウント」という。)を利用している。
被告は、ツイッターを運営する米国法人である。
(2) 原告イラスト等
ア 原告は、第三者がインターネット上で公開したイラスト(少年が笑顔で犬と戯れ、傍で少女がそれを見守っている構図のイラスト。)について、当該第三者の許諾を得た上で、少年が真剣な表情でキャンバスにスケッチをし、傍で少女と犬がそれを見守っているという構図に変更すると共に、色調を和らげるなどの変更を加えて、【原判決別紙著作物目録】記載のイラスト(以下「原告イラスト」という。)を作成した。
原告イラストは、二次的著作物として原告を著作者とする絵画の著作物であり、原告がその著作権を有すると認められる。
イ 原告は、原告イラストのうち少年及び少女の姿部分のほぼ全体並びに犬の頭部が【アイコンに含まれるものとなるように自らのツイッターアカウントのプロフィール画像を設定し、当該画像が丸くトリミングされた原告アイコンが作成された】。
(3) 原告ツイート
原告は、平成 25 9 16 日、原告アカウントを用いて、本文に「宮島の鹿たちが、餌やり禁止によって餓死し、虐待のために命を落としていることについて、海外の方も含めて多くの人々が心を痛めています。このような現状に対して、広島県と廿日市市は人道的な対策を講じられますように。#(以下省略)」と記載したツイート(以下「原告ツイート」という。)をツイッターに投稿した。
ツイッターにおいては、利用者が投稿したツイートの本文の左上部分に、利用者が任意に【プロフィール画像として設定した】画像を丸くトリミングした画像が利用者のアイコンとして小さく表示され、その右側に、利用者のアカウント名及びユーザ名が表示される仕様になっている。
このため、原告ツイートにおいても、その本文左上部分に原告アイコンが小さく表示され、その右側に、原告アカウントのアカウント名及びユーザ名が表示された。
(4) 本件ツイート
氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)は、令和 3 4 6 日、ユーザ名を「@(以下省略)」とするツイッターのアカウント(以下「本件アカウント」という。)を用いて、第三者のツイート(以下「ツイート B」という。)に対する返信として、本文に「≫#宮島の鹿の事はもう世界の関心事~/10 年近く前からそう仰る方々がいますが、それなら何故これまで何の進展も無いのでしょうね?/本当に『世界の関心事』なのかどうか一度ご自身でご確認されてはいかがですか?/#宮島」(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)と記載すると共に、宮島の鹿に関するツイートのスクリーンショット 2 つを添付したツイート(以下「本件ツイート」という。)を投稿した。2 つのスクリーンショットのうち 1 つが、原告ツイートの画像(以下「本件投稿画像」という。)である。
本件ツイートの本文と共に【表示されているのは本件投稿画像の一部であって】、原告ツイートに含まれる原告アイコン並びに原告アカウントのアカウント名及びユーザ名の全体と共に本文の一部等が表示され(ただし、令和 3 5 18 日【時点の状態である。】)、【その表示された部分(以下「本件投稿画像部分」という。)】をクリックすることで、本件投稿画像全体を表示するページに遷移し得る。
(5) 本件規定
被告は、「Twitter サービス利用規約」を定めているところ、このうち「4.本サービスの利用」の項には、「ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitter サービス、本規約または https://(以下省略)に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。」との規定(以下「本件規定」という。)がある。
(6) 引用リツイート機能等
被告は、ツイッター上で、既存の他のツイート(以下「引用元ツイート」という。)を引用し、これに自身のコメントを付して 1 つのツイートとして投稿する引用リツイート機能を提供している。この機能を使用したツイートが投稿されると、投稿者の付したコメント(本文)に続いて引用元ツイートへのリンクが添付され、このリンクをクリックすることで引用元ツイートそのものに遷移し得る。そこでは、引用元ツイートの投稿者のアイコン、アカウント名、ユーザ名、本文等が表示されるが、引用元ツイートの投稿者が当該ツイートをした後にアイコンを変更した場合、引用リツイート機能により表示される引用元ツイートのアイコンは変更後のものとなる。
他方、ツイッターの利用者は、パソコンやスマートフォン等を使用して【既存の他のツイートのスクリーンショットを作成し、これを】自己のツイートに画像として添付して投稿することによって、引用リツイート機能を使用することなく、他のツイートを自らのツイートにおいて表示させることも可能である。ツイッター上には、この方法を用いて投稿されたツイートが多数存在している。
(略)
4 当裁判所の判断
1 公衆送信の有無(争点 1)について
本件投稿画像において、原告アイコンは、本件ツイートの本文と共に表示されている場合及び本件投稿画像全体の表示ページに遷移した場合のいずれも、その表示自体から、原告イラストの構図及び色調等を認識することが可能であり、原告イラストの表現上の本質的特徴を直接感得し得るものといえる。
したがって、本件投稿者による本件投稿画像の作成は原告イラストの複製ないし翻案に当たり、このような本件投稿画像を添付した本件ツイートの投稿は原告イラストの公衆送信に当たる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 引用としての適法性の有無(争点 2)について
(1) 前提事実及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
すなわち、ツイッター上において、令和 3 3 12 日にある者が宮島地域の鹿対策に関する広島県廿日市市のホームページのスクリーンショットを添付して同市の宮島の鹿に対する餌やり禁止の方針について述べたツイートをした(以下「ツイート A」という。)。これに対し、他の者が、同年 4 5 日、ツイート A を引用すると共に、本文に「人間の都合で勝手なことばっか言ってて恥ずかしくはありませんか?宮島の鹿の事はもう世界の関心事になりつつありますよ。」などと記載した引用リツイート(ツイート B)をした。
本件投稿者は、同月 6 日、ツイート B に対する返信として、本件ツイートを行った。
(2) 公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができるところ(著作権法 32 1 項)、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要である。また、引用としての適法な利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の 有無・程度などを総合的に考慮しなければならない。
以上の観点から検討するに、まず、前提事実によれば、本件ツイートにおいて、本件投稿画像部分は、その形式上本件投稿者が記載した本文部分とは客観的に明瞭に区別して認識し得る態様で利用されているものといえる。また、前記前提事実及び前記(1)認定の各事実によれば、本件ツイート、ツイート A 及び B を全体として見ると、行政による宮島の鹿に対する餌やり禁止の方針について、ツイート A の投稿者が行政側の説明の紹介及びこれを踏まえた意見を投稿したのに対し、ツイート B の投稿者が行政ないしツイート A に批判的な立場から意見を投稿し、その中で「宮島の鹿の事はもう世界の関心事になりつつありますよ。」などと指摘したことを受け、ツイート B に対する批判的な立場の意見として本件ツイートが投稿されたものと理解し得る。また、その際、本件投稿者は、本文において「10 年近く前からそう仰る方々がいます」と指摘し、その具体例ないし根拠を示すことを目的として、本件ツイートの約 7 年半前に行政による宮島の鹿への餌やり禁止方針に批判的な立場から原告により投稿された原告ツイートのスクリーンショット(本件投稿画像)を添付したものと見られる。
これらの事情を踏まえると、本件ツイートにおける本件投稿画像の添付という形での【原告アイコンを含む原告ツイートの引用による原告イラストの一部の引用】は、ツイート A から本件ツイートに至る議論の流れに沿って必要かつ合理的な範囲で行われたものといってよい。本件投稿画像の添付という方法についても、ツイッターには引用リツイート機能が設けられているものの、これによらずに、他のツイートのスクリーンショットを自己のツイートに画像として添付して投稿することによって他のツイートを自らのツイートにおいて表示させる方法もツイッター利用者により多く行われていることに鑑みると、なお公正な慣行に合致する範囲内にあるといえる。他方、原告イラストは、原告自らが【プロフィール画像として選択し、それがトリミングされて原告アイコンとされたことにより、その一部が】原告ツイートに表示されたものである。その結果として、本件ツイートに添付された本件投稿画像を構成するものとして【原告イラストの一部から成る原告アイコン】が利用されたことを踏まえると、原告イラストの著作物としての種類や性質、その著作権者である原告に及ぼす影響の有無及び程度等を考慮しても、原告イラストの著作物としての意義ないし価値が損なわれ、又は原告が経済的な不利益を受けるなど、本件ツイートにおける引用につき、公正な慣行に合致せず、又は社会通念に照らして合理的な範囲を逸脱するものというべき具体的な事情は特段うかがわれない。
以上の事情を総合的に考慮すると、本件ツイートが本件投稿画像を添付することにより【原告イラスト】を引用して利用したことについては、その方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内にあるものといえる。
したがって、本件ツイートによる原告イラストの【利用は、引用として】適法である。
(3) これに対し、原告は、他のツイートのスクリーンショットを添付する方法による引用は本件規定に違反することなどを指摘して、公正な慣行に合致するとはいえないなどと主張する。
【しかし、そもそも利用規約は本来的には被控訴人とユーザーとの間の約定であって、その内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではない。また、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が利用規約違反に当たることも認めるに足りない。
他方で、批評に当たり、その対象とするツイートを示す手段として、引用リツイート機能を利用することはできるが、当該機能を用いた場合、元のツイートが変更されたり削除されたりすると、当該機能を用いたツイートにおいて表示される内容にも変更等が生じ、当該批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなるおそれがあるのに対し、元のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする場合には、そのようなおそれを避けることができる。そして、現にそのように他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートするという行為は、ツイッター上で多数行われているところである。
さらに、自らのツイートと併せて、自らのアカウント名及びユーザー名に加えて自らが設定したプロフィール画像に係るアイコンが表示されることは、ツイッターのユーザーにおいては当然に了解していることと解されるところ、任意にプロフィール画像として設定し得る画像に基づくというその性質や上記のような表示態様も考慮すると、アイコンがツイートした者を特定する重要な一要素として利用されていることは明らかであり、文字列であるアカウント名及びユーザー名と比較した場合の画像の印象の強さ等を踏まえても、ツイートした者の特定において、アイコンがアカウント名及びユーザー名と同様に、重要な役割を果たしていることも容易に理解される。そうすると、ユーザーは、ツイートという表現行為において、その内容が当該ツイートをした時点において自らを特定する重要な要素の一つとされているアイコンと一体的に、表現主体及び表現内容を示すものとして取り扱われ得ることについても、相応の範囲で受忍すべきものといえる。
以上の諸点を踏まえると、スクリーンショットの添付という引用の方法や、当該方法によるアイコンの利用も、著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たり得るというべきである。】
このほか、原告は、【引用リツイート機能】ではなくスクリーンショットの添付により著作物が引用されることに伴う著作権者の不利益を指摘する。しかし、ツイッターにおける上記実情等に鑑みると、仮に原告指摘に係る不利益が生じたとしても、なおスクリーンショットの添付による引用をもって公正な慣行に合致しないとするに足りるものとはいえない。
その他原告が縷々主張する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。
[控訴審も同旨]
▶令和41226日知的財産高等裁判所[令和4()10083]
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件ツイートによる原告イラストの引用は適法なものと認められ、控訴人の請求には理由がないものと判断するが、その理由は、後記2のとおり改め、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張についての判断を加えるほかは、原判決に記載するとおりであるから、これを引用する。
(略)
3 当審における控訴人の補充主張について
(1) 公正な慣行について
ア 控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が利用規約に反することは明らかであり、それゆえ利用規約に基づいて本件ツイートによる公衆送信権侵害等について適法となることはないなどと主張する。
しかし、控訴人の上記主張は、利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることを前提にするものであって、相当でない。この点、控訴人は、利用規約が遵守されることがツイッターの全ユーザー間の共通認識となっているとも主張するが、当該主張も、結局は利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることをいうものに帰し、訂正して引用した原判決の認定判断を左右するものではない。特に、本件ツイート及びそこにおける原告ツイートの引用が批評という表現行為に係るものであることに照らしても、利用規約によってその態様ゆえにその引用としての適法性が直ちに左右されるとみることはできない。
イ 控訴人は、ユーザーにおいては、ツイートを削除していなくともプロフィール画像を変更すれば過去のツイートについても変更後のプロフィール画像が表示されること等を前提としてツイッターを利用していることや、プロフィール画像がツイート本文の内容とは独立して自身の個性を表現するものであるなどと主張する。
しかし、訂正して引用した原判決で説示したとおり、ユーザーは、自らのツイートの内容が当該ツイートをした時点におけるアイコンと一体的に表現主体及び表現内容を示すものとして取り扱われ得ることについても、相応の範囲で受忍すべきものであり、控訴人の上記主張も、訂正して引用した原判決の認定判断を左右するものではない。
ウ 控訴人は、本文やユーザー名のほかアイコンまで掲載する必要があるのかには疑問があり、また、現在もツイッター上で閲覧可能な原告ツイートについて、これをあえてスクリーンショットで掲載する必要はないなどと主張する。
しかし、控訴人においては原告アイコンが原告ツイートの内容と一体的に取り扱われ得ることを相応の範囲で受忍すべきことは既に説示したとおりであり、また、原告ツイートが現在も閲覧可能であるとしても、仮に本件投稿者が引用リツイート機能を用いていた場合には、原告ツイートを削除等するという専ら控訴人の意思に係る行為によって引用に係る原告ツイートが削除等され、本件ツイートの趣旨等が不明確となるような事態が生じ得ることに照らして、原告ツイートが現在も閲覧可能であるか否かは、本件ツイートにおける引用の適否に直ちに影響すべきものではない。この点、原告ツイートが投稿されてから本件ツイートが投稿されるまでには約7年半という相応の長期間が経過しているところ、原告ツイートが現在も閲覧可能であり、その間に特に控訴人がプロフィール画像を変更したといったことも認められないものであるが、一般的に、引用元ツイートが投稿後変更されることなく相応の長期間が経過した後であっても、引用リツイートの投稿を契機として引用元のツイートが変更や削除等されたりする可能性もあるから、上記相応の長期間の経過をもって直ちに本件ツイートにおける引用の必要性や相当性が否定されるものではなく、また、閲覧可能性や画像の変更の有無に係る上記各事情は、他方で、原告ツイートの投稿時から本件ツイートの投稿時までの間に、原告において原告アイコンを含む原告ツイートの変更や削除等をしなければならないような事情が他には生じておらず、本件ツイートにおける引用の必要性や相当性を判断するに当たり他に考慮すべき特段の事情がないことをうかがわせるものである。
したがって、控訴人の上記主張も、訂正して引用した原判決の認定判断を左右するものではない。
(2) 正当な範囲について
控訴人は、本件ツイートにおいて本件投稿画像を掲載する必要性はなく、また、原告アイコンまで掲載する必要はなかったから、本件ツイートにおける引用は正当な範囲を超えたものであると主張するが、前記(1)で認定説示した点に照らし、上記主張も採用することができない。

▶令和31210日東京地方裁判所[令和3()15819]
引用の成否について
ア 認定事実
前記前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
本件投稿1は,原告投稿1(ただし,原告のアカウント名及びプロフィール画像を含むものをいう。以下,原告投稿2ないし4についても同じ。)のスクリーンショット画像を添付した上で,「この方です・・・」と投稿するものであり,他のユーザーに対して原告及びそのアカウントを紹介するものである。
本件投稿2は,原告投稿2のスクリーンショット画像を添付した上で,「私に対してのリプ 何にもしてないのにぃò)」と投稿するものであり,自らには落ち度がないにもかかわらず,原告から原告投稿2により暴言を受けたことを他のユーザーに報告するものである。
本件投稿3は,原告投稿2ないし4のスクリーンショット画像を添付した上で,「絡んだ時間順に並べてみました。暴言はいてます?」と投稿するものであり,他のユーザーに対し,ツイッター上で原告との間で行われた過去のやり取りを示した上で,その中に客観的にみて原告に対する暴言があったかどうか意見を求めるものである。
本件投稿4は,原告投稿3のスクリーンショット画像を添付した上で,「はい!あなたは私に暴言をはきましたが,私はあなたに暴言をやめてとかしか言っていません。具体的に教えていただいてもいいですか?検索しても出てこないです!絡んだ順にスクショ置きますね!どの事でしょうか?」と投稿するものであり,原告に対し,ツイッター上で原告との間で行われた過去のやり取りを示した上で,その中に原告に対する暴言があれば,これを特定するよう求めるものである。
イ 引用の成否について
他人の著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合には,これを引用して利用することができる(著作権法32条1項)。
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件各投稿は,いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。
また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。
したがって,原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイッターに掲載することは,著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。
[注:本件の控訴審では、以下のように、「原告各投稿のスクリーンショットの添付は、いずれも著作権法32条1項の引用に当たるか、又は引用に当たる可能性があ(る。)」と認定した。]
令和5413日知的財産高等裁判所[令和4()10060]
引用の成否について
() 】他人の著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合には,これを引用して利用することができる(著作権法32条1項)。
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件各投稿は,いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。
【しかし、そもそも本件規約は本来的にはツイッター社とユーザーとの間の約定であって、その内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではない。また、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が本件規約違反に当たることも認めるに足りない。
他方で、批評に当たり、その対象とするツイートを示す手段として、引用リツイート機能を利用することはできるが、当該機能を用いた場合、元のツイートが変更されたり削除されたりすると、当該機能を用いたツイートにおいて表示される内容にも変更等が生じ、当該批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなるおそれがあるのに対し、元のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする場合には、そのようなおそれを避けることができるものと解される。そして、弁論の全趣旨によると、現にそのように他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートするという行為は、ツイッター上で多数行われているものと認められる。
以上の諸点を踏まえると、スクリーンショットの添付という引用の方法も、著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たり得るというべきである。
() これに対し、被控訴人は、引用ツイートによるべきことは、ツイッターの利用者において常識である旨を主張するが、当該主張を裏付けるに足りる証拠はない(なお、前記のとおり、本件規約の内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではないことからすると、ツイッターのユーザーにおいて本件規約の前記の定めを認識しているというべきことから直ちに、引用ツイートによるべきことがユーザーの共通の理解として前記公正な慣行の内容となるということもできない。)。また、被控訴人は、スクリーンショットの添付という方法による場合、著作権者の意思にかかわらず著作物が永遠にネット上に残ることとなり、著作権者のコントロールが及ばなくなるという不都合がある旨を主張するが、そのような不都合があることから直ちに上記方法が一律に前記公正な慣行に当たらないとまでみることは、相当でないというべきである。
() その上で、訂正して引用した原判決で認定判断した原告投稿1の内容、本件投稿1の内容や原告投稿1との関係等によると、本件投稿1は、Y[注:原告のこと]が、本件投稿者1及び本件投稿者1と交流のあるネット関係者間で知られている人物(「A」なる人物)を訴えている者であることを前提として、更に多数の者に関する発信者情報開示請求をしていることを知らせ、このような行動をしているYを紹介して批評する目的で行われたもので、それに当たり、批判に関係する原告投稿1のスクリーンショットが添付されたものであると認める余地があるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区分されており、また、その引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿1の範囲は、相当な範囲内にあるということができる。
また、訂正して引用した原判決で認定判断した原告投稿2~4の内容及びその性質並びに本件投稿2~4の内容や原告投稿2~4との関係等によると、本件投稿2~4は、本件投稿者2を含むツイッターのユーザーを高圧的な表現で罵倒する原告投稿2、他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿3及び他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿4を受けて、これらに対する批評の目的で行われたものと認められ、それに当たり、批評の対象とする原稿投稿2~4のスクリーンショットが添付されたものであるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区別されており、また、それらの引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿2~4の範囲は、それぞれ相当な範囲内にあるということができる。
以上の点を考慮すると、本件各投稿における原告各投稿のスクリーンショットの添付は、いずれも著作権法32条1項の引用に当たるか、又は引用に当たる可能性があり、原告各投稿に係るYの著作権を侵害することが明らかであると認めるに十分とはいえないというべきである。】

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