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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限>引用▶個別事例⑨(投稿画像/投稿動画)

▶令和3326日東京地方裁判所[令和2()15010]
被告は,本件各記事が本件各動画の紹介であり,引用に当たると主張することから以下検討する。
他人の著作物は,批評,研究等の目的で引用して利用することができるが,この場合において,その利用の方法や態様は,批評等の引用目的との関係で,正当な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である(著作権法32条1項)。
証拠によれば,本件各記事は,1記事当たり約30枚から60枚程度の本件各動画のスクリーンショットの静止画が当該動画の時系列に沿ってそれぞれ貼り付けられ,静止画の間に,それらの静止画に対応等する本件各動画の内容を簡単に記載し,最後に,本件各動画の閲覧者のコメントの抜粋等や本件投稿者の「感想」がそれぞれ記載されたものである。
本件各記事の最後に記載された本件投稿者の「感想」は,3つの記事について十数行であり,3つの記事について,感想を述べるなどした他人のツイッターの静止画を間にはさんで二十数行であり,いずれも本件各動画について概括的な感想といえるものである。
これらに照らせば,本件各記事には,本件各動画の内容を紹介する面やそれを批評する面がないわけではない。しかしながら,本件各記事において,本件各動画のスクリーンショットの静止画は,1記事当たり相当な枚数であり,量的に本件記事において最も多くを占めるといえるのに対し,投稿者の感想は相当に短い。また,本件各記事の最後に記載された投稿者の感想の内容に照らしても,それらの静止画の枚数は,感想を述べるために必要な枚数を大きく超えるといえるものである。
以上によれば,本件各記事における本件各動画のスクリーンショット静止画の掲載は,仮に引用ということができたとしても,引用の目的との関係で正当な範囲内のものとはいえない。したがって,本件各記事による本件各動画のスクリーンショットの掲載について,著作権法32条1項により適法となることはない。


▶令和31026日東京地方裁判所[令和3()8702]
2 争点2(複製権及び公衆送信権侵害の有無)について
(1) 本件サイトに投稿された本件各記事に貼付されている本件各画像と本件各動画とを対比すると,本件各画像は,本件各動画の一場面と同一のものであることが認められる。
このように,本件各画像は,本件各動画と同一のものであるから,本件各記事の各投稿者は,それぞれ,被告らが提供するインターネット接続サービスを利用して本件各動画を含む本件各記事を本件サイト上で作成,投稿することにより,本件各動画を有形的に再製するとともに,インターネットを通じて本件各記事にアクセスした不特定又は多数の者に,本件各画像を含む本件各記事を閲覧できる状態に置いたと認められる。これは,著作物の複製・公衆送信行為に当たる。しかして,本件全証拠によっても,原告が本件各記事の各投稿者に対して,本件各動画の利用を許諾したことをうかがわせる事実は見当たらない。
そうすると,本件各記事が本件サイトに投稿されたことにより,本件各画像について原告が有する著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたというべきである。
(2) これに対し,被告らは縷々主張するが,そのいずれを慎重に検討しても,上記説示を左右するに足りるものはない。
3 争点3(引用の抗弁の成否)について
(1) 被告ソフトバンク,被告ジェイコム及び被告ビッグローブは,本件記事1,4及び5は,本件動画1,4及び5を適用に引用したものであるから,原告の権利を侵害したことが明らかであるとはいえない旨主張している。
ここで,引用による利用が適法とされるためには,著作権法32条1項に規定する要件を満たすことが必要であるから,当該引用の方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであること,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することを要するものと解するのが相当である。
(2) 上記観点から,本件各記事について検討する。
ア 本件記事1についてみるに,前記認定事実によれば,本件記事1は,原告が原告の生い立ちを語りながら原告書籍を宣伝する本件動画1のうち「実家を取り戻したかったんだよね」とのテロップが表示されている場面を切り出した本件画像1を貼付した上で,「うん変わったよ本の宣伝のYouTubeで言っていたw色々と変わるよねw 七分半あたりかな」とのコメントが付されているものの,かかるコメントの趣旨は明確とはいえない。仮に,かかるコメントの趣旨が原告の発言内容が変遷している旨の指摘・批判をするとともに,本件記事1の投稿者の感想等を述べる点にあるとしても,そのような批判,感想等を述べるために,本件画像1を掲載する必要性が高いとも認められず,引用目的との関係で権衡がとれているものとも評価できない。加えて,本件画像1は本件記事1の囲み枠の過半を占めており,独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対し,上記コメントは短文の比較的小さな文字で掲載されていること,本件画像1の出典を示していないことからすると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできないし,公正な慣行に合致すると認めるに足りる証拠もない。
イ 次に,本件記事4は,本件記事1と同様に,原告がその生い立ちを語りながら原告書籍を宣伝する本件動画4のうち「努力してる」とのテロップが表示されている場面を切り出した本件画像4を貼付した上で,「これ鼻の下何センチ?」とのコメントが付されている。かかるコメントは,原告の容姿について何らかの感想を述べる意図であるとも考えられなくはないが,上記コメントと本件画像4との関連性は全く不明といわざるを得ず,原告の容姿に関する感想を述べるに際して,本件画像4を掲載する必要性は乏しく,引用目的との関係で権衡がとれているものとは評価できない。加えて,本件画像4は本件記事4の囲み枠のほぼ全体を占め,上記コメントは短文の比較的小さな文字で掲載されていること,本件画像4の出典についての記載がないことからすると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできないし,公正な慣行に合致すると認めるに足りる証拠はない。
ウ 本件記事5についてみるに,原告の全身を撮影して原告が通うジムでの服装を紹介する場面を切り出した本件画像5を貼付した上で,「投稿の水着写真との脚の長さの違い」とのコメントが付されている。かかるコメントは,原告の脚の長さに言及するものであるものの,その趣旨が明確とはいえず,仮に,原告の容姿に関する何らかの感想を述べるものであると解したとしても,そのような感想を述べるために,本件画像5を掲載する必要性が高いともいえず,引用目的との関係で権衡がとれているものとは評価できない。加えて,本件画像5も,本件画像4と同様に,本件記事5の囲み枠の大半を占め,上記コメントは短文かつ比較的小さな文字で掲載されていることをも考慮すると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということができず,かつ,公正な慣行に合致すると認めるに足りる証拠はない。
エ 本件記事2及び3についても,本件画像2及び3を貼付するについて,当該貼付(引用)の方法や態様が,当該引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであること,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することを示す事実を具体的に認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によれば,本件各記事に本件各画像をそれぞれ貼付して本件各動画を利用したことについては,適法な引用に当たるとはいえないというべきであるから,被告らの上記主張は,理由がない。

▶令和4318日東京地方裁判所[令和3()27488]
[前提事実:
(原告による動画配信)
原告は、令和元年11月5日、「B」の名称を使用し、「B競馬予想ch」というYouTubeチャンネルにおいて、自らの著作物であり、その著作権を有する「【競馬検証】2万円の高額予想に丸のりしたら○○万円【驚愕】」と題する動画(「本件動画」)を投稿配信した。本件動画の内容は、原告が、競馬予想情報サイト「グロリア」から2万円で購入した情報に基づき勝馬投票券を購入したことを示した上、当該レースを観戦する原告の様子を映し、結果的に20万円以上の払戻金を得られたという経過を報告するなどするものであった。
(本件発信者による投稿)
本件発信者は、令和3年3月13日午後3時53分頃及び午後3時54分頃、本件各投稿として、それぞれ「B´検証用動画ダイジェスト1」又は「B´検証用動画ダイジェスト2」との文言とともに、本件動画を抜粋した動画2本(「本件各投稿動画」)を被告の特定電気通信設備を経由してツイッターに投稿した。
本件発信者は、令和3年3月13日午後3時56分頃、ツイッターとは別のウェブサービスを利用し、「女性競馬YouTuber「B´」が後撮り動画で高額競馬予想販売サイトへ誘導していた件の考察」と題する記事(「乙3記事」)を投稿した上、本件動画を「抜粋した動画」であるとして、本件各投稿の内容を掲載した。
ウ 乙3記事は、本件動画が、前記レースを「リアルタイム」に観戦している様子を記録したものではなく、当該レースの結果が出た後、録画VTRを利用した「後撮りの台本動画」であって、原告が、「リアルタイムであるかのように見せて視聴者を騙し」、「高額な競馬予想販売サイトへ誘導し」ているとして、これを批判するものであった。]
権利侵害の明白性について
被告は、本件各投稿動画が、乙3記事に適法に「引用」(著作権法32条1項)されたものであるとして、本件各投稿によって、原告の権利が侵害されたことが明らかであるとはいえないと主張する。
そこで検討するに、前記前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件発信者は、本件各投稿として、本件各投稿動画をツイッターにアップロードした後、ツイッターとは別のウェブサービスを利用して、乙3記事を投稿したこと、本件各投稿は、「B´検証用動画ダイジェスト1」又は「B´検証用動画ダイジェスト2」という記載とともに、本件各投稿動画を掲載するのみであって、当該動画の内容を批評等したり、その出所の明示等をしたりする記載は何ら存在しないこと、他方、本件発信者は、乙3記事においては、本件動画の「抜粋」であるとして、本件各投稿をその記事中に表示させるようにした上、「この動画を見て後撮り(レース動画がVTRである事)の根拠がお分かりになりますでしょうか」などと記載したこと、ただし、証拠上本件各投稿動画のサムネイルは、乙3記事において表示されず、これに対するリンクのみが表示されていること、以上の事実が認められる。
上記認定事実によれば、本件各投稿動画は、本件各投稿としてツイッターにアップロードされたものであるところ、乙3記事との間でリンク等によって関連付けられているものの、ツイッター上の各投稿は、そのサービスとしての性質上、それ自体が独立に閲覧の対象となることを当然に予定するものであるといえる。これらの事情を踏まえると、本件各投稿動画は、ツイッターとは別のウェブサービスを利用して掲載された乙3記事とは、独立に公衆送信されていると認めるのが相当である。そうすると、本件各投稿動画は、乙3記事との関係において、適法に「引用」されたものということはできない。
また、本件各投稿動画が、少なくとも本件各投稿との関係においては、一体的に公衆送信されていると把握されるとしても、上記認定事実によれば、本件各投稿は、「B´検証用動画ダイジェスト1」又は「B´検証用動画ダイジェスト2」という記載とともに、本件各投稿動画を掲載するのみであって、当該動画の内容を批評等したり、その出所の明示等をしたりする記載は何ら存在しないことが認められ、しかも、乙3記事に対するリンクなど、乙3記事の記載を補足する手掛かりもないことが認められる。これらの事情を踏まえると、本件各投稿動画は、本件各投稿との関係においても、適法に「引用」されたものということはできない。
したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。その他に、その違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情を見出すことはできず、本件各投稿によって、少なくとも原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。

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