Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

音楽著作物▶音源(効果音)

▶令和5314日知的財産高等裁判所[令和4()10049]
しかしながら、証拠及び弁論の全趣旨によると、被告音源データは、爆発音だけでも約2000種類のものを含み、一審被告取締役Bが音響効果業務で使用するハードディスクでは作業の効率化のため被告音源データの一部を厳選して保存しているが、そのハードディスクに保管されている被告音源データのデータ量でも約194ギガバイト、ファイル数3万1000個超となるなど、膨大な数の音源データで構成されていると認められ、このように多種多様な音で構成されていることからみて、個々の音源の中には個性的な特徴を有するものが多数含まれるとうかがわれること、被告音源データは、生音(人の手で音を作り出して収録した音)、シンセサイザーで合成した音等の効果音、環境音等からなるものであるが、シンセサイザーで制作される音については優に100を超える設定項目を設定しなければならないこと、生音で制作される音については制作の際の個人差が想定されること、屋外で録音した音については音の録音をするに適した場所、環境、時間帯等を探し出して選択し、録音した部分から不要となる部分を省く編集をしなければならないこと、同種の方法で制作された音同士を、あるいは、異種の方法で制作された音同士を掛け合わせて融合するなどして複雑な混成をさせていること、以上のことからして、単に発生している音を録音するという機械的作業により制作され音が保存されているではなく、その制作に当たって創造性を発揮させる余地が十分にある音が保存されていること、上記のような単純とはいい難い作業に基づいて制作されるほか、アナログ機材で様々な融合や設定をしてできた音であるのにその設定等が不明で、現在どのようにして制作するかも分からない再現不能な音源も多いことから、偶然に同一の音が再現される可能性は低く、世上耳にすることのある、ありふれた音そのものとは構成が異なること、被告音源データのうち、少なくとも半分は上記のような制作過程によって一審被告が制作したものであること、1音源の長さは、数秒程度のものあれば、1分以上に及ぶものもあって、制作作業の過程で思想又は感情の表現を込め得る程度の長さのものも含むことが認められる。
以上によれば、被告音源データの中の個々の音のみであっても、幅のある表現の中から選択され、その表現に個性の発露を認め得る音も決して少なくないものと認められ、そのようにして制作された音には創作性を認める余地があるといえ、一律に効果音の著作物性を否定できるものではないし、著作物性のある音がごくわずかであるともいい得ない。
そして、一審原告は、一審被告在職中に被告音源データを用いて音響効果業務を行っていたのであるから、被告音源データに含まれる音と同一の音あるいは類似の音を制作した場合には、明らかに依拠性が認められ、あるいは容易に依拠性を認め得るのであるから、被告音源データに含まれるいずれかの音と同一の音を利用し、あるいは類似の音を制作して利用した場合でも、一審被告の被告音源データについて一審原告による少なくとも複製権又は翻案権の侵害が成立する可能性は否定できないといえる。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp