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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物の侵害性▶個別事例③(照明用シェード)

▶令和2129日東京地方裁判所[平成30()30795]
被告作品の翻案該当性について
(1) 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決)。
本件では,依拠性には争いがないことから,被告作品から原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかについて検討する。
(2) 原告作品の形態及び製法等
(略)
(3) 被告作品の形態及び製法等
(略)
(4) 原告作品と被告作品の共通点及び相違点
(略)
(5) 翻案該当性
上記(4)で認定した共通点及び相違点を前提に,被告作品から原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかについて検討する。
(略)
以上によれば,原告作品の本質的特徴は,エレメントが球状体の中心から放射状に外を向いて開花しているかのような形状をしており,花弁同士が重なり合うなどして複雑で豊かな陰影を形成するとともに,その輪郭が散形花序のようにボール状の丸みを帯びた輪郭を形成していることにあるというべきである。
上記の原告作品の本質的特徴を実現するために重要な構成,形状は,前記(2)認定にかかる原告作品の構成,形状に照らすと,原告エレメントが剣先状の花弁と,その内側に配置された大きな星形状の花弁状と,さらにその内側に配置された小さな星形状の花弁から構成されること,エレメント頭部にミウラ折りの要素を取り入れ,各花弁の縦方向中央には折り線が設けられ,更に同中央部から斜め方向に平行な複数の折り線が設けられていること,③光を拡散する光学的特性を有する乳白ポリエステルシートが使われていること,④大きな剣先状の6個の花弁及び大きな星形状の花弁の上端となる面が,水平方向を基準に,中心から上斜め方向に伸びた後,水平な角度となっていることにあると考えられる。
(略)
以上のとおり,原告作品と被告作品とは,原告作品の本質的特徴を実現するために重要な構成,形状において相違しており,被告作品は,自然界に存在する花のような柔らかく陰影に富んだ印象を与えるのではなく,より立体感があって,均一にむらなく光り,クリスタルのようなまばゆい輝きを放つものであって,その輪郭も,散形花序のようにボール状の丸みを帯びたものではなく,凹凸のある刺々しい印象を与えるものであるから,被告作品から原告作品の本質的特徴を直接感得することはできないというべきである。
(略)
(6) したがって,被告作品から原告作品の本質的特徴を直接感得することができるということはできないので,被告作品は原告作品の翻案には該当せず,また,原告らの同一性保持権を侵害するものであるということもできない。

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