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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物の侵害性▶その他の個別事例(彫刻/ゲームソフトの表示画面)

[彫刻]
平成28225日東京地方裁判所[ 平成27()15789]
本件各写真によれば,原告彫刻は,乳白色の板状部材の表面に女性の裸体を表現した彫刻で,乳首のすぐ下と陰部のすぐ上の位置で胴体を上下に水平方向に直線でカットし,かつ,左乳房の中心付近で垂直方向に直線でカットしたものと認められる。
そこで検討するに,確かに,原告彫刻と被告製品[注:女性の身体の一部をモチーフにしたネックレス]とは,女性の身体のカットの構図において共通の特徴がみられることは原告の指摘するとおりであるが,このような構図それ自体に創作性は乏しい。
また,そもそも,原告は原告彫刻を所持しておらず,原告彫刻の具体的表現に関する証拠としては,原告彫刻が撮影された本件各写真しかないから,原告彫刻と被告製品の各表現の対比には限界があるといわざるを得ないが,とりあえずその点を措いても,本件各写真によれば,原告彫刻においては,右胸が身体の右端に大きく膨らみ,右腹部から右腰にかけては大きく湾曲したくびれがあり,また,腹部が膨らんでいる一方,へそが明確に凹み,腹部と脚との境界付近にも比較的大きな凹みが確認できるなど,全体に豊満で肉感的な印象を与えるものであるのに対し,被告製品においては,胸が中央部にかけて膨らんだお椀形で,腹部から腰にかけてのくびれは少なく,腹部の膨らみも緩やかで,へその凹みや腹部と脚との境界もはっきりしないなど,全体として平坦でひきしまった印象を与えるものであることが認められるのであって,こうした相違に鑑みれば,被告製品から原告彫刻の表現上の特徴を直接感得することはできず,両者が類似しているとは認めることができない。

[ゲームソフトの表示画面]
平成240808日知的財産高等裁判所[平成24()10027]
表現に選択の余地がない場合には,その表現が共通するとしても著作権侵害とはいえないが,逆に,選択の余地があるからといって,必ずしも常にそれが著作権侵害といえるわけではない。そして,著作権法上,著作物として保護されるのは,そのような選択に関するアイデア自体ではなく,具体的表現である。したがって,画面の選択や配列に選択の余地があったとしても,実際に作成された表現がありふれたものである限り,それが共通することを理由として,翻案権侵害ということはできないし,具体的な表現が異なることにより,表現上の本質的な特徴が直接感得できなくなる場合がある。

平成141114日東京地方裁判所[平成13()15594]
原告ゲームの表示画面に何らかの著作物性が肯定される場合には,被告ゲームの表示画面がその複製ないし翻案に当たるかどうかを判断するに当たっては,原告ゲームの表示画面における創作的特徴が被告ゲームの表示画面においても共通して存在し,被告ゲームの表示画面から原告ゲームの表示画面の創作的な特徴が直接感得できるかどうかを判断すべきものである。そして,この場合,原告ゲームの表示画面の特徴的構成の一部分が被告ゲームの表示画面においても共通して見られる場合であっても,①共通する当該一部分のみで表示画面における創作的特徴を基礎付けるには足りないときや,あるいは,②被告ゲームの表示画面に原告ゲームの表示画面にない構成部分が新たに付加されていることにより,表示画面の構成を異にすることとなり,これを見る者が表示画面から受ける印象を異にすることとなったときは,被告ゲームの表示画面から原告ゲームの表示画面の創作的特徴を直接感得することができないから,被告ゲームの表示画面をもって原告ゲームの表示画面の複製ないし翻案ということはできない。

平成150313日東京高等裁判所[平成13()5780]
ビデオゲーム同士の二次的著作物性は,ゲームそのものを,実際のゲーム内容をビデオに撮影するなどして,直接子細に比較し検討されるべきものであり,これを行わずして二次的著作物であるか否かの判断を行うことは,不可能ないし極めて困難という以外にないのである。

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