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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物の侵害性▶個別事例⑥(オンラインゲームの表示画像)

▶令和4422日東京地方裁判所[平成31()8969]
原告各画像に係る著作権侵害の成否について
(1) 複製又は翻案に関する判断枠組み
著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号)をいい、複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に再製する行為をいうものと解される。
また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴である創作的表現の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。
そうすると、被告各画像が原告各画像を複製又は翻案したものに当たるというためには、原告各画像と被告各画像との間で表現が共通し、その表現が創作性のある表現であること、すなわち、創作的表現が共通することが必要であるものと解するのが相当である。
一方で、原告各画像と被告各画像において、アイデアなど表現それ自体ではない部分が共通するにすぎない場合には、被告各画像が原告各画像を複製又は翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれたものであるような場合も,そのような表現に独占権を認めると,後進の創作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり,文化の発展に寄与するという著作権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないから,当該表現に創作性を肯定して保護することは許容されず、その結果、複製又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告各画像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性について
ア 原告画像1と被告画像1について
原告画像1と被告画像1は、①丸い眼鏡を掛けた茶色い体のふくろうのキャラクターが、左側の羽を広げ、右足を前に出して走っているようなポーズをとっている点、②上記ふくろうのキャラクターが、右側の羽で、先端に時計が付いた杖を握っており、上記時計は小屋のようなデザインであり、屋根は青色で壁は茶色である点、③上記ふくろうのキャラクターは、黄色い花と白いボアが付いた茶色の帽子をかぶり、青色と茶色のボーダー柄のマフラーのようなものを首に巻いている点において同一であると認められる。そして、上記①ないし③については、いずれも表現において創作性があるということができるから、原告画像1と被告画像1は、創作的表現が共通するものと認められる。
したがって、被告画像1については、原告画像1を複製したものに当たると認めることができる。
イ 原告画像2と被告画像2について
() 原告画像2と被告画像2は、画面の中央に、猿をモチーフにした赤い顔のキャラクターを配置した点、同キャラクターは、向かってやや右肩下がり方向に傾きつつ、画面の上下方向に延びた、キャラクターの体長よりも長い棒を右手で握り、右足を左足よりも上にして上記の長い棒に掛けるような態勢で立っている点、上記キャラクターが、首周りに数珠を巻き、腰にベルトを巻いている点において、共通すると認められる。
しかし、猿をモチーフにしたキャラクターを描くこと自体は、アイデアにすぎない。また、猿のキャラクターとして、赤い顔を描いたり、細長い棒を手に持った様子を描いたりすることは、他の作品にもみられるように、ありふれた表現であって、創作性が認められない。
さらに、原告画像2と被告画像2に描かれた数珠やベルトは、形状や色において表現に具体的な相違が見られるから、数珠やベルトを身に着けているというアイデアが共通するにとどまるものである。
(略)
() 以上のとおり、原告画像2と被告画像2に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像2は、原告画像2を複製又は翻案したものには当たらない。
ウ 原告画像3と被告画像3について
() 原告画像3と被告画像3は、画面の中央に、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターが背中を向けて立っており、背中に2本のタンクを背負っている点において共通すると認められる。
しかし、原告画像3に描かれたロングコートは、被告画像3と異なり、タックがなく、腰に黒い帯状のベルトが存在するほか、原告画像3のキャラクターと被告画像3のキャラクターでは、手の広げ方や立つ向きなどが異なるなど、具体的表現に複数の相違点がある。そうすると、画面の中央に、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターが背中を向けて立っているという上記の共通点は、いずれもアイデアが共通するにすぎないというべきである。仮に上記の点が表現に関する共通点であるとしても、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターの表現はありふれたものであって創作性が認められない。また、原告画像3のタンクには赤い液体が入っており、その上下の部分が銀色の円柱状の金属様のもので覆われているのに対し、被告画像3のタンクには緑色の液体が入っており、その上下の部分が金色で先端が球状に丸まった金属様のもので覆われているなど、タンクの具体的表現には顕著な相違があるから、背中に2本のタンクを背負っているという共通点もまた、アイデアが共通するにすぎない。
(略)
() 以上のとおり、原告画像3と被告画像3に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像3は、原告画像3を複製又は翻案したものには当たらない。
エ 原告画像4と被告画像4について
() 原告画像4と被告画像4は、画面の中央に、上半身がほとんど裸の大柄の男のキャラクターを配置した点、同キャラクターは、右手に長方形の大きな刃を持つ武器を、左手にフック状の武器を持っている点において、共通すると認められる。
しかし、原告画像4のキャラクターは、肌の色がピンク色で、筋肉質でたくましい上半身にエプロン状の衣装を身に着け、頭にはコック帽子を被っており、その体勢は、右足を切り株に乗せ、右手に持った武器を膝の前に置き、やや右側に寄った方向を向いているのに対し、被告画像4のキャラクターは、肌の色が灰色で、大きな手術痕を有する肥満体の上半身に丸い装飾を付した防具を身に付け、頭には何も被っておらず、その体勢は、右手の武器を振りかぶるように持ち、真正面を向いているというものであって、両者の具体的な表現には顕著な相違がみられる。
そうすると、上記の共通点は、いずれもアイデアが共通するにとどまるというほかはない。
(略)
() 以上のとおり、原告画像4と被告画像4に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像4は、原告画像4を複製又は翻案したものには当たらない。
オ 原告画像5と被告画像5について
() 原告画像5と被告画像5は、画面の中央に、上半身に水色の衣装を着た女性が、片手を椅子に突き、足を組んで、正面を向いて椅子に座っている様子が描かれている点、上記椅子の背もたれは女性の上半身よりも高く、水色である点において共通すると認められる。
しかし、原告画像5に描かれている女性は、髪が水色でオールバックのように刺々しく固められており、足全体が隠れる水色のロングドレスを身に着けているのに対し、被告画像5のキャラクターは、髪が銀色でストレートであり、上半身にはジャケットのような衣装を、下半身にはストッキングのような衣装を身に着けている点で相違する。また、原告画像5のキャラクターが座る椅子は、紫色又は淡い紺色で、五重の階段状の台座になっており、背面には右手に剣をもった騎士のようなデザインが描かれ、その後ろ及び左右から氷柱のような刺々しい装飾が多数施されているのに対し、被告画像5のキャラクターが座る椅子は、台座は灰色で台形状の形になっており、左右及び中央の3カ所から蝋燭台のような形状の装飾が施され、椅子の背面は、水色で、アーチ状の細長い柱のようなものが設置されている点において相違する。したがって、画面の中央に、上半身に水色の衣装を着た女性が、片手を椅子に突き、足を組んで、正面を向いて椅子に座っている様子が描かれている点、上記椅子の背もたれは女性の上半身よりも高く、水色である点において共通するとしても、その具体的表現には複数の相違点が存在するのであって、いずれもアイデアが共通するにすぎない。
(略)
() 以上のとおり、原告画像5と被告画像5に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像5は、原告画像5を複製又は翻案したものには当たらない。
カ 原告画像6と被告画像6について
() 原告画像6と被告画像6は、画面の中央に、帽子を被り、短いスカートを着て、正面を向いた女性のキャラクターが配置されている点において共通すると認められるが、他方で、衣装の形状や色彩、顔つきなどの具体的な表現に顕著な相違が認められるから、上記の共通点はアイデアに関するものにすぎないというべきである。
(略)
() 以上のとおり、原告画像6と被告画像6に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像6は、原告画像6を複製又は翻案したものには当たらない。
キ 原告画像7と被告画像6について
() 原告画像7と被告画像6は、画面の中央に、正面を向き、赤色の頭巾のような帽子を被り、赤いマントや短いスカートを着た金髪の女性のキャラクターを配置した点において共通すると認められる。
しかし、原告画像7のキャラクターが身に着けている帽子の縁は白く、赤いマントはほぼ体に沿う広がりのない形状であり、短いスカートは、裾が白いほかは全体として赤く、複数のひだが配された形状のものであるのに対し、被告画像6のキャラクターが身に着けている帽子の縁は黄色で刺のような部位が8か所に配置され、赤いマントは下部で左右に広がる略三角形の形状であり、短いスカートは白色で赤い部分やひだがないものである点において、具体的表現に複数の相違点が存在する。そうすると、原告画像7と被告画像6の上記共通点は、アイデアについて共通するものにすぎないというべきである。仮に表現について共通するものとみるとしても、上記のような容姿の女性のキャラクターを描くことは、他の作品にもみられるように、ありふれた表現にすぎず、創作性が認められない。
(略)
() 以上のとおり、原告画像7と被告画像6に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像6は、原告画像7を複製又は翻案したものには当たらない。
ク 原告画像8と被告画像7について
() 原告画像8と被告画像7は、4つの赤い円形のアイコンが並んで配置されている点、上記アイコンの内部には、全体として赤及び黒によって模様が描かれている点、原告画像8の一番左のアイコンと被告画像7の一番下のアイコンの中には、鎌のような刃物を前に抱え、左を向き、一方の足を伸ばし、他方の足を曲げた格好の人影の模様が黒く描かれている点において、共通すると認められる。
しかし、原告画像8では、4つの赤い円形のアイコンが横一列に並んで配置されているのに対し、被告画像7では縦一列に並んで配置されているから、4つの赤い円形のアイコンが並んで配置されているという共通点は、具体的な表現において異なっており、アイデアが共通するにすぎない。同様に、アイコンの内部に全体として赤及び黒によって模様が描かれているという共通点や、鎌のような刃物を前に抱え、左を向き、一方の足を伸ばし、他方の足を曲げた格好の人影の模様が黒く描かれている共通点についても、具体的な表現に関する共通点ではないから、アイデアが共通するにすぎない。
(略)
() 以上のとおり、原告画像8と被告画像7に共通する部分はアイデアなど表現それ自体ではない部分にすぎないか、表現上の本質的特徴を直接感得させるような共通点とは認められないから、被告画像7は、原告画像8を複製又は翻案したものには当たらない。

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