Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物の侵害性注目事例(セリフ付の4コマ漫画)

▶令和4721日東京地方裁判所[令和3()32178]
4 争点 3(「複製」及び「公衆送信」該当性)について
本件漫画は、作者の分身とされる漫画家のキャラクターがゲームキャラクターの二次創作に関する主張を展開する「ウマ娘ぜんぜん知らないマンガ家。」と題する4コマ漫画であり、その図柄、背景、吹き出しの配置等は別紙著作物目録のとおりである。また、登場キャラクターによる具体的なセリフは次のとおりである。
「はいどうもー」、「以前は『(省略)』を名のってましたが今は『(省略)』を名のっております(省略)でーす/もちろんペンネームです」、「なんかさー」、「ウマ娘の二次創作ってややこしいことになってんだって?/エロがダメとか/でその理由が/馬主が怒るから?」、「はあ?」、「何素直に言うこと聞いてんだエロ絵描き!!!!」、「これまで公式とか一切ムシしてエロを描いてきたんだろが!!/それが?」、「馬主に怒られるからやめる?/おめーらのリビドーは相手の強さで出し入れすんのかよ」
これらのセリフは、原告が、ゲームキャラクターの二次創作に関する自己の主張を独特の言い回しないし言葉遣い等を選択して表現したものと認められ、本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させる部分をなすものといえる。
他方、投稿画像1は、本件漫画の構成要素のうち概ねキャラクターの顔部分にのみモザイク処理が施されたものであって、本件漫画と対比すると、キャラクターの表情等は認識できないようになっているが、それ以外のセリフ部分等は、本件漫画の表現がそのまま残されていることが認められる。上記のとおり、本件漫画のセリフ部分は本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させる部分をなすものであるから、これらを全て表示している以上、投稿画像1は、本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させるものであり、本件漫画との実質的同一性をなお失っていないものといえる。
そうすると、本件投稿1のインターネット上への掲載は、本件漫画の「複製」及び「公衆送信」(自動公衆送信)に該当する。
したがって、本件投稿1は、原告の本件漫画に係る著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものといえる。これに反する被告○○の主張は採用できない。
5 争点 4(引用としての適法性)について
著作物を引用した利用が適法といえるためには、引用が、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない(著作権法 32 1 項後段)。
前提事実のとおり、本件投稿1は、本文として、「この漫画家崩れに関しては wiki 付けて周知してもらった方が良いと思うよ/しかし成長しないね、絵も中身も/#a」などと記載しているものである。この内容に鑑みると、本件投稿者が本件投稿1に投稿画像1を添付した目的は、本件漫画を批評するに当たって実際に本件漫画の内容を示すことにあったことがうかがわれる。
しかし、本件投稿1の本文のうち本件漫画の内容に具体的に言及する部分は、「しかし成長しないね、絵も中身も」というわずか文字の簡単かつ概括的な感想のみである(なお、本件投稿1に連続する本件投稿者による投稿も見当たらない。)。そうすると、ツイッターが短文投稿サイトであることを考慮しても、本件投稿1において、投稿画像1全体を画像として添付する必要性があったとはいい難い。また、投稿画像1は、キャラクターの顔部分(本件漫画全体の面積に占める割合は4分の1程度である。)にモザイク処理が施されているものの、それ以外の部分は、セリフ部分を含めて本件漫画の表現がほぼそのまま表示されている。しかも、本件投稿1の表示において、投稿画像1は全体の8割程度を占める。このため、本件投稿1における引用部分(本文)と被引用部分(投稿画像1)の情報量等には、大きな差がある。
これらの事情に鑑みると、本件投稿1における投稿画像1の引用は、引用の方法及び態様の点で、社会通念に照らし、公正な慣行に合致し、かつ、引用目的との関係で正当な範囲内で行われたものということはできない。
したがって、本件投稿1による投稿画像1の引用は、適法な引用の要件を満たすものとはいえない。これに反する被告▽▽の主張は採用できない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp