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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

過失責任個別事例(社内イントラネットでの新聞記事の利用が問題となった事例)

令和41130日東京地方裁判所[令和2()12348]▶令和568日知的財産高等裁判所[令和5()10008]
(2) 以上のとおり、本件各記事はいずれも著作物であるところ、証拠及び弁論の全趣旨によれば、いずれも、原告の発意に基づいて原告の従業員である各担当記者が職務上作成し、原告名義で公表されたものであることが認められる。したがって、本件各記事については、いずれも、原告が著作者として著作権を有する(法 15 1 項)。
3 被告による著作権(複製権及び公衆送信権)侵害について
(1) 前記のとおり、被告は、平成17827日~平成31416日の間、別紙一覧表のとおり、合計829件の本件各記事の画像データを作成し記録媒体に保存した上、これを被告イントラネット上にアップロードし、被告従業員等が閲覧できる状態に置いた。こうした被告の行為は、原告の本件各記事に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものといえる。
(2) 本件各記事の内容や被告の行為態様等に照らすと、被告には、本件各記事に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害につき、少なくとも過失が認められる。
これに対し、被告は、原告の上記著作権の侵害につき、故意も過失もない旨を主張する。
しかし、著作物に係る創作性につき前記のとおり解すると、事実の伝達等を内容とする新聞記事であっても著作物といえる場合が広く存在し得るものと考えられる。後記のとおり、遅くとも本件の請求対象期間の始期頃において既に原告が本件料金表1に基づき使用料を収受する運用を行っていたことも、これを前提とするものと理解される。そうすると、被告又は被告担当者においても、少なくとも、新聞社がその発行する新聞記事の著作権を有しており、その使用にあたっては当該新聞社の許諾を得る必要がある(又はそのような場合が少なからずある)といった一般的な知識を有していなかったとは考え難い。また、被告が本件各記事の著作権やその使用の許否につき、法的な観点から調査検討したことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
(3) 小括
以上によれば、被告による本件各記事に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害の不法行為の成立が認められ、被告は、原告に対し、その損害を賠償すべき責任を負う。
[控訴審同旨]
一審被告は、本件料金表1ないし4が国民や企業者向けにアナウンスがされていないことや、本件新聞の記事についての著作物性の疑義から、本件新聞の記事についての著作権侵害の故意、過失があると認定することはできないと主張する。
この点、本件料金表1ないし4自体は一審原告の内部における算定基準にすぎないものの、一審原告がこれらに基づいて使用料を収受していたという社会的な実態があることや、一審原告が、TX[注:「つくばエクスプレス」のこと]開業以前から毎年繰り返し、本件新聞上に記事の著作権が保護されていることに関する記事を掲載していたこと、一審被告自身も自社のウェブサイトにおいてコンテンツの著作物性を主張し、事前に許可のない使用を禁じていることを踏まえると、新聞記事に著作物性が認められることがあり、その記事の使用に当たっては新聞社の許可を得る必要があるといった一般的な知識を一審被告が有していなかったとまでは直ちに認めがたい。一審被告には、一審原告の著作権を侵害していることについて懸念を抱く余地があったといわざるを得ず、一審被告が本件各記事の著作権やその使用の許否について、法的な観点から調査検討したことは本件証拠上認められないことも踏まえると、一審被告には少なくとも過失が認められる。結局のところ、一審被告の上記主張は、いわゆる法の不知と同種の位置付けを与えられるべきものというべきであり、採用し得ない。

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