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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

写真著作物▶その他(ドローンで撮影した写真/スカイダイビング中の写真/スナップ写真/工場内全体を撮影した写真/美術館の写真/制作工程の写真/結婚式場の写真/法要の写真/野球大会の応援風景を撮影した写真/舞子の写真/遺跡の写真/SM写真/コスプレ写真/ポートレート/犬の写真)

[ドローンで撮影した写真]
▶令和4531日東京地方裁判所[令和3()9618]
原告写真は著作物に当たるかについて
(1) 前記前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告写真は、原告が、天候の良好な日の日中に、シンガポール共和国に所在するマリーナ・ベイ・サンズホテルを被写体として、ドローンを使用して、同ホテルの屋上を空から斜めに見下ろす角度で、同ホテルの屋上全体と周囲の景観等との調和を図りつつ撮影したものと認められる。そうすると、原告写真は、撮影の時間帯、撮影時の天候、構図等の選択において、原告の個性が表現されたものというべきである。
したがって、原告写真は、原告の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たる。
(2) これに対し、被告は、マリーナ・ベイ・サンズホテルの屋上プールをドローンで空から撮影すれば、どれも原告写真と類似したものにならざるを得ないなどと主張して、原告写真の著作物性を争っている。
しかし、写真の表現方法としては、撮影対象や撮影方法以外にも、構図等の選択において様々な工夫の余地が残されているところ、上記のとおり、原告写真には、それらの選択において原告の個性が表現されているというべきである。被告の上記主張は採用できない。

[スカイダイビング中の写真]
▶平成150226日東京高等裁判所[平成14()3296]
本件各写真は,被控訴人が,本件スカイダイビングに参加していた当時,自らもスカイダイビングの体勢をとり,頭部ヘルメット上に固定したカメラを手元で遠隔操作して,同じくスカイダイビング中の他の参加者等を空中で撮影した写真であって,その際,被控訴人は,事前に,地上の光量と上空の光量との違い,撮影すべき写真の構図及びシャッターチャンス,順光・逆光の選択等その撮影効果を検討,想定し,カメラの露出をセットするなどの準備をした上,スカイダイビング中において,自己及び撮影依頼者の安全に注意し,あらかじめ検討,想定した被写体との距離及び位置関係を保てるよう自己の位置を調整し,最も効果的な構図でシャッターを切る工夫をして撮影したものである。そうすると,本件各写真は,被控訴人において,上記諸要素を考慮して撮影効果を工夫し,自ら構図を決定し,シャッターチャンスをとらえて撮影した写真であるから,被控訴人の思想又は感情を一定の映像によって創作的に表現したものとして著作物性を有するというべきである。

[スナップ写真]
平成27625日東京地方裁判所[平成26()19866]
スナップ写真であっても思想又は感情が創作的に表現されていれば著作物性を認めることができる(。)

[工場内全体を撮影した写真]
▶平成200626日東京地方裁判所[平成19()17832]
本件写真は,原告代表者が,R社の工場内の天井,左側壁面及び前方奥の壁面を主な被写体として,これらを写真全体の3分の2程度に大きく取り入れた構図とし,低いアングルから工場内全体を撮影したものであること,②原告代表者は,上記工場内の天井及び壁面にR製品が使用されている状況並びに同工場内にエアコンが設置されていない状況などを表現するために,上記構図及びアングルを選択したことに照らすならば,本件写真は,被写体の構図及びアングルの選択において,撮影者である原告代表者の創作性が認められ,原告代表者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められるから,著作物(著作権法211号)に当たるものと認められる。

[美術館の写真]
▶平成30619日東京地方裁判所[平成28()32742]
美術館写真は,別紙記載のとおり,一竹美術館の外観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,その性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表れないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認められない。

[制作工程の写真]
▶平成30619日東京地方裁判所[平成28()32742]
制作工程写真は,別紙記載のとおり,故一竹による「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写真は,いずれも著作物とは認められない。


[結婚式場の写真]
▶令和21023日東京地方裁判所[令和2()1667]
本件各写真は,結婚式場における新郎新婦及びその家族の姿(本件写真1)並びにテーブルコーディネート(本件写真2)を被写体とするものであり,その被写体につき構図や撮影角度,被写体との距離,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係等について撮影者の個性・独自性が表れているといえ,「写真の著作物」(著作権法10条1項8号)に当たると認めることができ,原告は,本件各写真の著作権者といえる。

[法要の写真]
▶令和21014日東京地方裁判所[令和2()6862]
本件写真は,原告の施設内の一室で行われた法要において,多数の参加者が椅子に座って手を合わせている様子を撮影した写真であると認められるところ,本件写真は,後方にいる参加者まで撮影の対象にしつつ,前方の参加者の顔が重ならないよう,撮影のアングル,シャッタースピード,タイミング等において工夫がされているものと認められる。
そうすると,本件写真は,撮影者の個性が現れ,撮影者の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たるというべきである。

[野球大会の応援風景を撮影した写真]
平成30426日東京地方裁判所[平成29()29099]
本件写真は,画像の上半分に野球場のフェンス,その土台及びフェンス越しのグラウンド,下半分にスタンドが写っていて,フェンス側及びスタンド側で画面が斜め(右斜め下方向)に分けられているカラー写真である。スタンドとフェンスの間には,スタンドに向いて起立し,背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けて応援団を統率している学生服姿の女子生徒が写っており,その女子生徒の左側にスタンドの観客席で起立してメガホンを持つなどする学生服姿やユニホーム姿の数名の男子生徒が写っていて,また,女子生徒の右側下部分には試合を観戦する観客数名の後頭部が写っている。
本件写真は,撮影者であるAが,平成17年5月16日,埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を,被写体,シャッターチャンス,撮影方向(アングル),撮影角度を変え,全体の構図を考えながら,デジタルカメラで何枚も撮影したうちの1枚であり,野球場のグラウンド部分と三塁側スタンド部分で画面を斜め(右斜め下方向)に分け,中央に女子生徒を配し,同女が応援団を統率する光景を,スタンド上方斜め右(本塁寄り)から俯瞰する角度で,女子生徒が両手を上方に高く広げる構図を狙って撮影したものである。
このように,本件写真の撮影者であるAは,本件写真の撮影に当たり,被写体の選択や配置,シャッターチャンスの捕捉,アングル,構図等に工夫を加えて撮影しており,撮影者の思想・感情が創作的に表現されているから,本件写真は写真の著作物として著作物性が認められる。

[舞子の写真]
 平成28719日大阪地方裁判所[平成26()10559]
ところで写真が著作物として認められ得るのは,被写体の選択,シャッターチャンス,シャッタースピードの設定,アングル,ライティング,構図・トリミング,レンズの選択等により,写真の中に撮影者の思想又は感情が表現されているからであり,したがって写真は,原則として,その撮影者が著作者であり,著作権者となるというべきことになる。
これにより本件について見ると,本件写真は,舞のポーズをとった舞妓を,やや斜め左前の位置で,舞妓をごく僅かに見上げる高さから撮影したものであるが,舞を踊るポーズを取る舞妓の表情及び全身を捉える撮影位置,撮影アングル,構図を選択したのは撮影者の原告であり,本件写真は,このことにより撮影者である原告の思想又は感情が創作的に表現されているといえるから,これによりその著作物性が肯定され得る。

[遺跡の写真]
▶令和21223日東京地方裁判所[令和2()24035]
本件写真は,原告が,天候の良好な平成23年3月2日の日中に,インドの世界遺産であるエローラ石窟群のカイラーサ寺院を被写体として選択し,日陰となる箇所が極力少なくなるように配慮しつつ,同寺院の正面を斜め上方から,同寺院の主要な建物を中心に据え,その全体がおおむね収まるように撮影したものであることが認められる。 そうすると,本件写真は,原告が撮影時期及び時間帯,撮影時の天候,撮影場所等の条件を選択し,被写体の選択及び配置,構図並びに撮影方法を工夫し,シャッターチャンスを捉えて撮影したものであるから,原告の個性が表現されたものということができる。したがって,本件写真は原告の思想又は感情を創作的に表現した「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当し,本件写真を創作した原告は「著作者」(同項2号)に該当するので,本件写真に係る著作権及び著作者人格権を有する。

[SM写真]
平成30927日東京地方裁判所[ 平成29()41277]
本件写真は,民家風の建物の畳敷きの室内において,鞭を持って座っている男性の正面に,女性が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたものであるところ,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,部分の強調,背景等の総合的な表現に撮影者等の個性が表れており,創作性が認められ,著作物に当たる。

[コスプレ写真]
平成301026日東京地方裁判所[平成30()21931]
本件各写真は,いずれも有名な女性コスプレイヤーを被写体とするものであるが,本件写真1は,日中の屋外において身体を横向きにして視線をカメラに向けた被写体のバストアップの写真であり,被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光させるなどして撮影されたものであること,本件写真2は,屋内において身体を正面に向け視線をカメラに向けた被写体の上半身の写真であり,被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光させるなどして撮影されたものであることが認められる。このように,本件各写真は,絞りや陰影,構図やアングルなどを工夫して撮影されたものであるから,写真の著作物であると認められる。

[ポートレート]
▶令和3511日大阪地方裁判所[令和2()10932]
原告画像は,職業写真家である原告代表者が,男女の俳優,アイドル,タレント,モデル,ダンサー,アナウンサーといった,著名人に属する人達を被写体として撮影した,グラビア又はポートレートと呼ばれる写真である。
各画像それ自体,及び各画像とともに本件コーナーに掲載された各被写体の他の画像に照らすと,原告画像は,原告代表者が,被写体である人物の魅力等を引き出すために,被写体の構図やポージング,被写体と撮影者との距離,撮影角度,光線との関係及びシャッターチャンスの捕捉等を工夫して,撮影したものであると認められる。
したがって,原告画像は,原告代表者の思想又は感情を創作的に表現したものであって,写真の著作物に当たると認められる(著作権法2条1項1号,10条1項8号)。

[犬の写真]
▶令和3720日東京地方裁判所[令和3()7035]
本件写真は,原告が,犬が自宅で仕事をしているかのような印象を与えるために,パソコンのディスプレイ,キーボード,マウス,ライト等を配置したデスク及その背景に英語が記載されたポスターを掲示した自宅内において,服を着せた犬をディスプレイやポスターに対面して座らせ,これらの組合せを被写体として選択し,中でも,犬の背中を構図のほぼ中心に添え,カメラアングル等にも意を用い,適切なシャッターチャンスを捉えて撮影したことが認められる。 そうすると,原告が撮影した本件写真は,撮影場所の選択,被写体の選択及び配置,構図,カメラのアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉等の点において,撮影した原告の個性が現れているものと認められ,著作物性が認められる。

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