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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

写真著作物▶写真著作物性一般

▶平成180329日知的財産高等裁判所[平成17()10094]
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。
このような表現は,レンズの選択,露光の調節,シャッタースピードや被写界深度の設定,照明等の撮影技法を駆使した成果として得られることもあれば,オートフォーカスカメラやデジタルカメラの機械的作用を利用した結果として得られることもある。また,構図やシャッターチャンスのように人為的操作により決定されることの多い要素についても,偶然にシャッターチャンスを捉えた場合のように,撮影者の意図を離れて偶然の結果に左右されることもある。
そして,ある写真が,どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを,その写真自体から知ることは困難であることが多く,写真から知り得るのは,結果として得られた表現の内容である。撮影に当たってどのような技法が用いられたのかにかかわらず,静物や風景を撮影した写真でも,その構図,光線,背景等には何らかの独自性が表れることが多く,結果として得られた写真の表現自体に独自性が表れ,創作性の存在を肯定し得る場合があるというべきである。
もっとも,創作性の存在が肯定される場合でも,その写真における表現の独自性がどの程度のものであるかによって,創作性の程度に高度なものから微少なものまで大きな差異があることはいうまでもないから,著作物の保護の範囲,仕方等は,そうした差異に大きく依存するものというべきである。したがって,創作性が微少な場合には,当該写真をそのままコピーして利用したような場合にほぼ限定して複製権侵害を肯定するにとどめるべきものである。

▶平成90130日仙台高等裁判所[平成7()207]
本件写真は、控訴人が、我国古代史の研究ないし解明に役立つと考えて、被写体を選定し、その撮影方法についても工夫を凝らして、古代史学に関する資料を他にさきがけて明確にしておく目的で撮影したものであり、控訴人の著作物として保護されるべきものであることは疑いを容れないところであって、控訴人がいわゆる学者や職業的写真家ではなく、写真に関しては素人であることは右判断の妨げとなるものではない。

▶令和21028日知的財産高等裁判所[令和1()10071]
写真は,被写体の選択,組合せ,配置,陰影若しくは色彩の配合,構図若しくはトリミング,部分の強調若しくは省略,背景,カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉又はシャッタースピード若しくは絞りの選択等の諸要素を結合してなる表現であり,写真を写真の著作物として保護するためには,これら諸要素に撮影者の思想又は感情が創作的に表現され,その撮影者の個性が表されていることが必要であると解される。
また,写真と文字,図形等を組み合わせた画像を著作物として保護するためには,これと同様に,当該画像に作成者の個性が表されていることが必要であると解される。

平成27129日東京地方裁判所[平成27()14747]
「写真の著作物」は,著作権法10条1項8号に列挙された著作物であるところ,同法は,写真の著作物につき特別の定義規定を置いていないが,「写真の著作物」には写真の製作方法に類似した方法を用いて表現される著作物を含むものとし(同法2条4項),その著作者は発行されていない写真の著作物を原作品により公に展示する権利を専有することとし(同法25条),公表や展示の同意に関する特別の規定(同法4条4項,18条2項2号,45条1項)を設けるなど,写真の著作物に特有の,特に美術の著作物に類する規定を置いている。その一方で,写真の著作物の創作性を表現する方法である「写真」については,有形的再生である複製の方法として規定している(同法2条1項15号)ことからも明らかなとおり,写真それ自体が被写体に何らの創作性を加えない場合もあり得ることを同法は予定しているものである。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。こうした写真の表現方法のうち,レンズの選択,露光の調節,シャッタースピードや被写界深度の設定,照明等の撮影技法を駆使した成果として得られることもあれば,オートフォーカスカメラやデジタルカメラの機械的作用を利用した結果として得られることもある。また,このうちの構図やシャッターチャンスのように人為的操作により決定されることの多い要素についても,偶然にシャッターチャンスを捉えた場合のように,撮影者の意図を離れて偶然の結果に左右されることもある。その写真について,どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを写真自体から知ることは困難な場合もあり,写真から知り得るのは結果として得られた表現の内容ではあるものの,静物や風景を撮影した写真であっても,その構図,光線,背景等,上記諸要素の設定や取捨選択等に何らかの個性が表れることが多く,結果として得られた写真の表現にこうした独自性が表れているのであれば,そこに写真の著作物の創作性を肯定することができるというべきである。

平成30329日 東京地方裁判所[平成29()672]
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表れていれば創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。
これを本件についてみると,本件写真素材は,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップを口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表現を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。
これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいずれにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記のとおりであるから,被告の主張は採用できない。

▶平成141114日大阪地方裁判所[平成13()8552]
写真は、誰でもカメラで撮影すれば、現像、焼付等の処理を経ることにより被写体を写し取った写真が出来上がるものであるから、カメラという機械に依存するところが大きく、撮影者の創作性が発揮される部分が小さい。しかし、写真がカメラの機械的作用に依存するところが大きいとしても、被写体の選定、露光の調節、構図の設定、シャッターチャンスの捉え方、その他の撮影方法において、撮影者の個性が現れた創作的表現が認められれば、著作物として保護されるものというべきである(著作権法1018号)。

▶平成131011日東京地方裁判所[平成12()2772]
写真が,著作権法1018号の「写真の著作物」として著作権法の保護の対象となるためには,それが対象物の単なる機械的複製ではなく,写真の被写体の選定,写真の構図,光量の調節,シャッター速度などの工夫によって,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められることを要すると解される(。)

▶平成101130日東京地方裁判所[昭和63()1372]
本件写真のように原作品がどのようなものかを紹介するための写真において、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上、右認定のような技術的な配慮も、原画をできるだけ忠実に再現するためにされるものであって、独自に何かを付け加えるというものではないから、そのような写真は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法211号)ということはできない。

▶平成70328日大阪地方裁判所[平成4()1958]
著作物について要求される表現の創作性については、著作者の個性が表現の中に何らかの形で現れていれば足りると解すべきである。
これを写真についてみると、単なるカメラの機械的な作用のみに依存することなく、被写体の選定、写真の構図、光量の調整等に工夫を凝らし、撮影者の個性が写真に現れている場合には、写真の著作物(同法1018号)として著作権法上の保護の対象になるものというべきである。

▶平成70221日青森地方裁判所[平成4()344]
一般に写真撮影は機械的作用に依存する部分が多く、精神的操作の余地が少ないものと認められ、この点において他の著作物と趣を異にすることは否定できない。しかしながら、写真の撮影についても、主題の決定、被写体・構図・カメラアングル・光量・シャッターチャンス等の選択について創作性が現れる余地があり、このような創作性が認められる限り、写真の著作物性が肯定されるものと解するのが相当である。

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