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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

写真著作物の侵害性▶個別事例①

▶平成161129日東京高等裁判所[平成15()1464]
一般に,肖像写真は,被写体である人物をどのように表現するかを中心として,写真表現における創意工夫がされるものであるから,複製か否かを判断するに当たっては,人物を表現した部分に重きを置いて,著作物である写真の創作的特徴が複製を主張される写真に再現されているかどうかを検討することが許されるというべきである。上記観点から,1審原告写真と本件ビラ写真とを対比観察すると,本件ビラ写真は,比較的鮮明な白黒写真であって,1審原告写真の肖像部分のカラー画像を白黒画像に変えただけのものであることを一見して看取し得るものである上,具体的な表現形式という点でも,1審原告写真における人物のポーズや表情はもとより,顔の陰影,人物が着用しているローブの状態など,1審原告写真の撮影者が照明や光量,絞り等の工夫をすることによって表現した創作部分の特徴は,カラー写真が白黒写真に変更された後も,なお,相当程度忠実に再現され,実質的に維持されていると認められる。したがって,本件ビラ写真は,カラーが白黒になり,背景及び被写体である人物の下半身がカットされていても,なお,1審原告写真の複製物に当たるということを妨げない。

▶平成230209日東京地方裁判所[平成21()25767]
本件写真と上記各被告写真とを対比すると,被告写真1は縦横の比率が若干横伸びしたように変更されており,被告写真1及び同3は色調がカラーからモノクロに変更されており,被告写真5は被写体の両目部分に目隠し様の白いテープが貼付されているが,いずれも本件写真の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されており,その表現上の本質的特徴を直接感得するのに十分な大きさ,状態で,ほぼ全体的にその表現が再現されていると認められ,他方,被告による上記変更には,創作性があるとは認められない。したがって,被告写真1,同3及び同5は,いずれも本件写真の複製物である。

平成27427日東京地方裁判所[平成26()26974]
本件写真1等は,本件写真のうち,A名誉会長の肩から上の部分だけを切り出し,A名誉会長の額に大きさの異なる三つの目のような模様を縦に描き加えたものであると認めることができる。本件写真1等を見るに,上記のような違いはあるものの,本件写真におけるA名誉会長の表情をはっきりと確認することができることからすれば,本件写真1等からは,本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で,上記の本件写真1等における本件写真からの改変部分に,新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって,本件写真1等は本件写真の複製物である。
(略)
本件写真19等は,本件写真のうち,被写体であるA名誉会長の首から上の部分を切り出し,A名誉会長の眼鏡の部分を茶色く塗り,頬の皺に沿って赤色の線を引いたものであると認められる。本件写真19等を見るに,上記のような違いはあるものの,未だ,本件写真におけるA名誉会長の表情を確認することができるものというべきであるから,本件写真19等からは,本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で,上記の本件写真19等における本件写真からの改変部分に,新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって,本件写真19等は本件写真の複製物である。

▶平成28118日東京地方裁判所[平成27()21642]
本件掲載写真は,本件写真のうち,A名誉会長の胸部を削除し,肩までの上半身の写真にしている点を除き,被写体の表情,姿勢,服装,背景,被写体の顔に映る陰影等において本件写真と同一であり,本件写真をそのままデータ化してインターネット上に掲載されたものと認められ,本件写真で特徴的に表現されているA名誉会長の表情及び姿勢を明確に覚知することができる。
また,本件掲載写真は,本件投稿者が,本件記事に付すために本件写真検索サイトから選択した画像検索サイト上の写真であったことが認められる。画像検索サイト上の写真には原告の著作物であることを明示した表示はないものの,画像検索サイト上の写真は,被写体の表情,姿勢,服装,背景,被写体の顔に映る陰影等において本件写真と同一であり,本件写真を複製したものと認められる。
以上によれば,本件掲載写真は,本件投稿者が,本件写真と同一性を有する画像検索サイト上の写真に依拠して再製したものといえ,本件掲載写真は,本件写真を複製したものと認められる。

▶令和2219日東京地方裁判所[平成31()9347]
本件写真1と本件記事写真1とを対比すると,本件記事写真1には,本件写真1の画面手前側の人の頭の影や演台全体が含まれていないものの,A名誉会長の服装及び姿勢,本件揮毫の設置態様,A名誉会長,本件揮毫,演台の縁及びマイクの位置並びにA名誉会長の背後にいる人物及びその背後のつい立ての位置関係等が同一であると認められるから,本件記事写真1の影像は,本件写真1の一部をトリミングしたものと同様であると認められる。そして,本件記事写真1において, 本件写真1の創作的表現を明確に覚知することができる。
したがって,本件記事写真1は,本件写真1に依拠して再製されたものであるといえるから,本件投稿1によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたと認められる。

▶令和2129日東京地方裁判所[令和2()12113]
本件投稿写真が,本件写真をトリミングするなどした上,これに依拠して再製されたものであることは特に争いがない。
そして,本件写真は,原告の名誉会長夫妻が,原告の施設を訪れた際,多数の会員らが拍手で迎え,同夫妻らが車中から応じる様子を撮影した報道写真であり,その場面を効果的に表現するため,撮影方法等に工夫がされたものであると認められるものであるのに対し,本件投稿写真は,本件写真の相当部分を切り出し,本件写真が表現する前記の場面のうち,同夫妻ら及び同会員らの相当数の様子を十分に覚知し得るものである。
そうすると,本件投稿写真は,本件写真の創作性がある部分を再製したものであり,これを「複製」(著作権法21条)したものであるということができる。

▶令和3114日大阪地方裁判所[令和2()1995]
前記のとおり,本件画像は,本件元画像を原告の鼻部分を中心に円状にトリミングして作成されたものであり,原告の鼻部分ほぼ全体のほか,●省略●までの範囲がそこには含まれる。前記のとおり,本件元画像は,その撮影の方向,構図等に創作性が認められるところ,原告の鼻部分に係る構図はその創作性の一環をなすものである。このため,本件画像は,本件元画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しているものといえる。
したがって,本件投稿者は,既存の著作物である本件元画像に依拠し,かつ,表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えたものであるが,これに接する者が本件元画像の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に作成したものと認められる。
そうすると,本件投稿者による本件投稿は,少なくとも原告の本件元画像に係る複製権ないし翻案権を侵害するものといえる。

▶平成26527日東京地方裁判所[平成25()13369]
原告写真は,いずれも猫そのもの又は猫を含む風景を被写体とした写真であること,被告(会社)は,写真集に掲載された原告写真又はそのコピーに,猫の顔の部分を中心に切り取るか,又は猫のほぼ全身部分を切り取った上,更にその目の部分をくり抜く加工を施したことが認められる。これらの加工はいずれも定型的で単純な行為であり,これによって新たな思想又は感情が創作的に表現されたということはできない。したがって,この点について原告写真の翻案権侵害をいう原告の主張は失当というべきである。
本件看板は,目の部分をくり抜いた猫の写真ないしその複製物を色彩あるいは大きさのグラデーションが生じるように多数(正確な数についての主張はないが,全部で数百枚に及ぶことは明らかである。)並べてコラージュとしたものであり,全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴(原告が,それぞれの原告写真を撮影するに当たり,被写体の選択,シャッターチャンス,アングル,レンズ・フィルムの選択等を工夫することにより,原告の思想又は感情が写真上に創作的に表現されたと認められる部分。ただし,原告写真の表現上の本質的な特徴がどこに存在するかについて原告による具体的な主張はない。)を直接感得することができるといえないと解すべきである。
したがって,本件各パネル又は本件看板の作成行為が原告の翻案権を侵害すると認めることはできない。

平成28427日東京地方裁判所[平成28()2419]
本件写真1は,枝葉のほとんど見られない樹木の上部に,日本航空123便墜落事故の犠牲者と覚しき人物の手腕や衣類等が残存していると思われる場面を背景に,ヘルメットを着用した捜索隊員と思われる人物が捜索活動等に従事している際の表情を撮影したものと認められるところ,本件投稿写真1は,本件写真1に比して若干鮮明さに欠ける部分はあるが,本件写真1の特徴を細部にわたってそのまま再現しており,本件写真1との同一性を有するものと認められる。
また,本件写真2は,ヘルメットを着用した捜索隊員と思われる人物が,斜めに倒れた樹木に埋もれたがれき等を凝視する場面を撮影したものと認められるところ,本件投稿写真2は,本件写真2に比してやや周辺部分がトリミングされており,また,やや鮮明さを欠く部分があるが,本件写真2の特徴を細部にわたってそのまま再現しており,本件写真2との同一性を有するものと認められる。
そして,本件各写真が本件雑誌に掲載されて公表されたことは当事者間に争いがないところ,本件各写真が日本航空123便墜落事故の事故現場で事故直後に撮影されたものであり,一般の人物において容易に同様の写真を撮影できるような性質の写真とは認め難いことなどからすれば,本件各投稿写真は,いずれも,本件雑誌に掲載された本件各写真に依拠して有形的に再製されたもの,すなわち,本件各写真の複製物であると認められる。

平成30426日東京地方裁判所[平成29()29099]
本件写真と本件画像を対比すると,本件画像は,本件写真のうち,応援団を統率する女子生徒と起立して応援する生徒等が写っている左部分及び中央部分を使用し(本件写真の約半分程度),グラウンドや観客数名の後頭部等が写っている部分を除いて,モノクロ画像にするなどの加工を経たものであると認められる。
本件画像は,本件写真に写っていたグラウンドや一部の観客の後頭部等が写っていないほか,加工を経たことによって,モノクロ画像となり,また,本件写真と比べると,女子生徒や応援する男子生徒らの表情等がやや不鮮明なものとなっている。しかし,本件画像は,フェンスとその土台で画面を右斜め下方向に分け,フェンスの前に応援団を統率している学生服姿の女子生徒を配し,女子生徒の左側に学生服姿やユニホーム姿の男子生徒を配して,女子生徒が起立して背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けた瞬間を斜め上方から俯瞰する角度で捉えた画像であるところ,これらは,本件写真における創作的な部分であり,本質的特徴といえる部分で,本件画像は本件写真におけるこの創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したといえる。
したがって,本件画像は,本件写真に依拠し,本件写真の創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したものであって,本件写真を複製したものであると認められる。

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