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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作権の侵害性▶侵害性一般

平成250418日知的財産高等裁判所[平成24()10076]
編集著作物における創作性は,素材の選択又は配列に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,編集者の個性が表れていることをもって足りるものと解される。もっとも,編集著作物においても,具体的な編集物に創作的な表現として表れた素材の選択や配列が保護されるのであって,具体的な編集物と離れた編集方針それ自体が保護されるわけではない。

▶令和2127日大阪地方裁判所[平成29()12572]
編集著作物においては,素材の選択又は配列によって具現された編集方法が保護の対象となるのであって,具体的な編集物を離れた,編集方法それ自体はアイデアであって保護の対象とはならない。したがって,具体的な配列を離れた配置方針や分類が類似していても,それは表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,編集著作物の複製権を侵害しないというべきである。

平成171215日大阪高等裁判所[平成17()742]
編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法121項)ところ,商品の取扱説明書は,当該商品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とは対象とする商品が異なっており,「素材」となる情報も異なるから,既にこの点において,被控訴人取扱説明書が控訴人取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできない。

平成70328日大阪地方裁判所[平成4()1958]
そもそも、本件カタログにはパロマの商品の写真及び説明文が、被告カタログには被告商品の写真及び説明文が掲載されているところ、編集著作権においても、保護の対象とするのは素材の選択、配列方法という抽象的なアイデア自体ではなく、素材の選択、配列についての具体的な表現形式であるから、素材において本件カタログと全く異なる被告カタログが本件カタログの編集著作権を侵害するものであるということはできない。

平成140328日東京地方裁判所[平成10()13294]
編集著作物に該当する具体的な編集物に記載,表現されているもののすべてが編集著作権の対象となるものではなく,編集著作権の対象として,その選択,配列の創作性が問題とされる素材が何であるかは,具体的な事案に即して当該編集物の性質,内容によって定まるものである。そして,定期刊行物である雑誌についていえば,編集著作権は,個別の記事を構成する文章や写真の著作権と区別して観念することができるものであるところ,この場合に編集著作権の対象となるのは,当該号全体を通じての主題(特集号など)を決定し,掲載する記事やグラビア等の写真の主題を定め,掲載する個別の記事,写真,イラスト等を取捨選択して,その配列等を決定するという編集者の知的創作活動の結果としての,雑誌における全体的構成,記事,写真等の選択,配列であるというべきである。
(略)
本件において原告会社が編集著作物についての著作者人格権及び編集著作権の侵害として主張する改変部分については,いずれも,個々の文章表現や個別の写真に付された説明文の表現内容,配置に関するものであって,編集著作物の対象としての素材の選択・配列を改変するものではないから,そもそも編集著作物についての著作者人格権の侵害や編集著作権の侵害を問題とする余地はないというべきである。

▶平成170701日東京地方裁判所[平成16()12242]
編集著作物は,編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものをいい(著作権法121項),編集著作物の著作者の権利は,当該編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない(同条2項)。同条は,既存の著作物を編集して完成させたにすぎない場合でも,素材の選択方法や配列方法に創作性が見られる場合には,かかる編集を行った者に編集物を構成する個々の著作物の著作権者の権利とは独立して著作権法上の保護を与えようとする趣旨に出たものである。
そうすると,編集著作物の著作者の権利が及ぶのは,あくまで編集著作物として利用された場合に限るのであって,編集物の部分を構成する著作物が個別に利用されたにすぎない場合には,編集著作物の著作者の権利はこれに及ばないと解すべきである。
編集著作物はその素材の選択又は配列の創作性ゆえに著作物と認められるものであり,その著作権は著作物を一定のまとまりとして利用する場合に機能する権利にすぎず,個々の著作物の利用について問題が生じた場合には,個々の著作物の権利者が権利行使をすれば足りる。また,編集物の一部分を構成する個々の著作物の利用に際しても編集著作物の著作者の権利行使を許したのでは,個々の著作物の著作者の権利を制限することにもなりかねず,著作権法122項の趣旨に反することになるといわざるを得ない。

▶平成171121日知的財産高等裁判所[平成7()10102]
編集著作物は,素材の選択又は配列に創作性を有することを理由に,著作物として著作権法上の保護の対象とされるものであるから,編集者の思想・目的も素材の選択・配列に表れた限りにおいて保護されるものというべきである。したがって,編集著作物を構成する素材たる個別の著作物が利用されたにとどまる場合には,いまだ素材の選択・配列に表れた編集者の思想・目的が害されたとはいえないから,編集著作物の著作者が著作者人格権に基づいて当該利用行為を差し止めることはできない。

令和元年1125日知的財産高等裁判所[令和1()10043]
最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決は,言語の著作物に関してであるが,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為であるとしている。そして,翻案の意義は,本件問題のような編集著作物についても同様であると解されるから,編集著作物の翻案が行われたといえるためには,素材の選択又は配列に含まれた既存の編集著作物の本質的特徴を直接感得することができるような別の著作物が創作されたといえる必要があるものと考えられる。

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