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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

職務上作成する著作物の著作者▶職務著作性

[法人等の発意]
▶平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]
「法人等の発意」の要件については,法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があるとすることに異論はないところであるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意」の要件を満たすと解するのが相当である。

▶平成220804日知的財産高等裁判所[平成22()10029]
法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があるとすることに異論はないところであるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意」の要件を満たすものと解すべきである。

平成28224日知的財産高等裁判所[平成26()10117]
著作権法15条2項にいう法人等の「発意」とは,著作物の作成が直接又は間接に法人等の意図に由来するものであることであって,そもそも法律行為ではない(。)

▶平成200722日大阪地方裁判所[平成19()11502]
「法人等の発意」があったというためには,著作物作成に向けた意思が直接又は間接に法人等の判断にかかっていればよいと解すべきであり,明示の発意がなくとも,黙示の発意があれば足りるものというべきである。

▶平成200625日東京地方裁判所[平成19()33577]
「発意」については,法人等の使用者の自発的意思に基づき,従業員に対して個別具体的な命令がされたような場合のみならず,当該雇用関係等から外形的に観察して,法人等の使用者の包括的,間接的な意図の下に創作が行われたと評価できる場合も含まれるものと解すべきである。

▶平成240216日大阪地方裁判所[平成21()18463]
著作権法151項にいう「法人等の発意に基づく」とは,当該著作物を創作することについての意思決定が,直接又は間接に法人等の判断により行われていることを意味すると解され,発案者ないし提案者が誰であるかによって,法人等の発意に基づくか否かが定まるものではない。つまり,本件対策問題集の制作が原告の判断で行われたのであれば,「原告の発意に基づく」といえるのであって,最初に作成を思いついた人物や企画を出した人物が,(だれ)であったかは,この点を左右しない。

平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]
「法人の発意」の要件を満たすためには,著作物の作成の意思が直接又は間接に使用者の判断にかかっていればよく,著作物作成に至る経緯,業務従事者の職務,作成された著作物の内容や性質,両者の関連性の程度等を総合考慮して,従業者が職務を遂行するために著作物を作成することが必要であることを想定していたか,想定し得たときは,上記要件を満たすと解するのが相当である。

平成28225日東京地方裁判所[平成25()21900]
「法人等の発意に基づくこと」の要件については,Bは,原告が○○社に在籍中から,本件ゲームを新会社等において製作予定であることを告げて,原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘したこと,原告もBの勧誘があったために○○社を退社して本件ゲーム開発に関与したことを認めていること,その後も被告において本件ゲーム開発が行われ,被告名義で本件ゲームが配信されたこと等からすれば,本件において,実質的には,Bが代表取締役を務める被告の発意に基づいて本件ゲーム開発が行われたものと認められる。
なお,被告の設立日は平成24年9月19日であって,原告が本件ゲーム開発作業を始めた時期より後であるが,既に同年8月13日付けで被告の定款が作成されており,原告も,当初から,後に被告が設立され,被告において本件ゲーム開発が行われることを当然に認識していたものといえるから,被告の形式的な設立時期にかかわらず,実質的には,被告の発意に基づいて本件ゲーム開発が行われたといえるものであって,被告の形式的な設立時期は上記結論に影響を及ぼすものではない。

[法人等の業務に従事する者]
平成15411最高裁判所第二小法廷[平成13()216]
著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみて,同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。同項の規定により法人等が著作者とされるためには,著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることを要する。そして,法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが,雇用関係の存否が争われた場合には,同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である。

▶平成200924日那覇地方裁判所[平成19()347]
著作権法151項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かを決するに当たって斟酌すべき当該法人等の指揮監督の内容は,必ずしも当該著作物の創作性に寄与するものであることを要せず,業務遂行や労務管理等のための一般的なものでも差し支えないものというべきである。

▶平成210619日東京地方裁判所[平成20()12683]
「法人等の業務に従事する者」には,当該法人の代表取締役も含まれるものと解すべきである。

[「職務上作成する著作物」]
▶平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]
「職務上作成する著作物」の要件については,業務に従事する者に直接命令されたもののほかに,業務に従事する者の職務上,プログラムを作成することが予定又は予期される行為も含まれるものと解すべきである。

▶平成161112日東京地方裁判所[平成16()12686]
個々の著作物が著作権法151項にいう「職務上作成する著作物」に該当するかどうかは,法人等の業務の内容,著作物を作成する者が従事する業務の種類・内容,著作物作成行為の行われた時間・場所,著作物作成についての法人等による指揮監督の有無・内容,著作物の種類・内容,著作物の公表態様等の事情を総合勘案して判断するのが相当である。

▶平成200625日東京地方裁判所[平成19()33577]
「職務」についても,法人等の使用者により個別具体的に命令された内容だけを指すのではなく,当該職務の内容として従業者に対して期待されているものも含まれ,その「職務上」に該当するか否かについては,当該従業者の地位や業務の種類・内容,作成された著作物の種類・内容等の事情を総合考慮して,外形的に判断されるものと解すべきである。

平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]
「職務上作成」とは,業務に従事する者の職務上,著作物を作成することが予定又は予期される行為も含まれると解され,これに該当するか否かは,法人等の業務の内容,著作物を作成する者が従事する業務の種類や内容,著作物の種類や内容,著作物作成が行われた時間と場所等を総合して判断すべきである。

▶平成230128日東京地方裁判所[平成20()11762]
仮に,被告A1が勤務時間外に自宅で原告プログラムの作成を行った事実があり,それが原告プログラムの相当部分に及ぶものであったとしても,そのことによって当然に,原告プログラムの作成が原告の職務として行われたことが否定されることにはなら(ない。)

[「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」]
▶平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]
「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」の要件については,公表を予定していない著作物であっても,仮に公表するとすれば法人等の名義で公表されるべきものを含むと解するのが相当である。

▶平成210226日大阪地方裁判所[平成17()2641]
「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」とは,公表されていないものであっても,法人名義での公表が予定されているもの及び公表するとすれば法人の名義を付するような性質のものも含むと解される。

▶平成70328日大阪地方裁判所[平成4()1958]
未公表の著作物については、性質上法人等の著作名義で公表することを予定しているものは「公表するとすれば法人等の名義を付するような性格の著作物」ということができるとしても、既に公表された著作物であって、その公表の時点において法人等の著作名義が付されていないものは、「公表するとすれば法人等の名義を付するような性格の著作物」という余地はない(。)

▶平成121026日東京高等裁判所[平成11()5784]
法人著作の要件の一つである、公表に当たっての法人名義の有無は、創作の時点において、当該著作物が、法人等の名義で公表されるべく予定されていたかどうかによって決せられると解するのが相当であ(る。)

▶平成161124日東京高等裁判所[平成14()6311]
著作権法151項は「公表したもの」ではなく,「公表するもの」と規定しているのであるから,当該著作物の作成時において,法人等の名義で公表することを予定しているものであれば,職務著作としてその法人等が著作者となるものと解するのが相当である。

▶平成240216日大阪地方裁判所[平成21()18463]
著作権法151項の,「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」とは,その文言からして,結果として「法人等の名義で公表されたもの」ではなく,創作の時点において「法人等の名義で公表することが予定されていたもの」と解釈するのが相当である。

平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]
上記要件(「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」の要件)につき,その名義の認定については,その表示されている場所,体裁やその著作物の性質等から総合的に判断すべきである。
これを本件についてみると,前記説示のとおり,原書籍1及び2の本文は,当時,読売新聞社の従業員であって,その社会部に所属していた記者らが,社会的に問題となった本件利益供与及び接待汚職事件に関して,報道のために職務上行った取材に基づいて執筆し,これを職務上作成したものであること,原書籍1及び2の奥書には,「著者」として「読売新聞社会部」と表示され,「The Yomiuri Shimbun City News Department 1998 が表示されていることが認められる。
以上のような表示の場所,体裁や原書籍1の著作物としての性質等によれば,原書籍1及び2は,読売新聞社の著作名義の下に公表されたものと認めるのが相当である。

[「別段の定めがない」]
平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]
「その作成の時における契約,勤務規則その他に別段の定めがない」の要件は,著作物作成の時における契約,勤務規則その他において,職務著作に該当する場合であっても使用者ではなく従業者が著作者となる旨の定めが存在しない,との意味であると解される(。)

▶平成121026日東京高等裁判所[平成11()5784]
法人著作の右要件を満たすならば、原則として法人著作が成立するのであり、契約、勤務規則その他に法人著作が成立することを妨げる別段の定めは、法人著作が成立しないことを主張する者が、主張立証しなければならないのである。

▶平成200924日那覇地方裁判所[平成19()347]
そもそも,被告のような,写真や書籍等の制作を業とする法人等においては,制作した著作物の著作者が誰であるか,著作権が誰に帰属するかという事柄は,極めて重要なものであって,仮に制作後に差止め請求等を受けるときは,投下した資金等が無駄になることがあるのみならず,納入先ないし販売先等にも重大な営業上の悪影響ないし経済的損失を被らせる事態を生じさせる可能性があるものであって,従業員等がその職務上作成した著作物について著作者となる余地を残すとき等には,就業規則等に盛り込んだり,契約書等の書面を作成して,その合意内容を明確にするのが通常である。

[その他]
平成29523日知的財産高等裁判所[平成28()10113]
仮に,職務著作の創作の過程において,法人等が従業員に対し,何らかの不法行為又は債務不履行に当たる行為をしたとしても,当該行為が別途損害賠償請求等の対象となる可能性があることはあっても,当該行為の存在が著作権法15条2項の適用の可否に影響を及ぼすものでないことは明らかである。

平成27528日知的財産高等裁判所[平成26()10103]
元来,著作物は,著作者の思想又は感情の創作的表現であることに鑑みれば,著作者が自己の著作物に掲載すべく執筆したあとがきは,著作物と一体をなすものとして,そのような創作的表現と不可分の関係にあるということができ,この理は職務著作物についても妥当するというべきである。そうすると,原書籍について職務著作が成立する範囲は,原書籍の本文のみならず,本文と一体不可分の関係にあるあとがきにも及ぶ(。)

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