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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

職務上作成する著作物の著作者▶個別事例[否認例]

▶令和21116日東京地方裁判所[平成30()36168]
本件プログラムに係る職務著作の成否について
(1) 前記前提事実のとおり,原告は,プログラムの著作物である本件プログラムを作成した。
したがって,原告は,「著作物」である本件プログラム「を創作する者」として,「著作者」(著作権法2条1項2号)に該当するというべきである。
この点,被告らは,本件プログラムは被告学園の「業務に従事する」原告が被告学園の「発意に基づき」「職務上作成」したものであるから,著作権法15条2項により,本件プログラムの著作者は被告学園であると主張するので,以下検討する。
ア 本件プログラムは,平成25年5月23日までに作成された本件システムの一部に係るプログラムであるところ,本件システムの開発は,被告センターが被告学園に対して委託した本件協力事業に関する業務の一つとして,被告学園が原告に対して委託したものである。
上記委託当時,原告は被告学園と非常勤講師委嘱契約を締結していたが,これは本件専門学校において講義や実習等の教育指導等を行うことを業務内容とするものであり,被告学園からの委託を受けてSEHAIの教育管理システムを開発することを直接の業務内容とするものではなかったと認められる。
イ 原告は,被告学園から,非常勤講師としての給与(講義料)とは別に,本件システムの開発費用として105万円を受領し,さらに,被告学園との間で,平成25年4月以降の開発費用について協議したものであるから,原告による本件プログラムの作成は,報酬の点でも,被告学園の非常勤講師としての職務とは区別されていたものと認められる。
ウ 原告は,被告学園の担当者から要望を聞きながら本件システムの開発を行ったが,それは,本件システムに付する機能についての意向を聴取したにとどまるものであり,原告が被告学園の担当者に本件プログラムに係る圧縮ファイル(本件圧縮ファイル)を送付した平成25年5月23日までに,本件システムの開発に関して,被告学園が原告に対して具体的に指揮命令したことを認めるに足りる証拠はない。
エ 原告は,本件プログラムの作成作業を,自己がレンタル契約した原告サーバーに同プログラムをアップロードした上で,被告学園の非常勤講師としての業務時間以外の時間に,自己の機器を用い,自宅を作業場として行ったものであるから,その作成行為は,被告学園の非常勤講師としての業務とは場所的にも時間的にも独立していたものと認められる。
オ 原告は,電子情報通信学会において,被告学園が設置する本件専門学校の教員として,本件システムの開発について報告したが,本件専門学校の非常勤講師であった原告が,自らが経験した内容を基に発表したにすぎず,これをもって原告が被告学園の職務上本件システムの開発を行ったとはいえない。
カ 以上の事情を総合すれば,原告による本件プログラムの作成は,原告が被告学園の非常勤講師として従事していた業務に含まれていたとはいえず,その業務として予定又は予期されていたものともいえず,本件プログラム作成についての被告学園の関与の程度,本件プログラムの作成が行われた場所,時間,態様等に照らしても,原告が被告学園の職務上本件プログラムを作成したとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。
(3) よって,本件プログラムの著作者は原告であると認めるのが相当である。

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