Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作物の定義▶個別事例➁(インターネット展示システム)

▶令和31111日大阪地方裁判所[平成31()2534]/令和4713日知的財産高等裁判所[令和4()10023]
(注)「本件展示システム」とは、被告の運営する福井県自然保護センター(「本件センター」)でのインターネット展示システムをさす。
ア 著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)。したがって,著作物といえるためには,思想又は感情を表現したものであること,その表現に創作性があること,文学,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであることを要する。
イ 前提事実及び前記認定に係る各事実によれば,原告は,旧展示システムからの移行として本件展示システムを構築するに当たり,本件購入契約及び本件構築契約に基づき,本件展示システムの機能を実現するために必要な機能を選定し,性能,セキュリティ対策ないし費用等の面から必要かつ最適と考えるサーバ機器及びネットワーク機器等を,その組合せも踏まえた上で選定し,各機能等を分担させて本件展示システムを構築することとして,本件サーバ設計書を【作成し】,これに基づき,本件展示システムを構築したことが認められる。
【その上で、控訴人は、本件展示システム全体に著作物性があるとして、システムの機能を実現するための設計・構築については、控訴人による選択の幅が広く、どのようなソフトウェアやハードウェアを用い、それらをどのような構成で組み合わせ、どのように機能分担させるかに関する選択(必要機能の選定、機能分割設計、分割した機能単位の配置計画という設計行為)は、控訴人の技術者としての知識や経験が表出したものであるから、思想又は感情の創作的な表現である旨を主張する。
しかし、本件展示システムについて求められる機能のほか、基本的な構成やその構築に当たっての要件等は、本件購入仕様書及び本件構築仕様書において相応に具体的に定められており、控訴人による選択は、あくまでそれらの制約の中で行われるものである。また、本件展示システムは、公営の自然保護センターである本件センターにおける展示のためのインターネットに接続されるシステムであり、その性質上、システムの設計・構成については、あくまで円滑かつ安定した展示に資するとともにセキュリティ対策についても必要十分なものとするといった、その実用品としての機能を発揮させるべく、専ら技術的観点から行われるものと考えられる。
そして、設計され構築される本件展示システムは、実用的な工業製品である個々のハードウェアやその設定、ハードウェア間やインターネットとの間の接続、ソフトウェアといった個別的な要素の集合体として構成され、またそのような集合体として通常は観念されるもので、その全体が一まとまりに表現されたものとして存在するものともいい難い(なお、本件において、例えば、本件展示システム自体が本件センターにおける展示対象に含まれており、それゆえ上記の個別的な要素の集合体にすぎないものを超えて、一まとまりに表現されたものとなっているなどといった事情も認められない。)。
上記の点を考慮すると、控訴人が主張する本件展示システムの設計・構築に当たっての選択は、基本的に、上記の制約等の下で特定の機能を果たすべきシステムの設計・構築を合理的に行おうとした際に考え得る技術上のアイディア又は個々のアイディアの集合体にすぎず、法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。そして、本件全証拠をもってしても、本件展示システムについて、上記と異なって、控訴人の思想又は感情が創作的に表現されているといえるような特徴を有するものであるというべき事情は認められない。】
[控訴審も同旨]
▶令和4713日知的財産高等裁判所[令和4()10023]
当審における控訴人の補充主張についての判断
(1) 争点1(本件展示システムの著作物性)について
ア 控訴人は、本件展示システムの著作物性の根拠として、本件展示システムでは、各ソフトウェアやアプリケーションシステムそれぞれが個々に単独で存在するのではなく、一連の処理を実現するために、全ての機能が連携することによって結果が得られることを主張し、具体的には、WAF の採用やポート制御機能に係る選択、あるいはアプリケーションシステムをどのようにプログラムするかといった観点を指摘するなどして、本件展示システムがプログラムの著作物としての要件を備える旨を主張する。
しかし、本件展示システム自体について著作物性を認められないことは、訂正して引用した原判決で判断したとおりである。控訴人の上記主張は、同判断を左右するものではない。本件展示システム自体が、著作権法における「プログラム」(2条1項10号の2)や「データベース」(同項10号の3)に当たらないことは明らかであり、それにもかかわらず、本件展示システム全体が著作物性を有するというべき事情は認められない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp