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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の譲渡譲渡契約の成否/個別事例①(募集広告・応募要項があった事例等)

▶平成11930日東京高等裁判所[平成11()1150]
一審原告は、自己の著作した古文の受験参考書に、「∧あなたもゴロあわせを作ってこの本にのせよう∨自分で工夫した単語の覚え方を下記までお送りください。採用作品はあなたの作品であることを明記しこの本にのせます。なお、採用された方にはあなたの作品がのったこの本を郵送します。」との広告を掲載し、Cも この広告に応じて自己の創作した原告語呂合わせを一審原告に送付したことが認められるが、右広告には、応募作品の著作権は一審原告に帰属する旨を明記した記載はなく、また、右募集広告の文言のみから、原告書籍に掲載された投稿作品の著作権を一審原告に帰属させる旨の合意が成立したものと認めることはできない。

▶平成1389日東京高等裁判所[平成13()797]
控訴人は,原審において,東中コンペに合格したとしても,採用された設計図書の著作権全部が小諸市に移転するものではなく,東中学校を建設するのに必要な範囲で著作権の一部が小諸市に譲り渡されるにすぎず,それ以外は設計者である控訴人に残存する旨主張している。
しかしながら,小諸市の応募要領には,「採用した設計図書等の著作権は小諸市に帰属するものとし,この使用については小諸市が自由に行えるものとする。」と記載されており,応募者は,この条件を受け入れることを前提として,東中コンペ案を提出し,これが採用されたのであるから,小諸市と応募して採用された者との間には,採用された設計図書の著作権を小諸市に移転することについての合意が成立していると認められる。そして,小諸市の応募要領には,小諸市に移転するべき著作権の範囲について何らの限定もなく,また,上記権利移転の合意について何らかの制限があったことを窺わせるものは,本件全証拠を検討しても見いだすことができない。
そうすると,東中コンペ案についてもこれを前提にした東中実施設計図についても,控訴人が,これに基づく著作権主張をなし得ないことは,明白というべきである。

▶平成160513日東京高等裁判所[平成15()5509]
以上の事実からすれば,被控訴人県と被控訴人会社とは,平成9107日に,本件モニュメントのデザイン及び設計に係る委託業務契約を締結しており,控訴人は,そのころ,被控訴人会社との間で,控訴人が本件モニュメントに関して,そのデザインの提案をしたり,助言したりすることを合意したこと,控訴人が本件モニュメントのデザインに関してなした提案ないし助言の一部が採用されたため,控訴人は,被控訴人会社に対し,デザイン料約180万円を要求し,被控訴人会社からその要求金額の支払を受けたこと,控訴人は,第10回設計協議の段階における本件モニュメントのデザイン及び設計について,自己のアイデアが修正された態様で採用された部分も,採用されなかった部分も含め,その全体のデザインを了承し,被控訴人県が,そのデザイン及び設計に従って本件モニュメントを建設することを承諾していたこと,また,同協議以降,被控訴人県が本件モニュメントの設計デザインを設計協議の手続きを経ないで更に変更することをも了承していたこと,が認められる。
これらの事実と,本件モニュメントは,岐阜駅南口に設置することが当初から予定されており,それ以外の用途が考えられないものであったことをも考慮すれば,控訴人は,本件モニュメント製作に当たり,被控訴人会社との間で,その提供した図面等に描いたモニュメントのデザイン(本件著作物に当たるもの)について,これが美術の著作物に当たり,著作権により保護されるとしても,被控訴人会社に対し,その著作権を譲渡すること(被控訴人会社は,その後,上記委託業務契約に基づき,被控訴人県に対し,すべての著作権を譲渡することになる。)を,少なくとも黙示的には合意した上で,上記モニュメントに関するデザインを提案し,その対価として,被控訴人会社から,控訴人が要求したとおりの金額でその報酬を得た,と認めるのが相当である(仮に,著作権譲渡の合意について明確な合意があったと認めることが困難であるとしても,控訴人は,少なくとも,被控訴人会社が,被控訴人県の委託に基づいて,控訴人のデザインを一部採用した本件モニュメントのデザイン設計業務を行い,被控訴人県がこれに基づいて本件モニュメントを建設することを当初から基本的な前提条件として黙示に了承した上で,上記のとおり本件モニュメントについてのデザインを提案し,その対価を得たことを認めることができることは,明らかである。)。また,上記認定の事実からすれば,控訴人が本件著作物について,本件著作者人格権を有するとしても,控訴人は,被控訴人県が,控訴人のデザインの一部を採用したり,採用しなかったりすること,及び,控訴人のデザインを必要に応じ,修正した態様で採用した上で,本件モニュメントを建設することを当初から了承していた,と認めるのが相当である。

▶平成240509日知的財産高等裁判所[平成24()10013]
本件各映画には,本件各監督の個性が発揮され,本件各監督が,それぞれ本件各映画の制作に,監督として相当程度関与し,本件各映画の全体的形成に創作的に寄与した者ということができる。
そして,本件各監督と1審原告との間に著作権譲渡についての契約書はないが,1審原告が本件各映画の利用許諾等による対価を得た場合,本件各監督に対し追加報酬を支払い,また,1審原告が放送への利用許諾等をした際には,協同組合日本映画監督協会を通じて本件各監督等に対しその旨を連絡していることに照らすと,1審原告は本件各監督を本件各映画の著作者(の1人)として処遇し,遅くとも本件各映画が公開された頃までには,本件各監督が1審原告又は新東宝に対し,自己に生じた著作権を譲渡したものと推認することができる。
なお,長年にわたる1審原告の本件各映画の著作権の行使に対し,本件各映画の制作に関与した本件各監督以外の者から,自己が著作者であるとの主張がされた形跡がなく,また,本件各監督のほか本件各映画の制作に関与した者やそれらの遺族等から,何らかの異議が述べられた形跡もないことに照らすと,仮に,本件各監督のほかに本件各映画の全体的形成に創作的に寄与した者が存在したとしても,これらの者についても,遅くとも本件各映画が公開された頃までには,映画製作者である1審原告又は新東宝に対し,黙示的に本件各映画の著作権を譲渡したものと推認するのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。

▶平成281215日大阪地方裁判所[平成26()9552]▶平成291228日大阪高等裁判所[平成29()233]
本件で,被告は,原告が,本件楽曲に係る使用料を支払うことなく,実施された本件公演において本件楽曲を演奏させたことについて,使用料相当額の不当利得が成立すると主張していることから,これが認められるためには,まず,被告が本件楽曲の著作権を有していたことが必要となるところ,P2は,会見において,本件楽曲を含む被告の作品として発表されている楽曲については,その著作権を放棄したいと述べ,被告との間で本件確認書[注:被告とP2は,JASRACに対し,被告を作曲者として作曲届を提出した全ての楽曲について,それらの著作権ないしその持分権(著作権法27条及び同法28条に規定する権利を含む。)がP2から被告に譲渡済みであり,著作権が全て被告に帰属していることを相互に確認するとの確認書(「本件確認書」)を作成した]を作成していることからすれば,P2において,少なくとも,本件楽曲の財産的な著作権を被告に対して譲渡したものと解するのが相当である。
これに対し,原告は,仮に譲渡契約があるとしても,その実質はゴーストライター契約であるから,著作権法121条に反する,あるいは公序良俗に反するもので無効である旨主張する。しかし,本件確認書に係る著作権譲渡合意が,それ自体としてゴーストライター契約であるとは認められない。また,本件楽曲に関して,被告とP2との間で,著作権譲渡合意とともに,原告主張のような趣旨の合意がされたとしても,本件確認書が,真の作曲過程の発覚後に,なお著作権の譲渡だけを特に確認することを対象として作成されていることからすると,被告とP2との間で,著作権譲渡合意が上記の本件楽曲に関する合意と不可分一体のものとされていたとまでは認められず,また,性質上不可分一体のものとも認められない。そして,著作権法121条は,著作者名を詐称して複製物を頒布する行為を処罰の対象とするにすぎず,著作権を譲渡することを何ら制約するものではないから,本件確認書自体が同条に反するものではなく,また,そのことは公序良俗違反についても同様であるから,被告とP2との間における本件楽曲の著作権譲渡合意は無効とはいえない。
[控訴審同旨]
被控訴人は,控訴人は本件楽曲の著作権者ではなく,控訴人とP2との間の著作権譲渡の合意は無効であると主張する。しかし,P2が本件楽曲の財産的な著作権を控訴人に譲渡したと認められ,本件確認書に係る著作権譲渡合意が無効ではないことは,前記で引用した原判決に記載のとおりであり,被控訴人の前記主張は理由がない。

▶平成140301日京都地方裁判所[平成12()2116]
本件イラストについて具体的表現行為をしたのはAであるから,本件イラストについては原始的にはAが著作権を有していたものと認められるが,イラスト代名目を含んで一括して金員が支払われていること,返還時期についての定めがあるとうかがわれないことからすれば,本件イラストの原画の所有権は原告に譲渡されたものと認めるのが相当である。
これに加え,本件イラストは,もっぱら,原告が被告○○の「びすけっと」や他の広告チラシの印刷に用いるために制作され,それ以外の用途は実際上想定されていなかったものと推測されること,実際上も,本件イラストの複製は排他的に原告においてされていることからすれば,本件イラストの著作権そのものも原告に譲渡されたと認めるのが相当といえる。

▶平成28229東京地方裁判所[平成25()28071]
前記認定事実,とりわけ,①原告が,被告が設置している本件ウェブサイトで販売されていたイラストつきの酒類を見て,被告に対し,「私にも仕事させていただけないかなぁと思いまして」とのメールを送信し,条件を尋ねられた際には「グッズのギャランティとしては参考までに大体5~10万円でお受けしております。」と記載していること,②原告は,本件打合せにおいても,被告代表者に対し,原告が通常グッズのイラストを制作する場合には,パッケージが10万円,それ以外は最低でも5万円から仕事を受けていると説明していること,③本件打ち合わせにおいては,キャラクターを5人制作して,それぞれ異なる味の酒のラベルにすることなどが合意されたこと,④その後,原告が,自身の画集に本件果実酒のイラストを掲載してよいか尋ねたのに対して,被告代表者がラベルと同一のものはファンがとまどうから認めない旨回答していることなどからすれば,原告と被告との間には,平成24年12月11日の本件打合せにおいて,原告が本件果実酒のラベル等に使用するためのイラストを制作し,その著作権を被告に有償で譲渡する旨の契約が成立したものと推認されるというべきである。

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