Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の譲渡譲渡契約の成否/個別事例②

▶令和21028日知的財産高等裁判所[令和1()10071]
本件各画像の著作権の帰属について
ア 本件各画像の著作権の取得
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件画像著作物の写真は,控訴人が原告ウェブサイト制作前に自ら撮影したものと認められるから,控訴人が本件画像著作物を創作した者であって,その著作者であると認められる。
したがって,控訴人は,本件画像著作物について著作者として著作権を取得したものと認められる。
これに反する被控訴人らの主張は,採用することができない。
イ 本件各画像の著作権の譲渡又は許諾の有無
() 被控訴人らは,①被控訴人○○は,控訴人に対し,324万円という高額な原告制作ウェブサイトの制作対価を支払っていること,②原告制作ウェブサイトは,専ら被控訴人○○が使用するためにその委託によって制作されたものであり,控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作権を保有する必要性及び合理的理由がないこと,③被控訴人○○は,自身の企業活動に合わせて,原告制作ウェブサイトの内容を変更したり,保守委託先を変更したり,格納サーバを変更したりすることが当然に予定されているにもかかわらず,被控訴人○○が原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を有しないとすれば,その都度,控訴人の許諾を得なければ,これらを実現できず,企業活動が著しく阻害されること,④原告制作ウェブサイトを制作した控訴人が自ら原告制作ウェブサイトに「Copyright©ライズ株式スクール All Rights Reserved」と表示していることからすると,原告制作ウェブサイトに係る著作物の一部として本件画像著作物の著作権は,控訴人から被控訴人○○へ黙示に譲渡された旨主張する。
しかしながら,前記認定事実によれば,控訴人と被控訴人○○は,平成28年1月6日付け本件保守契約書をもって締結した本件保守業務委託契約に基づいて,同年4月22日付け本件注文書をもって,被控訴人○○が控訴人に対し,旧ウェブサイトを全面的にリニューアルしたウェブサイトの制作を代金324万円で発注する旨の本件制作業務委託契約を締結し,控訴人は,本件制作業務委託契約に基づき,原告制作ウェブサイトを制作したものであるところ,本件保守契約書には,「本件成果物の著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)その他の権利は,制作者に帰属するものとする。」(14条3項)との規定があること,本件注文書の「備考」欄には,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利は,制作者のBに帰属するものとする。」との記載があることに照らすと,控訴人と被控訴人○○は,控訴人が制作した原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権は控訴人に帰属することを確認しており,控訴人において上記著作権を被控訴人○○に譲渡する意思が有していたものとは到底認めることはできない。
また,控訴人が原告制作ウェブサイトの制作前に著作した本件画像著作物の著作権を被控訴人○○に譲渡すべき合理的事情はない。
さらに,原告制作ウェブサイトの内容の変更,保守委託先の変更,格納サーバーの変更の可否は,当事者間の契約の定めによるところであり,ウェブサイトの制作を依頼した委託者において当然に許容されるものではないし,また,原告制作ウェブサイトに「Copyright©ライズ株式スクール All Rights Reserved」と表示は,控訴人と被控訴人○○間の内部関係を規律する趣旨のものとはいえず,ましてや,本件画像著作物の著作権が被控訴人○○に帰属することの根拠となるものではない。
したがって,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
() また,被控訴人らは,仮に控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を被控訴人○○に譲渡していないとしても,前記()①ないし④に鑑みれば,控訴人は,被控訴人○○に対して原告制作ウェブサイトに係る著作物の利用を許諾したというべきである旨主張する。
しかしながら,前記()の認定事実に照らすと,被控訴人らの挙げる①ないし④の事情をもって,控訴人が被控訴人○○に対して本件画像著作物の利用を許諾したものと認めることはできないから,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
ウ まとめ
以上によれば,本件画像著作物の著作権は控訴人に帰属するものと認められる。

▶令和21116日東京地方裁判所[平成30()36168]▶令和3517日知的財産高等裁判所[令和2()10065]
本件プログラムの著作権の譲渡について
被告学園は,原告が,本件システムの開発当初から,被告学園に対し,同開発に係る成果物の著作権を譲渡することを承諾しており,平成25年5月23日に原告が被告学園に本件プログラムを引き渡し,被告学園が原告に対して開発費用を支払ったので,原告から被告学園に対して本件プログラムの著作権が譲渡されたと主張する。
しかし,原告は,本件システムの開発当初の平成25年1月の時点において,被告学園に対して本件システムの開発に係る成果物の著作権を譲渡する意向を示していたが,その後,原告と被告学園との間で,本件システムの開発費用や著作権の取扱い等について話合いがされ,著作権譲渡契約書案が作成されたものの,契約書が取り交わされるには至らず,交渉は決裂した。このような交渉経緯に鑑みると,同月の時点において,原告が本件プログラムの著作権を譲渡することを承諾していたと認めることはできない。
また,被告学園は,原告に対して開発費用として105万円を支払い,原告から本件システムを構成する本件プログラムに係る圧縮ファイル(本件圧縮ファイル)を受領したが,その当時,本件システムは完成しておらず,本件プログラムは作成途中のものであり,原告がその時点で本件圧縮ファイルを送付したのは,Bの便宜のためにすぎない。そうすると,上記105万円は,原告が本件プログラムの開発作業に従事した労務の対価として支払われたものと考えるのが自然であって,これが本件プログラムの著作権の対価を含むと認めることはできない。
【なお,上記105万円は,本件プログラムが譲渡される際には,その譲渡代金の一部に充当されることが予定されていたと解する余地はあるとしても,上記のとおり,譲渡の合意が成立していたとは認められず,また,上記105万円が譲渡代金の全額であったとも認められない以上,その支払によって本件プログラムの譲渡契約が成立したと認める余地はない。】
以上によれば,原告が被告学園に対して本件プログラムの著作権を譲渡したとは認められないというべきであり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告学園の上記主張は理由がない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp