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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の譲渡譲渡契約の成否/個別事例④

令和3729日大阪地方裁判所[平成31()3368]▶令和4428日知的財産高等裁判所[令和3()10076]
【⑴ 本件初期システムの著作権について
前記の各認定事実によれば、本件ソフトウェア(Ver.1.00)(本件初期システム)の試用版は、平成17年5月8日以前の久門紙器への納品時までに制作され、その後判明した不具合等の対応がされ、同年12月、その検収が終了し、本件初期システムが完成したものと認められる。】
また,その時点までの本件ソフトウェアの開発は,P3,被告P1及びP2がそれぞれ一定の役割を分担しつつ進めたものである。本件ソフトウェアは,段ボールの生産に必要な多様な業務に対応すると共に業務の迅速化,情報の一元管理等を実現するという多様な機能を有するものであるところ,既存システムである UniCAIS を基にするとはいえ,プログラムを用いた機械的変換により直ちに OS の変更が完了するとも考えられない(被告P1も,P7弁護士に対し,原告のシステムとP3のシステムとを比較した場合,OS や動作環境が違うためプログラムのソースコードに手を加えないとそのままでは動作しないと説明している。)。しかも,本件ソフトウェアの開発に際しては,新たな機能の付加も行われたものである。これらのことに加え,UniCAIS Windows 版への変換後のソースコードの行数(前記及び久門紙器による検収時期頃である平成17年12月28日時点でのプログラムの本数及びソースコードの行数)に鑑みると,質的,量的いずれの側面から見ても,少なくとも実際のプログラム改変等の作業に当たった被告P1及びP2は,それぞれ,本件ソフトウェアの【本件初期システム】の完成に創作的に寄与したものと認められる。
そもそも,本件ソフトウェア開発における役割分担に加え,P3,被告P1及びP2の原告設立前後における収入の状況や原告設立後の原告に対する関与の態様等に鑑みると,P3,被告P1及びP2は,本件ソフトウェアの製造販売を中心とする事業を共同で展開する一環として,それぞれ本件ソフトウェアの開発に関与したものと理解される。また,開発された本件著作権の帰属に係る三者間の合意の存在を裏付けるに足りる客観的な証拠はない。そうである以上,P3,被告P1及びP2は,本件ソフトウェア開発における実際の作業分担に関わりなく,上記事業の主体として後に設立予定の法人(原告)に本件著作権を帰属させる意思の下に,本件ソフトウェアの開発作業を行ったものと見るのが相当である。このような理解は,被告P1が,原告代表者として,P7弁護士との間で,本件著作権が原告に帰属することを確認する内容の契約書作成に係る相談を重ねていたことや販売代理店との契約書類にも本件著作権が原告に帰属する旨が不動文字により記載されており,この書式が被告会社設立前後を問わず使用されていたこと,本件会合1における「ユニケースを持ってきてそれを3人で改造していきましょうよっていう話で…やってたじゃないですか。」などとするP2等の発言内容【や、被控訴人が、被控訴人設立後、本件ソフトウェアを販売し、B、控訴人X及びAに対し、毎月、給与(Bに100万円から120万円、控訴人Xに80万円から100万円、Aに60万円から80万円)を支払っていたこと】とも整合する。
【以上を総合すると、本件ソフトウェア(Ver.1.00)(本件初期システム)は、B、控訴人X及びAが UniCAIS を改変して共同して制作したプログラム著作物であり、前記認定の本件ソフトウェアの開発に係る各人の役割及び関与の態様に鑑みれば、各人はいずれも本件初期システムの制作に創作的に関与したものであって、本件初期システムにおける各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものと認められるから、本件初期システムは、上記3名の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認めるのが相当である。
そして、①前記認定の本件ソフトウェアの開発経緯、②被控訴人の設立時(平成17年6月30日)の代表取締役は控訴人X及びAの2名であり、上記2名が、被控訴人の全株式を50%ずつ保有していたこと、③被控訴人は、設立中の会社であった当時から、本件初期システムの販売を開始し、その設立以後、B、控訴人X及びAの3名は被控訴人から給与の支払を受けていたこと、④証人Bの供述中には、被控訴人は、Bが発案し、控訴人X及びAが発起人となって、被控訴人を設立した、被控訴人の設立の目的は、本件ソフトウェアを開発し、販売し、被控訴人がその著作権を保有することにあった、Bは、本件ソフトウェアは被控訴人の職務著作であるという認識で開発し、控訴人Xも、その開発当時、被控訴人に著作権があると認識していたと思う旨の供述部分があることを総合すれば、本件初期システムの試用版が制作及び納品された同年5月頃、B、控訴人X及びAの間で、被控訴人の設立に伴い、本件初期システムに係る著作権を被控訴人に譲渡する旨の黙示の合意が成立したものと認めるのが相当である。
これに反する控訴人Xの供述(陳述書を含む。)は、前記に照らし、措信することができない。
そうすると、本件初期システムの著作権は、被控訴人に帰属したものと認められる。】

▶令和377日東京地方裁判所[令和2()31409]
本件写真の著作権及び著作者人格権の帰属について
原告は,本件写真の著作権を撮影料金の支払時に撮影者のGから譲り受けたと主張し,これを証するものとして,G作成の「請書」(甲4)並びに原告代表者及びGの各陳述書を提出する。
しかし,甲4の「請書」については,①原告宛ての請求書であるにもかかわらず,宛先である原告名の横に原告の社印が押印されていること,同文書左上部分の宛先の下部には「写真の使用肖像権は 株式会社 建築商売に属するものとする。」との記載があるが,請求書の宛先の下にかかる注記をすることが一般的・定型的とはいい難く,Gが顧客である原告名を「貴社」,「株式会社建築商売さま」などではなく「株式会社 建築商売」と表記していることなど,Gが作成した文書と認めるには不自然又は不合理な点が多い。
また,Gは,その陳述書において,上記甲4の「請書」の撮影料の対象は原告代表者とAの2名分であり,原告のウェブサイトへの掲載を想定するものであって,著作権の一切を原告に譲渡したと陳述するが,甲4の「請書」には「使用肖像権」の帰属に関する記載があるのみで,「著作権」の帰属についての記載は存在せず,その撮影対象についても「E様 撮影料一式」とされ,本件写真の被写体であるAに関する記載はない上,本件写真のデータやその撮影日時・人数を客観的に示す証拠,撮影料に関する支払の時期・金額を客観的に示す証拠,本件写真及び原告代表者の写真を原告のウェブサイトに掲載した事実及びその時期を客観的に示す証拠は存在しない。
以上によれば,(証拠)をもって,原告がGから本件写真の著作権一切を譲り受けたと認めることはできない。
したがって,原告に本件写真の著作権が帰属するということはできず,本件写真の撮影者ではない原告にその著作者人格権が帰属するということもできない。

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