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カネダ著作権事務所
著作権判例エッセンス
罰則▶著作権等侵害罪
▶平成7年4月4日最高裁判所第三小法廷[平成6(あ)582]
著作権法113条1項2号にいう「著作権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布する行為」が同法119条1号[(注)現119条1項]にいう著作権の侵害に当たるとした原判断は、正当である。
▶平成16年11月30日京都地方裁判所[平成15(わ)2018]
弁護人は,送信可能化権侵害罪は,中央のサーバーを介して情報が発信されることを予定した構成要件であるから,本件のようなP2Pの事案には適用されない旨主張している。
しかし,著作権法にいう「自動公衆送信装置」とは,サーバーやホストコンピュータに限られるものではなく,およそ公衆からの求めに応じて自動的にそこに入力されている映像,音響,文字等を送信するものをいうのであるから,たとえ個人が所有するパソコンであっても,そこに存在するソフトの動作等により上記のような機能を有しているのであれば,「自動公衆送信装置」に該当する。そして,Winnyは,そのネットワーク内でダウンロードが要求されれば,自動的に目的のファイルを送信する機能を有するプログラムソフトであるから,これをダウンロードして使用していた被告人のパソコンが「自動公衆送信装置」に該当することは明らかである。
弁護人の主張は,著作権法の構成要件を恣意的に解釈したものに過ぎず,失当である。
▶平成31年1月17日大阪地方裁判所[平成29(わ)4356]
被告人3名が,他の共犯者らと共謀して行った判示各犯行は,インターネットサイト(以下「本件サイト」という。)のサーバコンピュータ内に,違法にアップロードされた漫画等の書籍データのリンクを掲載するなどして,不特定多数の者に対して書籍データを自動送信可能な状態にしたものである。本件サイトには,利用者による違法なアップロードと投稿を助長するための様々な仕組みがあり,
犯行は常習的なものである。著作権を侵害された者は44名,書籍は68点に上り,被告人3名において本件サイトを利用者の多いものに成長させていたこともあって,書籍の販売価格とダウンロード回数を掛け合わせた額は約3931万円に及んでいる。その全額が著作権者が得られるはずであった利益ではないにせよ,多くの財産的な損害が発生していると認められるし,著作権には人格的な利益も含まれており,
多数の著作権者らに総体として大きな損害が発生していると認められる。なお,検察官は,本件サイトによる推定損害額を具体的に主張し,著作権協会の関係者の心情等も主張しているところ,この犯行は親告罪であり,告訴されていない被害に係る損害や著作権者以外の者の心情を量刑上考慮することはできないが,判示各犯行が,同種事案の中でも際立って
大規模で社会に大きな影響を及ぼす行為の一環としてされたものであり,その結果として,起訴に係る多くの損害を発生させていることは考慮に値する。このように,判示各犯行は同種事案の中でも相当悪質で結果も重大なものであるといえる。
[(注)主文「被告人Aを懲役3年6月に,被告人Bを懲役3年に,被告人Cを懲役2年4月に処する。」(執行猶予はつかなかった)]
▶令和2年3月18日福岡地方裁判所[令和1(わ)1008]
本件各犯行は,被告人と共犯者らが,他のウェブサイト上に違法にアップロードされていた多数の漫画や雑誌の画像データをインターネットを通じて収集し,Aが開設した「K」と称するウェブサイト上に,いわゆるアフィリエイトによる収益を目的として,その画像データを対価なく閲覧する目的でKにアクセスする者が目当ての著作物を検索しやすいように体系化して,権利者に無断でアップロードすることを反復継続する中で敢行された。著作物やその出版等により権利者が収益を上げる構造が破壊されることで,著作者の創作意欲や,不特定多数人が著作物に触れる機会を生み出す意義を有する出版等の企業活動が減退し,ひいては優れた著作物が広く社会に共有されることによる文化の発展が阻害されるという社会的悪影響を招くおそれが大きい犯行であり,その悪質性は軽視できない。
▶令和元年12月5日福岡地方裁判所[令和1(わ)854)]
被告人らは,漫画雑誌の画像データを著作権者及び出版権者に無断でインターネット上のウェブサイトで公開し,不特定多数の者が無料で閲覧できるようにして,著作権者及び出版権者に損害を与えている。主要な漫画雑誌の画像データを継続的にアップロードする中での犯行であり,著作物の収益構造を破壊するという意味において,著作権等の保護制度を根本から揺るがせかねない悪質な犯行というべきであって,厳しい非難に値する。
▶令和4年3月9日東京地方裁判所[令和3特(わ)2235]
本 件 は , 美 術 商
と し て 美 術 品 の 売 買 等 を 行 っ て い た 被 告 人 が , 版 画 の 修復作業等の職人であった共犯者とともに M の 作 品 5 点
に つ い て 合 計 7 枚 を著 作 権 者 に 無 断 で 複 製 し,ま た 単 独 で ,無 断 で 作 品 2 点 の 複 製物を代金合計73万円で販売して頒布したという著作
権 法 違 反 の 事 件 で あ る 。
被告人らは,平成20年頃から,著作権者に無断で有名画家の作品の版画を複製し,美術商である被告人が販売していたものであり,本件各犯行は
長 期 間 に わ た っ て 職 業 的・常 習 的 に 行 わ れ た 犯 行 の 一 環 で あ る 。そ し て ,本件各偽作版画は,極めて精巧に作成されており,版画市場に流通するに至
っ て い る 。 著 作 権 者 の 利 益 を 大 き く 害 し て お り , 強 い 非 難 を 免 れ な い 。
被 告 人 と 共 犯 者
の 関 係 等 に つ い て み る と ,被 告 人 が 複 製 す る 作 品 を 定 め ,オークション等で入手した真作を共犯者に渡して複製を依頼していたものであり,被告人は主導的立場にあったものである。また,共犯者から受け取った偽作版画については,被告人が倉庫で管理する中で,適宜販売していたもので,被告人は偽作版画の複製から販売による利益獲得まで全ての過
程 を 掌 握 し て い た 。
以 上 か ら す れ ば
, 被 告 人 の 刑 事 責 任 は 重 い が , 一 方 で , 被 告 人 は , 事 実関係を認めた上で,反省し,著作権者に対する被害回復にも努め,
N 県 立美 術 館 M 館 に 対 し て は 1 4 0 0 万 円 の 寄 付 を し て お り ,一 部 の 著 作 権 者 は ,被 告 人 の 厳
罰 ま で は 望 ん で い な い 。そ し て ,被 告 人 に 前 科 前 歴 が な い こ と ,被告人の妻が監督を誓約していること等も考慮すれば,本件で直ちに実刑判 決 と す る の は
躊 躇 さ れ る こ と か ら ,主 文 の と お り の 懲 役 刑 を 科 し た 上 で ,その執行は猶予するが,この種事犯が経済的にも不合理であることを示すた
め に , 主 文 の と お り の 罰 金 刑 を 併 科 す る の が 相 当 と 判 断 し た 。
( 求 刑 懲 役 3 年
及 び 罰 金 2 0 0 万 円 )
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