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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害とみなす行為>法113条11項▶法11311項の意義と解釈

▶平成141127日東京高等裁判所[平成14()2205]
著作権法1135[(注)現11項。以下同じ]の規定が,著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を著作者人格権の侵害とみなすと定めているのは,著作者の民法上の名誉権の保護とは別に,その著作物の利用行為という側面から,著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨に出たものであることに照らせば,同項所定の著作者人格権侵害の成否は,他人の著作物の利用態様に着目して,当該著作物利用行為が,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。したがって,他人の言語の著作物の一部を引用して利用した場合において,殊更に前後の文脈を無視して断片的な引用のつぎはぎを行うことにより,引用された著作物の趣旨をゆがめ,その内容を誤解させるような態様でこれを利用したときは,同一性保持権の侵害の成否の点はさておき,これに接した一般読者の普通の注意と読み方を基準として,そのような利用態様のゆえに,引用された著作物の著作者の名誉又は声望が害されるおそれがあると認められる限り,同項所定の著作者人格権の侵害となることはあり得るが,その引用自体,全体として正確性を欠くものでなく,前後の文脈等に照らして,当該著作物の趣旨を損なうとはいえないときは,他人の著作物の利用態様により著作者の名誉又は声望を害するおそれがあるとはいえないのであるから,当該引用された著作物の内容を批判,非難する内容を含むものであったとしても,同項所定の著作者人格権の侵害には当たらないと解すべきである。
(略)
その場合において,当該引用に係る著作物の内容を批判,非難する表現が,別途名誉毀損の不法行為を構成するかどうかは別論である。なぜならば,著作権法1135項は,上記のとおり,著作物の利用行為に着目した規定であって,名誉毀損の不法行為の成否とは場面を異にするからである。

▶平成140716日東京高等裁判所[平成14()1254]
被控訴人は,甲1部分において平成4年当時の最新情報として記載したことが,控訴人らによって,平成114月に出版された甲2書籍の甲2部分においても,そのまま掲載されており,このことは,被控訴人の社会的評価を低下させるものであり,甲1部分の一部の著作者である被控訴人の名誉又は声望を害する方法によりその著作物が利用されたものである,と主張し,原判決は,これを著作権法1135[(注)現11項。以下同じ]の「著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為」に当たると認定した。しかし,当裁判所は,本件については,次に述べる理由により,控訴人らの上記行為は,同項の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」には当たらない,と判断する。
(略)
著作権法1135項に規定されている「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは,著作者の創作意図を外れた利用をされることによって,その著作物の価値を大きく損ねるような形で利用されることをいう,と解するのが相当である(本件に即していえば,教科書的書籍である甲1書籍を,全く別な目的で利用し,その著作物の価値を大きく損なうような場合が考えられる)。これに対し,上記のような著作物の利用行為は,甲2書籍を甲1書籍と同様に教科書的な書籍として利用しようとするものであり,しかも,甲1書籍の出版後6年近く経過したため,大学関係者による改訂作業により古くなった内容を改めたものが甲2書籍であるから,その改訂された甲2書籍の表現の一部に原著作者である被控訴人の意に添わない部分があったとしても,これは,上記規定が想定している場合には該当しないというべきである。これは,むしろ,被控訴人が,その著作部分について,無断で改訂版を出版され,その氏名表示権及び同一性保持権を害されたことによる損害の中の一事情として考慮されれば足りる範囲の事柄であって,これをもって,著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為とすることまではできないというべきである。

▶平成27428日知的財産高等裁判所[平成27()10005]
著作権法1136[(注)現11]所定の行為に該当するか否かは,著作物の利用態様に着目して,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるか否かによって,決せられるべきである(。)

平成28819日東京地方裁判所[平成28()3218]平成29124日知的財産高等裁判所 [平成28()10091]
著作権法113条6項[(注)現11]の「名誉又は声望を害する方法」とは,単なる主観的な名誉感情の低下ではなく,客観的な社会的,外部的評価の低下をもたらすような行為をいい,対象となる著作物に対する意見ないし論評などは,それが誹謗中傷にわたるものでない限り,「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないというべきところ,原告が指摘する被告記事の表現部分は,被告記事の著者の原告記事に対する意見ないし論評又は原告記事から受けた印象を記載したものにすぎず,原告又は原告記事を誹謗中傷するものとは認められないから,たとえ,被告記事の表現によって,原告の意図と著しく異なる意図を持つものとして受け取られる可能性があるとしても,そのことをもって,原告の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」と認めることは相当でないというべきである。 したがって,被告記事によって,原告記事に係る原告の名誉・声望権が侵害されたということはできない。

▶平成250910日 知的財産高等裁判所[平成25()10039]
著作権法1136[(注)現11]は,著作者の名誉声望を害する態様での著作物利用行為に対して,著作者人格権侵害行為とみなすものであるところ,被告記述部分は,控訴人の著作物と表現上の類似性を欠き,元の著作物の創作的表現は感得できないのであるから,控訴人の著作物を利用したとはいえない。したがって,被告記述部分について著作者人格権の侵害は成り立たず,同条項適用の前提を欠いている。また,著作者の名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいい,人が自己の人格的価値について有する主観的な評価は含まれないと解されるところ,被告記述部分に,控訴人の社会的評価を低下させるものが含まれているということはできない。

平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]
著作権法113条6項[(注)現11]は,著作物を創作した著作者の創作意図を外れた利用がされることによってその創作意図に疑いを抱かせたり,著作物に表現されている芸術的価値を損なうような形で著作物が利用されることにより,著作者の社会的名誉声望が害されるのを防ぐ趣旨であると認められるから,同項の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは,社会的に見て,著作者の創作意図や著作物の芸術的価値を害するような著作物の利用行為をいうと解すべきである(。)

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