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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害とみなす行為>法113条11項▶個別事例[否認例]

▶平成240927日 東京地方裁判所[平成22()36664]
原告は,被告○○が本件各イラストの複製物である被告イラストを本件ポリ袋に使用する行為は,本件各イラストを劣化させた上,イラスト単体ではなく模様の一部として使用し,ポリ袋という,安っぽく,およそ芸術性を感じさせることのない素材に使用するものであって,本件各イラストの芸術的価値を著しく損ねるものであり,原告の名誉又は声望を害する方法による本件各イラストの利用に当たるといえるから,著作者人格権のみなし侵害行為(著作権法1136[(注)現11])に該当する旨主張する。
しかしながら,本件各イラストは,原告が,被告○○が販売する餃子・焼売の商品を詰めて包装する紙の箱のパッケージ(カートン)に使用する目的で制作した商業的デザインであって,原告は,本件各イラストの複製物である被告イラストを被告○○の餃子・焼売の商品のパッケージ(カートン)に印刷して使用することを承諾していたものであるところ,本件ポリ袋は,被告○○の商品を入れる包装袋として使用されており,カートンとは包装の形態は異なるが,被告○○の商品を包装するという点ではカートンと共通していること,本件ポリ袋に付された被告イラストの構成態様等に照らすならば,被告○○が本件各イラストの複製物である被告イラストを本件ポリ袋に使用することによって,絵本作家である原告が社会から受ける客観的な評価の低下を来たし,その社会的名誉又は声望が毀損されたものとまで認めることはできない。

平成28122日 東京地方裁判所[平成27()9469]
1136[(注)現11]の「著作者の名誉又は声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであって,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解すべきである(最高裁判所昭和61年5月30日第二小法廷判決参照)。
本件についてみると,被告の行為は,原告著作物を原告らの許可を得ることなく複製し,DVD-Rに記録して複製物1枚を作成し,本件オークションサイトにおいて,原告著作物を複製したもの(データ)を第三者の発行したDVDのおまけとして頒布する旨記述し,原告著作物の複製物を落札者に送付したというものである。原告Aが,原告著作物を「オマケとして」「お付けします」などと記述されたことによって名誉感情を害されたことは理解できるとしても,上記記述を付して原告著作物の複製の頒布が一度申し出されたことによって,それを見た通常人が,原告著作物の内容が,上記第三者の発行したDVDに付加価値を与えるものであると考えることはあっても,原告著作物には価値がないと認識することが通常であるとまではいえないから,被告が,上記記述をしたことや,無断で原告著作物を複製,頒布をした行為が,原告Aの社会的評価を低下させる行為であるということはできない。そうすると,被告が,原告Aの名誉又は声望を害する方法により原告著作物を利用したと認めることはできない。

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