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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作物の利用の許諾▶個別事例[独占的利用許諾]

▶平成28928日東京地方裁判所[平成27()482]
本件著作物の著作権者であるEは,平成24年8月23日,βとの間で,「1.制作物の一部または全体を無断で変更しません。変更する場合は権利者と協議の上,変更いたします。但し販促に必要な範囲において見出しの付加,素材編集は行えるものとします。」「2.権利者に許諾を得た範囲内での販売利用を致します。使用条件以外の利用・複製は,使用料金を含め改めて制作者に使用許諾を得ます。」「3.許諾に基づく商品等の販売時期・価格・広告宣伝方法,その他販売方法については弊社が決定出来るものとします。但し,これらの決定にあたり,権利者のイメージを損なうことのないよう配慮します。」「6.第三者が著作物の権利を侵害した場合には,これに対処します。」「8.権利者は契約期間中に日本国内において,本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しないものとします。」との規定(以下,上記規定を「本件各規定」という。)に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。300yen (JPY) per smart phone case product.」との規定のある「著作権利用規約及び契約」と題する書面を取り交わし,γは,同年9月27日,自身が運営するウェブサイトにおいて,本件著作物5の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
上記書面は,Eにおいて,自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースをβが製造し,日本国内において販売し,また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上,これと同一の利用態様については,日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき,同合意に基づき,βは,本件著作物について現に利用を開始したと認められるから,βは,平成24年9月27日,本件著作物について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(略)
E,G及びYから同人らの著作物について本件各規定等のある書面を取り交わしたのはβであるが,βは,平成24年10月1日に原告会社を設立し,原告会社を設立した後は,著作物を利用したスマートフォン用ケースを販売した場合のアーティストへの支払は原告会社から行っていること,これらについてE,G又はYから異議が述べられたことはないことが認められ,これらの事実によれば,平成24年10月1日以前にβが取得した独占的利用権は,同日頃,βから原告会社に承継され,同承継について,E,G及びYは,いずれも黙示にこれを承諾したものと推認され,同推認を覆すに足りる事情はうかがわれない。 被告は,原告会社が著作権者と取り交わした書面が「本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しない」と記載するにとどまり,「exclusive license」(排他的利用許諾)などと記載されていないなどとして,独占的利用権の成立を争っているが,著作権者は,利用態様を限定して独占的利用許諾を行うこともできるところ,「契約期間中に日本国内において,本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しない」という条項には,当該許諾契約により限定された利用態様と同一の利用態様により,日本国内において他の者には重ねて許諾しない趣旨を読み込むことができるから,同条項を有する書面により成立した契約関係を,独占的許諾契約と認定することに差支えはないというべきである。

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