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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

共同著作▶個別事例②(書籍執筆/論文執筆/翻訳)

[書籍執筆]
▶平成40827日大阪地方裁判所[平成2()2177]

本件著作物のうち、本件書籍二章冒頭から895行目まで(以下「B部分」という。)の文章については、Bが具体的に口述して被告Dに記録させた部分はBが創作したと認めるべきであり、Bが抽象的に書いて欲しい事柄を指示しただけで文章表現は被告Dが自分で考えた部分や、Bの明示の指示はなかったがBの意思を推測して被告Dが自由に書いた部分は被告Dが創作したというべきであり、被告Dが書いた文章をBが点検して補充訂正した部分は両名が共同して創作したというべきであるが、B部分のうちのどの文章でBと被告Dのどちらがどれだけ創意を働かせたかは具体的には明らかでなく、その関与の態様毎に明確に区分することはできないから、結局、B部分全体がBと被告Dが共同して創作したものであって、各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものであると認めるのが相当であ(る。)

▶平成141210日大阪地方裁判所[平成13()5816]
被告Bが本件書籍の日本語原稿を執筆したものであるが、本件書籍には、原告でなければ用いないような中国語的な表現や、執筆者が原告であることを前提とするような表現を用いた部分、原告が手渡したメモ書きがほぼそのままの表現で記載されている部分が存しており、しかも、本件書籍執筆当時の原告の日本語能力は、助詞、外来語の使用等についてやや問題があったものの、日本語の会話、読書きはほぼ問題なくできる域に達しており、本件書籍に示された日本語表現をすることは可能であったと推認される。
また、第四章に記載されている気功法の大部分は原告が提示したものであり、その中には原告が創作した独自の要素を含む気功法も含まれており、原告は被告Bに対しこれらの気功法の動作、注意点を具体的に伝えたものと推認できる。
そして、本件書籍第四章における気功法の記載は、前記のように、動作、注意点をほぼそのまま記載したものであるから、こうした記載内容からすると、原告が提示した気功法について、日本語原稿を執筆した被告Bによって、日本語としてより適切な表現やわかりやすい表現にするなどの創作的な表現要素が含まれているものの、原告が被告Bに伝えた具体的な気功法の動作、注意点が、文章表現においても表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ反映されているものと推認できる。
上記のような事情からすると、本件書籍における創作的な表現は、原告が掲載を提案した気功法に関する部分も含め、原告及び被告Bが共同で行ったものであり、本件書籍は原告及び被告Bの寄与を分離して個別的に利用することができないものであるから、共同著作物(著作権法2112号)に当たるというべきである。

▶平成200215日東京地方裁判所[平成18()15359]
原告は,本件書籍の文章表現について,単に被告Bの口述表現を書き起こすだけといった,被告Bの補助者としての地位にとどまるものではなく,自らの創意を発揮して創作を行ったものと認められる。また,被告Bは,自らの体験,思想及び心情等を詳細に原告に対して口述し,被告Bの口述を基に原告が執筆した各原稿について,これを確認し,加筆や削除を含め表現の変更を指摘することを繰り返したのであるから,被告Bも,本件書籍の文章表現の創作に従事したものと認められる。
そうすると,本件書籍の文章表現は,原告及び被告Bが共同で行ったものであり,原告と被告Bとの寄与を分離して個別的に利用することができないものと認めるのが相当であるから,本件書籍は,原告と被告Bとの共同著作物(著作権法2112号)に当たるというべきである。

[翻訳]
▶昭和550626日大阪高等裁判所[昭和52()1837]
本件「英訳平家物語」は、著作権法上の翻訳著作物に該当するというべきところ、翻訳の定義はさて置き、右「英訳平家物語」作成の過程において控訴人[注:外国人]が果した役割およびその成果に着目するならば、右「英訳平家物語」の創作には、控訴人独自の、被控訴人【注:日本人】と対等の立場よりする、創意工夫や精神的操作が存在する、というべく、しからば、この点において、同法上、控訴人は、右「英訳平家物語」につき、共同著作者としての地位を有する、と認めるのが相当である。
(略)
控訴人の本件英訳に関する創意工夫は、被控訴人の本件英訳における創造的精神的活動に作用し、それが、控訴人の関与なしに行われたその後の本件英訳にも引継がれ、あるいはこれに強い影響をおよぼした、と推認することができ、この点からすると、本件においては、控訴人が本件英訳に関与した部分を単に機械的形式的に分離し、その計量から、控訴人の右英訳に対する寄与度を評価することはできない、というのが相当である。
しからば、控訴人の本件英訳の関与量が形式的には全体の約50パーセント相当であつても、同人の本件英訳における創意とその精神的労力は、右関与部分を超え、残余の約50パーセントの部分にもおよんでいる、と評価し、控訴人の本件英訳の関与量は、著作権法上、控訴人に本件「英訳平家物語」の共同著作者としての地位を認めるにつき、何等妨げとならない、というべきである。

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