Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

共同著作▶個別事例③(プログラム作成/写真撮影/ポスター制作/建築設計

▶平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]
デバッグや検収の作業をT工学の従業員とAが協力して行ったとしても,デバッグはプログラムの修正の作業にすぎないから,同修正により新たに創作性のある表現がされたといった特段の事情のない限り,そのプログラムがT工学の従業員とAの共同著作となるものではない。

▶平成30927日東京地方裁判所[ 平成29()41277]
本件写真[注:民家風の建物の畳敷きの室内において,訴外Cが鞭を持って座っている正面に,原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたもの]は,平成25年6月21日,被写体となっている原告と訴外Cが共同して創作したことが認められる。

▶平成28719日東京地方裁判所[平成27()28598]
本件ポスターの制作過程は,被告の総合企画部次長であったBにおいて,平成23年に使用するチラシ(原告Aの指示を受けつつ被告が作成したもの)を前提に,印刷会社の担当者と打合せを行ってポスターのレイアウトを完成させ,そこに写真やサブタイトルをはめ込んで,ポスター原案を完成させ,その後,被告は,ポスター原案を原告会社に送付して,同社がこれに若干の修正を加え,最終的に本件ポスターを完成させた,というものである。このような経緯に鑑みれば,本件ポスターの作成に当たって,被告側従業員の創作的寄与があったと認められる。
一方で,本件ポスターの作成に当たっては,原告Aが,同ポスター内の写真の配列や大きさ,奏者の体をどの範囲で載せるか(各写真のトリミングの範囲)に関して細かい指示を出していること等からすれば,本件ポスターの表現に関する原告Aの創作的寄与も認められる。
以上によれば,本件ポスターは,二人以上の者(被告側従業員と原告A)が共同して創作した著作物であり,著作権法2条1項12号所定の共同著作物に当たると認められる。

▶平成29427日東京地方裁判所[平成27()23694]
原告代表者は,乙から本件建物の外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーン部分を立体形状の組亀甲とすることを含めた設計案を提示している。そして,この時点において,被告工務店は,上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった。
しかしながら,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の上記提案は,被告工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外装スクリーン部分のみ(デザインのみ)を変更したものであり,上記提案には,伝統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたものであるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示されていない。一方で,組亀甲柄は,伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状として用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されている。
そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,被告工務店設計資料を前提として,その外装スクリーン部分に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に,表現であるとしても,その表現はありふれた表現の域を出るものとはいえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言すると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。
以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者としての創作的関与があるとは認められない。
[控訴審も同旨]
▶平成291013日知的財産高等裁判所[平成29()10061]
結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデアにすぎない(建物の外観デザインに組亀甲柄を採用するとしても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)というべきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与したとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たるとも認められない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp