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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

同一性保持権▶個別事例①(ツイートに伴う改変)

▶平成30425日知的財産高等裁判所[平成28()10101]
本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり画像が異なっているものであり,流通情報の画像データ自体に改変が加えられているものではない。
しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変されたもので,同一性保持権が侵害されているということができる。
この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は,インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により位置や大きさなどが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザーを改変の主体と評価することはできない。さらに,被控訴人らは,著作権法20条2項4号の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得ない」改変に当たると認めることはできない。

▶令和3531日知的財産高等裁判所[令和2()10010]
本件円形表示による同一性保持権侵害の有無
(略)
イ 上記アによれば,本件アカウント1又は6利用者が,本件写真1又は2’が当該アカウントのプロフィール画像として設定された状態でツイートを投稿したことに基づき,CSSデータが紐づけされた本件写真1又は2’の画像データに対するインラインリンク情報を含む当該ツイートに係るHTMLデータがサーバ1に新たに作成されるなどし,また,本件アカウント1又は6のタイムライン等を閲覧しようとするユーザのクライアントコンピュータ上においては,サーバ1から送信されたHTMLデータとサーバ2及び3から送信された本件写真1又は2’に係る画像データ,CSSデータ等によってレンダリングデータが生成され,このレンダリングデータがクライアントコンピュータに一時的に記録され,クライアントコンピュータのブラウザ上で本件円形表示がされた本件写真1又は2’が表示されるものと認められる。
この表示に際し,ツイッターのサーバ2上に記録保存された本件写真1又は2’の画像データそのものに改変は加えられず,またクライアントコンピュータ上において上記レンダリングデータが恒常的に保存されることはない。他方,クライアントコンピュータの画面上においては,本件アカウント1又は6のタイムラインあるいはツイート1又は6若しくは6’に係るウェブページを閲覧する際に,本件写真1又は2は,あたかも本件写真1又は2の4隅を切除して円形とした改変が加えられたように表示される。それが,本件アカウント1又は6のタイムラインあるいはツイート1又は6若しくは6’に係るウェブページを閲覧する際に表示されるものであり,本件アカウント1又は6のアカウントのタイムラインにおけるツイート1又は6若しくは6’の左側の本件円形表示された本件写真1又は2,及びツイート1又は6若しくは6’に係るウェブページにおける本件円形表示された本件写真1又は2は,いずれもツイート1又は6若しくは6’をしたことによって新たに表示されることになったものである。
本件写真1又は2は上記のとおり正方形又は長方形の写真であったところ,ユーザが本件アカウント1又は6のタイムラインあるいはツイート1又は6若しくは6’に係るウェブページを閲覧する際には,それらの一部のみが,クライアントコンピュータにおいて,円形の写真として表示されているといえるのであり,本件円形表示は本件写真1及び2を著作者の意に反して改変するものと評価することができる。
そして,本件写真1は,本件円形表示において,画像の全体の形状等の外面的な表現形式に改変が加えられたものの,被写体の形態,性状,色彩の主要部分が原著作物である本件写真1と同様に表示されているから,本件円形表示により本件写真1の表現形式上の本質的な特徴を感得することができ,したがって,本件円形表示によって本件写真1の同一性保持権が侵害されたことは明らかであるものと認められる。なお,本件アカウント1に平成29年2月16日にプロフィール画像として設定・登録されたのは(プロフィール画像設定行為1),本件写真2’であり,本件円形表示されたのは直接には本件写真2’であるが,本件写真2’(正方形)は本件写真2(長方形)を複写して左右をトリミングしたものであり,本件アカウント1における本件円形表示により,本件写真2が改変されて表示されたものと認められる。そして,本件写真2は,本件円形表示において,画像の全体の形状等の外面的な表現形式に改変が加えられたものの,被写体の形態,性状,色彩の主要部分が原著作物である本件写真2と同様に表示されているから,本件円形表示により本件写真2の表現形式上の本質的な特徴を感得することができ,したがって,本件円形表示によって本件写真2の同一性保持権が侵害されたことは明らかであるものと認められる。
したがって,本件円形表示により本件写真1及び2に係る被控訴人の同一性保持権が侵害されたことは明らかである。
ウ これに対し,控訴人は,クライアントコンピュータ上で生成されたレンダリングデータは,端末上に継続的に保存されることはない上,本件円形表示は,本件写真1又は2にHTMLデータやCSSデータ等によって指定された枠(額縁)をはめ込んで表示した結果として本件写真1又は2の一部が表示されないことになったのであり,画像データそれ自体に改変が加えられたものではないこと,本件円形表示がツイッターのシステムによって自動的・機械的にされることはツイッターのユーザであればだれもが知っている公知の事実であり,本件アカウント1若しくは6のタイムラインのウェブページ又はツイート1若しくは6のウェブページに表示される本件写真1又は2’の部分を右クリックして「新たなタブで開く」を選択すれば,サーバ2上に保存された本件写真1又は2’を見ることができるから,ユーザは,トリミング後の構図が本件写真1又は2の本来の構図であると誤解することはないこと,本件円形表示は,絵画を展示する際に額縁に入れることと同じであること,本件円形表示が行われたことによりトリミングされたのは本件写真1及び2の僅かな部分であることから,実質的には,本件写真1又は2に係る被控訴人の精神的・人格的利益は害されておらず,ツイート行為1並びに6及び6’は,本件写真1及び2を「変更,切除その他の改変」(著作権法20条1項)するものとは評価できないと主張する。
しかしながら,本件円形表示がされた際,画像データそれ自体の改変はされていないものの,ユーザが視覚的に認識することができる,クライアントコンピュータに表示される画像の形状等が変更されているのであり,このような表示の変更がされることは著作権法20条1項所定の「改変」と評価することができる。また,本件円形表示の元の画像を見ることができることをツイッターのユーザが皆知っていることを認めるに足りる証拠はない上,本件アカウント1若しくは6のタイムラインのウェブページ又はツイート1若しくは6,6’のウェブページに表示される本件写真1又は2’の部分を右クリックしてサーバ2上に保存された本件写真1又は2’を見ることができるとしても,クリックしてサーバ2上の画像を見るのが通常とはいえないから,サーバ2上の画像を見ることができるが故に改変がないとはいえない。そして,見る者が,表示されている画像を本来の構図であると誤解しないとしても,同一性保持権の侵害は成立する。さらに,本件円形表示は,絵画を展示するために絵画をそれに合う大きさの額縁に入れる場合と同視することはできないし,本件円形表示により,本件写真1については,スズランの花,茎の一部を削り,本件写真2については,ペンギンのくちばし,頭部及び体の一部を削っており,削られたところが些細な部分にとどまるとは必ずしもいえず,著作物についてツイッター上で本件円形表示のような表示がされることを写真の著作物の著作者一般が許容しているとする根拠はない。したがって,「変更,切除その他の改変」(著作権法20条1項)に当たらないという控訴人の主張は,採用することができない。
また,本件の場合のように,当該アカウントを示すアイコンとして一定の画面に表示される画像は,システムによって一律に円形表示されており,これに接する者はそれが上記アイコンとするために設定された画像の一部分であることを前提として接していて,一つの新しい独立した表現として表示されていると評価できないなどして,「改変」がされていないとする立論も考え得るところである。しかし,上記画像が一種の表現であることは否定できないし,本件のプロフィール画像は,その表示の態様からしても,クライアントコンピュータの画面において,円形の写真として,それ自体で一つの表現として表示されているととらえることができるものであり,そのようにとらえるとすると,著作者は,本件のプロフィール画像において,自己の著作物について,改変により異なる表現がされないことについての利益を有するといえるから,本件のプロフィール画像において原著作物と異なる表示がされたことをもって「改変」がされたと評価するのが相当であると解される。
さらに,控訴人は,本件円形表示が同一性保持権侵害となるためには,原著作物を利用することを要するところ,ツイート行為1並びに6及び6’は,テキストデータ等のツイートの投稿内容をツイッターのサーバに送信し,インラインリンクを設定する行為にすぎず,これらは著作権の支分権の定義に該当する行為ではない旨,クライアントコンピュータ上におけるレンダリングデータの生成とそれに伴う本件円形表示は,本件アカウント1又は6の利用者の意図とは関係なくツイッターのシステムによって自動的・機械的に行われる旨,そのため,仮に「変更,切除その他の改変」が認められるとしても,その主体は本件アカウント1又は6の利用者ではなくユーザである旨主張する。しかしながら,インラインリンクを設定する行為それのみを,それによってもたらされる効果や事実状態と切り離して取り上げるならば,その行為自体は本件写真1又は2の複製や翻案に当たる著作権侵害行為にはならないという余地が仮にあるとしても,本件アカウント1又は6の利用者が投稿を行うことによって,クライアントコンピュータのブラウザ上でウェブページが表示される際に,本件円形表示がされたのであるから,著作物である本件写真1又は2を利用して本件写真1又は2とは異なる表示をさせたものとして,同一性保持権を侵害したものというべきである。
エ 控訴人は,氏名表示権について述べるように,本件円形表示は,小さく解像度が低いことなどから,本件写真1又は2の著作物としての本質的特徴を感得できないものであり,著作物を利用したものとはいえないから,同一性保持権を侵害するものではないと主張する。
しかし,氏名表示権について後に述べるように,本件円形表示によって,本件写真1又は2は,著作物としての本質的特徴を感得できるような態様で表示されていると認められ,本件円形表示は,著作物を利用したものということができ,同一性保持権を侵害するものであると認められる。
オ 控訴人は,本件のようなトリミング表示は,リンク元のウェブページに設けられたフレームないし枠にリンク先のコンテンツを埋め込むというフレームリンクないし埋め込み型リンクを採用した場合に,リンク先のコンテンツを無理なく自然に表示するために必然的かつ不可避的に生じるものであることなどの諸事情や,本件写真1及び2が商業用途写真であることに鑑みれば,本件円形表示は「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当するとも主張する。
リンク先のコンテンツを無理なく自然に表示するためリンク先の画像について一定の変形が加えられることが,技術的な必要のためにされるやむを得ない改変であるとして同一性保持権の侵害とならない場合があるとしても,本件においては,四角形の画像を,もとの画像とは全く異なる形状の丸い画像としているのであり,リンク先のコンテンツを無理なく自然に表示するといった技術的な観点からそのような変形をする必要性があるとは認められない。本件について,上記のような技術的な必要のためにされるやむを得ない改変と認めることは相当でない。また,本件写真1及び2が商業用途写真であることから,許諾を得ずに本件円形表示のように変形することが許容されるとする根拠はない。
したがって,本件円形表示は「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)には該当せず,控訴人の主張はいずれも理由がない。

▶令和41019日知的財産高等裁判所[令和4()10019]
著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)について
ア 前記(2)のとおり、本件ツイート1-1に添付された画像のうち、本件投稿画像1-1-2及び1-1-3は、本件被控訴人イラスト1と乙イラストを重ね合わせたものであり、また、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件ツイート1-1における本件投稿画像1-1-2~1-1-4は、被控訴人作成のイラストの一部のみが表示されているから、それぞれ、被控訴人のイラストの改変又は切除に当たると解する余地がある。
イ しかしながら、については、著作物がイラストであって重ね合わせて用いることで、引用の目的である批評のために便宜でありかつ客観性が担保できることに加え、その利用の目的及び態様に照らすと、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。
ウ 次に、についてみると、証拠によると、ツイッターのタイムライン上の表示は、ツイッターの仕様又はツイートを表示するクライアントアプリの仕様により決定されるものであって、投稿者が自由に設定できるものではなく、投稿者自身も投稿時点では、どのような表示がされるか認識し得ないこと、投稿後も、ツイッターの仕様又はツイートを表示するクライアントアプリの仕様が変更されると、タイムライン上の表示が変更されること、ツイートに添付された画像データ自体は当該ツイートを閲覧したユーザーの端末にダウンロードされており、タイムライン上の画像をクリックすると、画像の全体が表示されることが認められることに照らすと、投稿者が改変主体に当たるかという点を措くとしても、タイムライン上の表示が画像の一部のみとなることは、ツイッターを利用するに当たり「やむを得ないと認められる改変」に当たるというべきである。
(略)
前記のとおり、本件投稿画像1-2-3及び1-2-4は、本件被控訴人イラスト2と乙写真を重ね合わせて表示したものであり、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件投稿画像1-2-1、1-2-3及び1-2-4においては、本件被控訴人イラスト2の一部のみが表示されているから、本件被控訴人イラスト2の改変又は切除に当たると解する余地があるものの、いずれも前記と同様に、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。
(略)
前記のとおり、本件投稿画像2-2-1は、本件被控訴人イラスト3に口の部分を囲う赤色枠を付記したものであり、また、②ツイッターのタイムライン上に表示された本件投稿画像2-2-2はその一部のみが表示されているから、それぞれ、本件被控訴人イラスト3又は5についての改変又は切除に当たると解する余地があるものの、①については、特に比較する部分を示すために必要な範囲での改変といえるし、②については前記と同じ理由により、いずれも、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たるといえる。

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