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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

同一性保持権▶個別事例③(画像・写真のトリミング等)

▶平成170324日東京高等裁判所[平成16()3565]
本件著作物は本件ウェブサイト上に掲載するために撮影された肖像写真であって,被告による放送に先んじて既に本件ウェブサイト上に掲載され,公開されていたものであるところ,番組において本件著作物における顔の部分は改変されていないにしても,本件著作物が,日本の国旗とコロラド州旗を背景に,テンガロンハット(いわゆるカウボーイハット)をかぶり,西部独特のジャケットを着たA元総領事の上半身の写真であるのに対し,放映された写真の中には,A元総領事の肩から上の部分だけをトリミングしてその周りに黒っぽい色の楕円形の背景を配したものがあること,(中略)などの諸事情を総合すれば,被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信における本件著作物の氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額(慰謝料)としては,60万円と認定するのが相当である。

▶平成190412日東京地方裁判所[平成18()15024]
被告は,何人かが本件写真を白黒にし,上下左右の一部を切除して作成された被告写真をそのまま複製したものである。しかし,著作物を一部改変して作成された同一性保持権を侵害する複製物をそのまま複製し,本件のように,自らのホームページに掲載する行為も,客観的には,著作物の改変行為であり,著作権法201項の同一性保持権侵害行為に当たるというべきである。

平成230209日東京地方裁判所[平成21()25767]
被告は,本件写真から被告各写真を作成するに際し,①被告写真1及び同3については,色調をカラーからモノクロに変更したこと,②被告写真1については,更に縦横の比率も変更されていること,③被告写真5については,後に被写体であるB議員の両目部分に目隠し様の白いテープを貼り付けたことをいずれも認めており,これらは著作者である原告の意に反する改変であると認められる。

平成240425日知的財産高等裁判所[平成23()10089]
本件各画像における色彩は,本件各画像の創作性を基礎づける重要な表現要素の一つであり,カラー画像である本件各画像を白黒画像に改変することは,著作者の許諾が認められない以上,著作者の意に反する改変(著作権法201項)に当たるものというべきである。
(略)
本件画像1における色彩及び色調の明暗は,その創作性を基礎づける重要な表現要素の一つであるから,著作者の許諾なくカラー画像である本件画像1を白黒画像にするとともに,明暗を反転させる改変を行うことは,著作者の意に反する改変(著作権法201項)に当たるものである。
(略)
控訴人は,図版や学術雑誌等とは異なる通常の単行本である控訴人書籍の編集上の必要性を根拠として,控訴人各画像における本件各画像の改変が,著作権法2024号の「やむを得ないと認められる改変」に当たる旨を主張する。
しかしながら,そもそも,控訴人各画像の控訴人書籍への掲載は,被控訴人の許諾なくその著作物たる本件各画像を複製するものであって,控訴人各画像を控訴人書籍に掲載すること自体が許されない行為であり,編集上の必要性なるものによって,本件各画像の改変が正当化されるべき理由はない。

令和元年1226日知的財産高等裁判所[令和1()10048]
被告は,原告が本件写真を画像データ化した原告画像をインターネットのウェブサイトからダウンロードし,原告画像の2羽のペンギンのうち,右側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をしたものと認められるから,被告の上記行為は,原告の同一性保持権の侵害に当たるものと認められる。

▶令和3528日東京地方裁判所[令和3()7374]
本件画像は,本件発信者が,原告に無断で本件著作物を複製した上で,頭にフードを被り,前髪が目までかかった細身の若い男性が,流し目で右前方を見ているという本件著作物の表現上の本質的特徴を維持しつつ,複製した画像の一部をトリミングし,「なまらわや」,「レオラギ多めグッズ」との文字をイラストに重ね,男性のシャツの色や髪の長さなどに変更を加え,著作者名の表示をせずに,ウェブサイトに掲載したものと認められる。
そうすると,本件画像のウェブサイトへの掲載が,本件著作物に係る原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害するものであることは明らかである。

▶令和4415日東京地方裁判所[令和3()23928]
同一性保持権侵害の成否について
(1) 前記前提事実のとおり、原告が撮影した原告写真1及び2は「写真の著作物」(著作権法10条1項8号)に該当するから、原告は、原告写真1及び2に係る同一性保持権を有するところ、前記前提事実のとおり、被告は、原告写真1の上下左右を正方形になるようにトリミングして被告写真1を、原告写真2の上下左右を正方形になるようにトリミングして被告写真2を、それぞれ作成したものである。
したがって、被告は、原告写真1及び2に係る原告の同一性保持権を侵害したと認めるのが相当である。
(2) これに対して、被告は、原告写真1及び2の中央位置はそのままにし、インスタグラムの仕様に合わせて正方形にトリミングしたものであり、原告写真1及び2の創作性及び特徴を害したものではないし、「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当すると主張する。
そこで検討するに、原告写真1及び2は、列車が川に架かる鉄橋を走行する様子を、列車をほぼ中心に据え、周囲に霧のかかった川及び連なる山々を配置し、列車と比較して周囲の川及び山を大きく写すような横長の構図で撮影されたものであり、これらの点について創作性を認めることができる。そして、被告写真1及び2は、上記のような原告写真1及び2の上下左右をトリミングして正方形にし、それらに写し出された左右の山を大きく切り取ったものである。そうすると、被告が被告写真1及び2を作成したことにより、原告写真1及び2について、その著作者である原告の意に反し、上記のとおり創作性の認められる表現部分に実質的な改変が加えられたことは明らかであって、これが原告写真1及び2の創作性及び特徴を害さないものということはできない。
また、本件全証拠によっても、被告が被告のインスタグラム上のアカウントにおいて掲載するために原告写真1及び2をトリミングすることについて、正当な理由を基礎付ける事実は認められないから、被告による上記改変が「やむを得ないと認められる改変」に該当するとは認められない。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。

▶令和4418日東京地方裁判所[令和3()24157]
同一性保持権の侵害について
() 原告写真の著作物性及び著作者について
証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告写真は、原告が、動画配信サイト上の自らのウェブページに掲載して使用することを目的として、自らの容姿を撮影したものであり、被写体である原告は、片手を頬に添えるポーズをとった上で、顔を正面に向けつつも写真中央から少しずらした位置に配置して撮影を行い、撮影後に顔の輪郭に沿う位置に花びらの画像を加える加工をして原告写真を完成させたものと認められる。
そうすると、原告写真は、原告において、被写体の配置、構図を工夫して撮影し、撮影後に一部加工をしたものであり、原告の個性が表れているものと認められる。
したがって、原告が撮影した原告写真は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものということができるから、著作物(著作権法2条1項1号)に該当し、原告はその著作者(同項2号)であると認められる。
() 権利侵害の明白性について
証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿画像は、原告写真における原告の顔に、原告が眼鏡を掛け、口ひげ及びあごひげを生やしているように見えるような加工をして、作成したものであると認められ、本件投稿2-4により、このような本件投稿画像が本件スレッドの閲覧者の画面に表示されるようにする行為は、原告の意思に反して、原告の著作物を改変するものであるから、本件投稿2-4によって原告写真についての原告の同一性保持権(著作権法20条1項)が侵害されたものと認められる。

▶令和3423日東京地方裁判所[令和2()27196]
<本件掲載行為によって,原告の著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたかについて>
(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告著作物と本件各画像の対比表のとおり,本件画像5の二つの画像ファイルは,本件紙面4の3分の2程度の大きさを占める一つの記事から,その右側の半分強と左側の半分強をそれぞれ切り取る形で複製したものであること(記事の中央付近は両方の画像ファイルに含まれるように切り取られている。),本件画像7の二つの画像ファイルは,本件紙面6の5分の2程度の大きさを占める一つの記事から,同様に,その右側の半分強と左側の半分強をそれぞれ切り取る形で複製したものであること(記事の中央付近は両方の画像ファイルに含まれるように切り取られている。),被告は,本件掲載行為に当たり,本件画像5と本件画像7の二つずつの画像ファイルをそれぞれ上下に並べて本件サイトに掲載したことが認められる。
被告の上記行為は,新聞紙面上に掲載された一つの記事を,紙面上の写真や文章が分断されるような形で分割するものであり,そのように左右に分割された記事の画像をあえて上下に配置して掲載することによって,紙面上の記事の一覧性も損なわれているものといえる。このような一連の行為は,原告の意思に反して,原告の著作物を切除し,変更するものであるから,本件画像5の掲載によって本件紙面4について,本件画像7の掲載によって本件紙面6について,原告の同一性保持権がそれぞれ侵害されたものと認められる。
(2) 被告は,聖教新聞は,原告の宗旨を広く公衆に知らしめることで布教活動を推進することを目的としているため,記事の趣旨に反する誤用等なく聖教新聞の記事をウェブサイトに転載する行為は原告の著作者人格権の侵害に当たらないと主張する。
しかし,前記(1)のとおり,原告の意思に反する改変がされている以上,被告の主張するような事情をもって,直ちに同一性保持権侵害の成立を否定することはできないというべきである。
なお,被告の主張が,著作権法20条2項4号の例外規定に該当するとの趣旨であると解するとしても,被告による上記の行為が「やむを得ないと認められる改変」であると認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(略)
<著作者人格権侵害による損害について>
前記のとおり,本件画像5と本件画像7の掲載に当たっては,一つの記事が紙面上の写真や文章が分断されるような形で左右に分割され,それが上下に配置されることによって紙面上の記事の一覧性も損なわれており,これらの改変による本件紙面4と本件紙面6についての同一性保持権の侵害が認められる。
上記の改変においては,一つの記事から切除されて読めなくなっているような部分はなく,上下に並べられることで一覧性は損なわれているものの,本件サイトの閲覧者において,これらがそれぞれ一つの記事であることは依然として理解可能なものであったといえるから,新聞紙面の改変として特に悪性の強いものであったとはいえない。そうすると,前記前提事実のとおり,本件画像5と本件画像7の掲載期間が約2年間に及ぶことを考慮しても,同掲載に係る同一性保持権侵害によって発生した原告の無形損害は,本件紙面4と本件紙面6について各2万円の合計4万円と認めるのが相当である。

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