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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

同一性保持権▶個別事例④(イラストその他)

▶平成110921日東京高等裁判所[平成10()5108]
本件利用の具体的内容は、翼竜を切除し、ティラノサウルスについて、全体の色調を黄、赤系統の色調に変更し、首から背にかけて連続した突起物を加えるなどして輪郭を変え、写実的かつ緻密に描かれていた目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等をぼかし、肌の襞の模様や陰影をはっきりと判別できず、かえって別個の模様を浮き上がらせるようなものにしている。しかし、本件著作物における、首を捻り右正面を向いて大きく口を開け歯をむき出したティラノサウルスという基本的な構図、その輪郭、目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等の細部の描写自体は残存したままである。
右認定の事実によれば、○○は、本件利用によって、本件著作物の表現を変更しあるいは一部切除してこれを改変したものと認めるのが相当である。したがって、本件利用は、著作者である被控訴人の承諾又は著作権法の定める適用除外規定に該当する事由がない限り、本件著作物について被控訴人が有する同一性保持権を侵害するものというべきである。

平成151112日東京地方裁判所[平成14()23479]
原告イラストは,①「特徴に乏しい建物」,羽が小さく脚部が二本の風車が,それぞれ描かれ,②境界線を曖昧にして,にじみだすような筆致で,各名所旧跡をデフォルメして描かれているのに対して,被告イラストは,①パゴダ風の建物,イスラム風の建物,万里の長城,雲,羽が大きく脚部が台形状の風車が,それぞれ描かれ,②シャープな描線が用いられ,個々の名所旧跡も写実的に表現されている点において,相違する。
(略)
原告は,原告イラストの作成に当たり,個々のイラストについて,すべての境界線が曖昧な,にじみだすような筆致で描き,メルヘン的な雰囲気を醸し出すことにより,主題を強調しようとしていることがうかがわれる。これに対し,被告らは,被告イラストを作成するに当たり,原告イラストの筆致を変更したり,個々のイラストの内容を一部変更するなどした。
したがって,被告イラストを作成し,これを使用して被告新聞広告を掲載した行為は,原告イラストの表現に変更,切除その他の改変を加えているので,原告イラストについての原告が有する同一性保持権を侵害したものということができる。

平成191116日東京地方裁判所[平成19()4822]
一般に,イラストは,線描のみならず,その色調の違いのみによっても見る者に異なる印象を与えるから,色の選択は,基本的には,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるというべきであり,本件各イラストの色を変更した被告○○の行為は,著作者である原告の意に反する改変に当たり,本件各イラストについての原告の同一性保持権を侵害したというべきである。
(略)
イラストの大きさ,特に,他のイラストとの関係で認識される相対的な大きさについても,色調と同様,その違いによって見る者に異なる印象を与えるから,その選択は,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるものであるということができる。

平成28623日東京地方裁判所[平成26()14093]
原告は,本件書籍に使用された本件イラスト類1~6につきサイズの変更(縮小),色の変更及びトレーミング(トリミング。イラストの一部のカット)を行ったこと,本件イラスト類19につき大型ポスターとした上でシールを貼るための丸枠内に別の画像をはめ込んだことが原告の同一性保持権を侵害する旨主張する。
そこで判断するに,まず,本件イラスト類1~6については,原告主張のとおり大きさの変更等がされたと認められる一方,これらイラスト類は,小学校の社会科の授業で用いる教材のために紺瑠璃杯,五弦琵琶,安土城と城下町,矢じり等の道具,吉野ヶ里遺跡及び大仙古墳を描いたものであり,独立して観賞の対象とされるのではなく,他の多数のイラストや図表等と共に教材に掲載されること,カットされたのは安土城周辺の風景,木のクワの柄の一部,吉野ヶ里遺跡のうち左方の住居及び柵,大仙古墳周辺の住宅地等であり,サイズ変更及び一部カットの後も描かれた対象が安土城等であると認識できること,カラーからモノクロ又は2色刷りに変更されたのは社会科作業帳・6年生別冊資料などごく一部であること,以上の事実が認められる。
上記事実関係によれば,本件イラスト類の作成に当たっては,学習対象への児童の関心を引いて理解を深めるという教材の目的や,教材の限りある紙面に多数のイラスト等を掲載するという利用態様に照らし,掲載箇所の紙幅等を考慮してサイズや色を変更したり,一部をカットしたりすることが当然に想定されていたとみることができる。そうすると,本件イラスト類1~6につき上記のようにサイズを変更するなどした被告らの行為は同一性保持権の侵害に当たらないと判断するのが相当である。
次に,本件イラスト類19についてみるに,本件イラスト類19は,A4判の理科学習ノートの口絵部分に見開き(ほぼA3判の大きさ)で掲載するものとして,原告が被告らの依頼により作成したこと,動植物の四季の変化の様子を1枚に描いたものであり,シールを貼るための円形の枠が十数か所設けられていること,被告らは,これをA1判相当に拡大した上,上記の枠に替えて別の画像をイラスト中に埋め込んで,授業で使用できる掲示用資料(ポスター)を作成したことが認められる。
上記事実関係に照らすと,本件イラスト類19に加えられたサイズ及び画像の変更は,学習用教材であることを考慮しても,その内容及び程度に照らし原告の意に反する改変というほかない。したがって,本件イラスト類19については同一性保持権侵害が成立すると判断すべきものである。

平成31313日東京地方裁判所[平成30()27253]
被告イラストは,パンダの黒く示されている足及び耳について灰色の線で縁取られている部分があり,パンダの目の部分が黒一色で表され,白い部分がないほか,大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり,2頭の鼻と口を示す線がより太く表されており,本件イラストと相違している部分があるところ,これらは原告に無断で変更されており,原告の意に反して変更されたと認められるから,被告行為は,原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するものである。

[ゲームソフトに登場する人物の絵柄の変更]
平成110830日東京地方裁判所[平成10()15575]
本件ビデオは、本件ゲームソフト[注:架空の高校「きらめき高校」における恋愛シミュレーションゲーム。登場人物である藤崎詩織は、優等生的で清純なさわやかな印象を与える性格付けがされている。本件ゲームソフトにおいて藤崎詩織が性的行為を行うような場面は存在しない。]において、男子生徒が藤崎詩織から愛の告白を受けた最終場面の続編として設定され、清純な女子高校生と性格付けられていた登場人物の藤崎詩織が、伝説の樹の下で、男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、10分程度の成人向けのアニメーションビデオとして制作されている。
確かに、本件ビデオにおいては、藤崎詩織の名前が用いられていないが、①本件ビデオのパッケージにおける女子高校生の図柄と、本件ゲームソフトのパッケージにおける藤崎詩織の図柄とを対比すると、前記認定した共通の類似点がある他、さらに、後髪を向かって左側になびかせている点、首をやや左側に傾けている点、頭頂部に極く短い髪を描いている点、髪の毛に白色のハイライトを付けている点など細部に至るまで酷似していること、②本件ビデオのパッケージにおける「どぎまぎイマジネーション」というタイトルの選択、各文字のデザイン及び色彩、青い波形の背景デザインなど、本件ゲームソフトのパッケージにおける各部分と類似していること、③本件ビデオにおいて、「本当の気持ち、告白します。」と表記され、本件ゲームソフトとの関連性を連想させる説明がされていること等の事実から、本件ビデオの購入者は、右ビデオにおける女子高校生を藤崎詩織であると認識するものと解するのが相当である。
以上によると、被告は、本件ビデオにおいて、本件藤崎の図柄を、性行為を行う姿に改変しているというべきであり、原告の有する、本件藤崎の図柄に係る同一性保持権を侵害している。

[漫画コマ割りの配置の変更]
▶平成120425日東京高等裁判所[平成11()4783]
カット37において原カット()の配置が変更されていることは、著作権法201項にいう「改変」に当たるものである。

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