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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

同一性保持権▶個別事例⑦(劇場用映画/記録映像

[劇場用映画]
昭和520228日東京地方裁判所[昭和44()1528]
著作者の人格的利益を害しない程度の変更は同一性保持権の侵害とはならないものと解すべきところ、一般的にいつて16ミリカラーフイルムを8ミリカラーフイルムに縮小したからといつて、これを映写した場合を考えると、16ミリカラーフイルムで表現された著作者の創作意図に変更を及ぼし、ひいて著作者の人格的利益を害するものとは解されない(。)

平成100713日東京高等裁判所[平成7()3529]
ビスタサイズの劇場映画をビデオに複製したり、テレビ放映するに際しては、トリミングしてスタンダードサイズに改変する必要があることは右に述べたとおりであるとしても、映画監督の了解なしに行って良いかどうかは別の問題である。一般に、映画監督は、撮影する映画の視聴者に与える影響等を考慮して、スタンダードサイズとするか、ビスタサイズとするか、シネマスコープサイズとするかを考慮した上で選択しているものであり、そのサイズの改変は、当該映画の映画監督が事前又は事後に了解を与えていた場合や、同意を得ないでの改変も正当化されるような特段の事情が認められない限り、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当し、監督の著作者人格権を侵害するものであるからである。
(略)
控訴人は、本件映画がビデオ化されること、ビデオ化される際には、トリミングが行われることについて了解を与えていたこと、ビスタサイズの映画がビデオ化される際には、スタンダードサイズにトリミングされることが当時では通常であったこと、Aが、本件映画の製作総指揮として、本件映画の編集、ダビング、特殊撮影や、合成部分の仕上げ等の業務を行い、このようなAの編集等の参与について控訴人が特段の異議も述べていなかった事情を総合すると、本件改変行為当時としては、Aが、監督としての控訴人の了解を得ないでトリミングをしても差し支えないと判断し、その行為に出たとしても、本件改変行為当時としては、その行為は、妥当なものでなかったということはできず、著作権法2024号の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するものと認めるのが相当である。
(略)
一般に、テレビ・コマーシャルの挿入が必要であるとしても、著作者である監督の了解を得ないで行われたその挿入は、当然に正当化されるものではなく、その挿入の回数、時間、挿入箇所等の内容によっては、当該劇場映画が視聴者に与える印象に影響を及ぼすものと認められるから、その態様如何によっては、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当する場合があると解される。本件では、具体的なテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定につき、Aが、控訴人の了解を得たことを的確に認めることのできる証拠はない。
しかし、本件では、控訴人が本件映画のビデオ化、テレビ放映などの二次的利用を広く承諾していたものであり、その中には、当然、民間放送でのテレビ放映も含まれ、しかも、テレビ放映の際の6箇所のテレビ・コマーシャルの挿入部分の指定も、前記トリミング及び改変と同様、本件映画の製作総指揮として編集等を実質的に取り仕切ったAにより慎重な配慮に基づいて行われたものであり、その回数、時間、挿入箇所等を併せ考えても、これらのテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定は、控訴人の了解の範囲内にあるものと認められるから、著作権法2024号に規定する「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない改変」に該当するものと認めるのが相当である。

[記録映像]
平成220421日東京地方裁判所[平成20()36380]
被告らは,本件DVテープ[注:「本件映像」(原告が世界各地を取材してデジタルビデオテープ(テープ本数15本、撮影時間約25時間)に記録した世界の鉄道動画)が記録されたDVテープのこと]が膨大な量であることからすれば,これを編集することは,著作物の利用の目的及び態様に照らしてやむを得ない改変に該当する(著作権法2024号)と主張する。
しかしながら,本件映像は,元々,公表することや放送番組に利用することを予定して撮影されたものではなく,また,本件作品並びに本件DVDを作成するために,合計約25時間に及ぶ本件映像を取捨選択して,約46分間の映像に編集していることからすれば,このような編集行為が「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない」改変に該当すると認められないことは,明らかであり,被告らの前記主張は,採用することができない。 したがって,本件映像を編集した本件DVDを作成することは,原告の本件映像についての同一性保持権を侵害すると認められる。

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