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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害主体論▶複製権侵害の主体[個別事例]

▶平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]
「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2115号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
本件サービスは,①利用者が控訴人○○に書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,控訴人○○に書籍を送付する,③控訴人○○は,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④控訴人○○は,裁断した書籍を控訴人○○が管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,このうち上記④の、裁断した書籍をスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人○○のみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
そして,控訴人○○は,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
そうすると,控訴人○○は,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。
(略)
一般に,ある行為の直接的な行為主体でない者であっても,その者が,当該行為の直接的な行為主体を「自己の手足として利用してその行為を行わせている」と評価し得る程度に,その行為を管理・支配しているという関係が認められる場合には,その直接的な行為主体でない者を当該行為の実質的な行為主体であると法的に評価し,当該行為についての責任を負担させることがあり得るということができる。
しかし,利用者は,控訴人○○が用意した本件サービスの内容に従って本件サービスを申し込み,書籍を調達し,電子ファイル化を注文して書籍を送付しているのであり,控訴人○○は,利用者からの上記申込みを事業者として承諾した上でスキャン等の複製を行っており,利用者は,控訴人○○の行うスキャン等の複製に関する作業に関与することは一切ない。
そうすると,利用者が控訴人○○を自己の手足として利用して書籍の電子ファイル化を行わせていると評価し得る程度に,利用者が控訴人○○による複製行為を管理・支配しているとの関係が認められないことは明らかであって,控訴人○○が利用者の「補助者」ないし「手足」ということはできない。

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