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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害主体論▶演奏権侵害の主体[個別事例①(カラオケ/ライブハウス)]

▶平成30510日大阪地方裁判所[平成27(行ウ)112]
原告らは,本件地活協は,本件カラオケ事業の実施に当たり,カラオケの集いを管理・支配し,カラオケの集いの参加者から会館使用料を徴収するなどして営業上の利益を得て楽曲を利用しているにもかかわらず,JASRACに対し楽曲の使用料を支払っていないから,著作権者の演奏権を侵害しているとして,このような違法な活動に本件カラオケ補助金を使用することは許されない旨主張する。
そこで検討するに,本件地活協は,カラオケの集いの開催場所である本件各会館の使用料を負担し,老人会と共同してカラオケ情報料の一部を負担するなど,本件地活協がカラオケの集いの運営にある程度関与していたことは否定し難い。しかし,その関与のあり方は,専らカラオケの集いを経済的に支援するものにとどまるというべきであるし,本件地活協が,カラオケの集いの参加者から入場料その他の名目で料金を徴収していたことをうかがわせる事情は見当たらないから,本件地活協にカラオケの集いによる営業上の利益が帰属していたとは認められない。また,上記で説示したとおり[注:上記で次のように説示「本件各会館が徴収していたのは会館の使用料であり,本件各会館と本件地活協とは異なる団体であるから,仮に本件各会館が本件カラオケ機器の使用料を徴収していたとしても,そのことにより本件地活協にその利益が帰属するものではないし,本件地活協は,カラオケの集いにおいて,個々の参加者から本件各会館の使用料やカラオケ情報料等の料金を徴収しておらず,むしろ本件各会館の使用料を負担するとともに,老人会と共同してカラオケ情報料の一部を負担していたのであって,カラオケの集いにより利益を得ていないことは明らかである。したがって,本件カラオケ事業が営利を目的とする活動であるとは認められない(。)」],本件カラオケ事業は営利を目的とした活動には当たらない上,カラオケの集いの参加者に対して報酬等が支払われたことはなく,無報酬であったことに争いはない。
そうすると,本件地活協がカラオケ楽曲の利用主体として著作権者の演奏権を侵害したとは認められないし,仮に本件地活協が楽曲を利用し著作権者の演奏権を侵害していたとしても,カラオケの集いは非営利の活動で,無料かつ無報酬であるから,著作権法38条1項所定の非営利演奏に当たり,その違法性が阻却されるといえる。したがって,本件カラオケ事業が著作権法に反する違法な活動であったとは認められない。

▶平成281019日知的財産高等裁判所[平成28()10041]
本件店舗において,1審原告管理著作物を演奏(楽器を用いて行う演奏,歌唱)をしているのは,その多くの場合出演者であることから,このような場合誰が著作物の利用主体に当たるかを判断するに当たっては,利用される著作物の対象,方法,著作物の利用への関与の内容,程度等の諸要素を考慮し,仮に著作物を直接演奏する者でなくても,ライブハウスを経営するに際して,単に第三者の演奏を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,演奏の実現における枢要な行為をしているか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決,最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決等参照)。
本件店舗は,ライブの開催を伴わずにバーとして営業する場合もあるものの,ライブの開催を主な目的として開設されたライブハウスであり,本件店舗の出演者は,1審被告Y2も含め,1審原告管理著作物を演奏することが相当程度あり,本件店舗においては,1審原告管理著作物の演奏が日常的に行われている。
また,1審被告らは,共同して,ミュージシャンが自由に演奏する機会を提供するために本件店舗を設置,開店したこと,本件店舗にはステージや演奏用機材等が設置されており,出演者が希望すればドラムセットやアンプなどの設置された機材等を使用することができること,本件店舗が,出演者から会場使用料を徴収しておらず,ライブを開催することで集客を図り,ライブを聴くために来場した客から飲食代として最低1000円を徴収していることからすれば,本件店舗は,1審原告管理著作物の演奏につき,単に出演者の演奏を容易にするための環境等を整備しているにとどまるものではないというべきである。
そして,1審被告Y1は,本件店舗の経営者である。また,1審被告Y2は,自らを本件店舗の経営者と認識しているものではないものの,①本件店舗の開店・運営のための資金を提供し,本件店舗の賃貸借契約の連帯保証人となり,本件店舗に自らを契約者とする固定電話を設置し,自らのバンド名を本件店舗の名称として使用することを決定し,ミュージシャン仲間らとともに,本件店舗に無償で,ライブに不可欠な音響設備等を提供するなど,本件店舗の開店に積極的に関与したこと,②また,本件店舗の開店前には20組ほどのバンドやグループなどのミュージシャン仲間にライブバーが開店することを伝えて出演するよう声をかけ,本件店舗開店当初は単独でブッキング(電子メール等で出演申込みを受け付ける業務)を行っていたこともあり,さらに,自らのブログ等において本件店舗や本件店舗のライブの宣伝活動をし,本件店舗のアルバイト募集の記事,本件店舗におけるライブの様子を紹介する記事等を掲載するなどしているほか,本件店舗のチラシを1審被告Y2の所属するロックバンドの所属事務所が印刷しているのであって,本件店舗の経営に積極的に関与していること,③本件店舗が,出演者に自由に演奏させるという1審被告Y2の意思に沿った運営をしていること,④さらには,本件調停において,1審被告Y2は,平成24年6月11日以降の使用料については演奏した作品に分配される仕組みを採りたいと述べ,「社交場利用楽曲報告書」に記載をして演奏楽曲を報告すること及び「積算算定額による包括許諾契約」によって支払をする旨述べたり,「社交場利用楽曲報告書」への記載のあり方について1審原告と折衝したりするなど,自ら本件店舗のライブを主催する者として振る舞っていたことからすれば,1審被告Y2においても,1審被告Y1とともに,本件店舗の共同経営者としてその経営に深く関わっていることが認められる。
これらの事実を総合すると,1審被告らは,いずれも,本件店舗における1審原告管理著作物の演奏を管理・支配し,演奏の実現における枢要な行為を行い,それによって利益を得ていると認められるから,1審原告管理著作物の演奏主体(著作権侵害主体)に当たると認めるのが相当である。

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