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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害主体論公衆送信権侵害の主体[個別事例➁(リンク貼りの侵害性/リツイート行為の侵害性)]

[リンク貼りの侵害性]
▶平成250620日大阪地方裁判所[平成23()15245]
原告は,被告において,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックすると,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態にしたことが,本件動画の「送信可能化」(法219号の5)に当たり,公衆送信権侵害による不法行為が成立する旨主張する。
しかし,被告は,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法219号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法219号の5)をしたとは認められない。
ところで,原告の主張は,被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼ることで,公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。
しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして,被告は,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき,原告から抗議を受けた時点,すなわち,「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。
このような事情に照らせば,被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは,原告の著作権を侵害するものとはいえないし,第三者による著作権侵害につき,これを違法に幇助したものでもなく,故意又は過失があったともいえないから,不法行為は成立しない。

[リツイート行為の侵害性]
▶平成30425日知的財産高等裁判所[平成28()10101]
[注:本件においては、前提として次のような「事実認定」あった:
『本件リツイート行為[(注)第三者のツイートについて自己のタイムラインに表示させたり自己のフォロワーにリツイートをしたと知らせたりすることによって,当該第三者のツイートを紹介ないし引用すること]により本件アカウントのタイムラインのURLにリンク先である流通情報のURLへのインラインリンク[(注)ユーザーの操作を介することなく,リンク元のウェブページが立ち上がった時に自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて,リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクのこと]が設定されて,同URLに係るサーバーから直接ユーザーのパソコン等の端末に画像ファイルのデータが送信され,ユーザーのパソコン等に本件写真の画像が表示されるものである。もっとも,ユーザーのパソコン等の端末に,本件写真の画像を表示させるためには,どのような大きさや配置で,いかなるリンク先からの写真を表示させるか等を指定するためのプログラム(HTMLプログラム,CSSプログラム,JavaScriptプログラム)が送信される必要があること,本件リツイート行為の結果として,そのようなプログラムが,リンク元のウェブページに対応するサーバーからユーザーのパソコン等に送信されること,そのことにより,リンク先の画像とは縦横の大きさが異なった画像や一部がトリミングされた画像が表示されることがあること,本件アカウントのタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報の画像とは異なるものであること(縦横の大きさが異なるし,トリミングされており,控訴人の氏名も表示されていない)が認められる。』]
本件リツイート行為によってユーザーのパソコン等の端末に表示される本件写真の画像は,それらのユーザーの求めに応じて,流通情報のデータが送信されて表示されているといえるから,自動公衆送信(公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの[放送又は有線放送に該当するものを除く。])に当たる。
自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成23年1月18日判決参照),本件写真のデータは,流通情報のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の主体は,流通情報のURLの開設者であって,本件リツイート者らではないというべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきであり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高裁平成23年1月20日判決参照)が,本件において,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は,本件アカウントの管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも本件アカウントのホーム画面に関する事情であって,流通情報のデータのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって,本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表示されることとなるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大することをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはできない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。

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