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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権侵害総論▶侵害性一般①(侵害の意義/著作物の毀棄行為/キャラクターの利用行為/プログラムの使用/不作為

[侵害の意義]
昭和55328最高裁判所第三小法廷[昭和51()923]
自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾なくして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られるのであ(る。)

▶平成71019日京都地方裁判所[平成6()2364]
著作権侵害行為は、既存の著作物を利用してある作品を作出する場合に成立するが、その利用の態様としては、①既存の著作物と全く同一の作品を作出した場合、②既存の著作物に修正増減を加えているが、その修正増減について創作性が認められない場合、③既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われるに至っていない場合、④既存の著作物の修正増減に創作性が認められ、かつ、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合が存在する。そして、著作権(著作財産権)との関係からいえば右①②の場合は著作権中の複製権(著作権法21条)の侵害であり、右③の場合は著作権中の改作利用権(同法27条)の侵害であり、右④の場合には、全く別個独立の著作物を作出するものであって、著作権侵害を構成しない。また、著作者人格権との関係からいえば、右②③の場合が同一性保持権の侵害であり(最高裁判所昭和55328日判決参照)、右④の場合は著作財産権の場合と同様、侵害にあたらない。したがって、著作権ないし著作者人格権に対する侵害の有無は、原作品における表現形式上の本質的な特徴自体を直接感得することができるか否かにより決められなければならない。

▶昭和530621日東京地方裁判所[昭和52()598]
著作権侵害の成否とは、要するに、思想そのものではなく、思想(それ自体独創性のあるものであると否とを必ずしも問わない。)についての創作性ある具体的表現が無断で利用されているかどうかということであ(る。)

▶平成130621日大阪高等裁判所[平成12()3128]
被告計画書が原告企画書の著作権を侵害したか否かを判断するにあたり,著作物性のない部分について,これを比較することは無意味であるから,一個の著作物においても,その著作物における創作的な表現部分について,これが複製されたかどうかを判断することが必要であ(る。)

▶平成161104日大阪地方裁判所[平成15()6252]
論文に同一の自然科学上の知見が記載されているとしても、自然科学上の知見それ自体は表現ではないから、同じ知見が記載されていることをもって著作権の侵害とすることはできない。

▶平成150306日東京地方裁判所[平成14()26691]
仮に,原告の主張するように,原告著作物に記載されている野球の打撃理論等を被告が公式戦等の試合において実践したとしても,当該行為は著作権法にいう著作者の権利を侵害するものではない。(中略)本件において,原告が著作権侵害として主張する内容は,単に,被告が原告著作物に記載された内容を参考にして競技をしたというにとどまるものであって,原告著作物の具体的な表現を利用したものとはいえない。

[著作物の毀棄行為]
▶平成191212日東京地方裁判所[平成19()17959]
本件において,原告が著作権侵害と主張する行為は,本件図面の毀棄行為であるところ,仮に本件図面に著作物性が認められたとしても,著作物が固定された有形物である本件図面の毀棄行為は,その著作物についての著作権を侵害することにはならないから,原告の主張はそれ自体失当である。

[キャラクターの利用行為]
▶令和2106日知的財産高等裁判所[令和2()10018]
漫画の「キャラクター」は,一般的には,漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって,具体的表現そのものではなく,それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから,著作物に当たらない(最高裁判所平成9年7月17日第一小法廷判決)。したがって,本件各漫画のキャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって,これによって著作権侵害の問題が生じるものではない。

[プログラムの使用]
▶平成151218日大阪地方裁判所[平成14()8277]
著作権の支分権の中には使用権は含まれていないから、プログラムの著作物の使用は、著作権法1132[(注)現5]に該当する場合以外は著作権侵害とはならない(。)

▶平成210226日大阪地方裁判所[平成17()2641]
被告の行為は,適法に複製された本件プログラムの複製物を本件装置において使用しているにすぎないものであるところ,その行為は,「著作権に含まれる権利の種類」(21条ないし28条)に規定されている権利のいずれを侵害するものでもないし,複製が適法である以上,著作権法1132[(注)現5]の場合にも該当しない。

[不作為]
▶令和3531日知的財産高等裁判所[令和2()10010]
本件写真1ないし3に係る画像データを削除しないことが不作為による著作権(自動公衆送信権)侵害に該当し,侵害情報の流通によって被控訴人の著作権が侵害されたことが明らかであるかについて
⑴ 被控訴人は,本件アカウント2,4,6及び7利用者は,それぞれツイート行為2,プロフィール画像設定行為2,プロフィール画像設定行為4,ツイート行為7により違法に本件写真1ないし3をアップロードしている以上,本件写真1ないし3を削除すべき条理上の義務を負っているにもかかわらず,これを削除しないという不作為によって被控訴人の自動公衆送信権を侵害しており,自動公衆送信状態を維持することは,違法アップロードと同価値であり,したがって,本件アカウント2,4,6及び7利用者は,最新ログイン時点における不作為による侵害情報の発信者と評価されるべきであることを理由として,本件アカウント2,4,6及び7について最新ログイン時IPアドレス等の情報の開示請求が認められるべきであると主張する。
⑵ 特定電気通信(プロバイダ責任制限法2条1号)による情報の流通には,これにより他人の権利の侵害が容易に行われ,その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し,匿名で情報の発信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという,他の情報流通手段とは異なる特徴がある。
一方,発信者情報は,発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密にかかわる情報であり,正当な理由がない限り第三者に開示されるべきものではなく,また,これがいったん開示されると開示前の状態への回復は不可能となる。これらを踏まえ,プロバイダ責任制限法4条は,特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図るものと解される(最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決,最高裁平成22年4月13日第三小法廷判決参照)。
そして,プロバイダ責任制限法4条は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,次の各号のいずれにも該当するときに限り(中略)当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。)の開示を請求することができる。」(1項柱書),「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。」(1項1号)と規定し,発信者情報の開示を求めることができるのは,情報が流通したこと自体(「情報の流通」,「侵害情報の流通」)によって権利の侵害がされた場合であることを明記している。また,プロバイダ責任制限法2条4号は,「発信者」について,特定電気通信設備の記録媒体又は送信装置に情報を記録,入力した者であるとして,特定の記録,入力という積極的な行為を行った者に限定として特定している。そして,新発信者情報省令は,発信者情報を「侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス」(5号),「侵害情報に係る携帯電話端末又はPHS端末」(6号),「侵害情報に係るSIMカード識別番号」(7号)として,侵害情報に関係する情報のみを発信者情報として特定している。
上記の法の趣旨及び規定によれば,プロバイダ責任制限法は,特定の記録,入力という積極的な行為が行われた場合に,その行為により情報が流通し,その情報の流通自体によって権利が侵害された場合に,そのような情報の流通による権利侵害の特殊性等を考慮し,その記録,入力という作為をした者を「発信者」とし,その発信者の情報の開示を請求することができることを定めているといえる。
被控訴人は,上記⑴のとおり,対象のアカウントについて,最新ログイン時点よりも前に被控訴人の権利侵害が行われたことによって最新ログイン時点における不作為による権利侵害があり,当該最新ログインをしたアカウント利用者は,その侵害情報の発信者と評価されるべきであることを理由として,最新ログイン時IPアドレス等の情報の開示請求が認められるべきであると主張する。
しかし,被控訴人の上記主張は,ログインをした者が本件写真1ないし3を削除しないという単なる不作為を問題としており,特定の記録,入力という積極的な行為自体を問題とするものではなく,また,積極的な行為がない以上,その時点における積極的な行為に基づく情報の流通があるわけでもない。そうすると,被控訴人は,「情報の流通」によって自己の権利を侵害されたとはいえないし,このような不作為の行為者について,上記に述べたプロバイダ責任制限法が想定する「発信者」ということもできないから,被控訴人の主張は,既にこの点において失当である。また,本件において,最新ログイン時点におけるアカウント利用者を上記のとおりの「発信者」ということができる特段の事情を認めるに足りる証拠もなく,最新ログイン時点におけるアカウント利用者をプロバイダ責任制限法が想定する「発信者」ということはできない。
したがって,本件アカウント2,4,6及び7利用者がプロフィール画像等としてアップロードした本件写真1ないし3を削除しないことが不作為による公衆送信権侵害であることを前提として発信者情報の開示を求める被控訴人の請求は,これらアカウント利用者が不作為による公衆送信権侵害を行ったと評価されるか否かを判断するまでもなく,理由がない。

[その他]
令和元年1226日知的財産高等裁判所[令和1()10048]
1審被告の行為1及び2は,独立した行為ではあるが,それぞれ,1個の著作物である本件写真の一部である右側のペンギンのみを被写体とする部分(右側部分)及び左側のペンギンのみを被写体とする部分(左側部分)を複製及び公衆送信化したものであるから,全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価することができる。

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