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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権侵害総論侵害性一般④(著作財産権侵害に基づく慰謝料請求の可否)

昭和61530最高裁判所第二小法廷[昭和58()516]
複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである。

▶平成150718日東京高等裁判所[平成14()3136]
財産権の侵害により被った精神的苦痛については,一般に,損害の回復により慰謝されるのであって,損害の回復によってもなお慰謝されない精神的苦痛が生じた場合において,慰謝料を請求することができるというべきである。

▶平成160629日東京高等裁判所[平成15()2467]
財産権の侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには,侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解される(。)

▶令和21028日知的財産高等裁判所[令和1()10071]
控訴人は,被控訴人らによる著作権侵害によって控訴人が被った精神的損害を慰謝するための慰謝料は,200万円を下らない旨主張する。
しかしながら,財産権侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには,侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解されるところ,本件において,上記特段の事情が存するとまでは認められないから,上記控訴人の主張は採用することができない。

▶平成171208日大阪地方裁判所[平成17()1311]
本件各使用によって侵害されたのは原告の著作権(複製権)であり、財産権である。そして、一般には、財産権が侵害されたことによって、被害者に精神的苦痛が生じたとしても、その苦痛は、原則として、財産的損害が賠償されることによって慰謝されると解すべきである。
もっとも、侵害された財産権が、被害者にとって、単なる財産的価値にとどまらず、特別の精神的価値があるものであり、その侵害によって、財産的損害の賠償によって十分に慰謝されないなどといった特段の事情がある場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める余地があると解される。

▶平成171208日大阪地方裁判所[平成17()1311]
財産権侵害の不法行為であっても、加害者の加害態様の悪性が特に強く、財産的損害とは別に精神的損害が生じたと認められる場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める特段の事情となり得る(。)

▶平成170720日東京地方裁判所[平成17()313]
著作財産権である複製権侵害を理由に慰謝料を請求するためには,侵害された財産権が当該被害者にとって特別の精神的価値を有し,そのため,単に侵害の排除又は財産的損害の賠償だけでは償い得ないような重大な精神的苦痛を被ったと認められる特別の事情がなければならないと解される(。)

令和元年1030日東京地方裁判所[令和1()15601]
原告は,著作権侵害に係る慰謝料をも請求するが,著作権侵害行為によって生じた損害は財産損害に対する損害賠償によって回復されるのが通常であり,被告による著作権侵害行為の態様を踏まえても,著作権侵害によって金銭をもって慰謝すべき精神的損害が生じたと認めることはできない。

▶令和3716日東京地方裁判所[令和3()4491]
公衆送信権の侵害は,財産権の侵害であるから,特段の事情がない限り,その侵害を理由として慰謝料を請求することはできないところ,本件において,同権利の侵害について慰謝料を認めるべき特段の事情があるとは認められない。


▶令和489日東京地方裁判所[令和4()9640]
原告は、原告画像に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことにより甚大な精神的苦痛を受け、これに対する慰謝料は 100 万円を下らないと主張する。
しかし、原告主張に係る著作権侵害による精神的苦痛とは、被告が原告に対する嫌悪感を背景として原告を茶化し、侮辱することを目的としてあえて原告画像を使用したことによるものというのであり、結局、名誉権及び名誉感情の侵害による精神的苦痛に帰するものと理解される。
そうである以上、原告の著作権侵害それ自体による精神的苦痛を生じたと認めることはできず、これに基づく慰謝料請求権を認めることはできない。この点に関する原告の主張は採用できない。

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