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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

氏名表示権▶個別事例[侵害認定例]①(ツイートに伴う非表示/フェイスブックの埋め込み投稿

[ツイートに伴う非表示]
▶令和2721最高裁判所第三小法廷[平成30()1412]
被上告人は,本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより,本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである(なお,このような画像の表示の仕方は,ツイッターのシステムの仕様によるものであるが,他方で,本件各リツイート者は,それを認識しているか否かにかかわらず,そのようなシステムを利用して本件各リツイートを行っており,上記の事態は,客観的には,その本件各リツイート者の行為によって現実に生ずるに至ったことが明らかである。)。また,本件各リツイート者は,本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて,他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。そして,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても,本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり,本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各表示画像をクリックしない限り,著作者名の表示を目にすることはない。また,同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。
以上によれば,本件各リツイート者は,本件各リツイートにより,本件氏名表示権を侵害したものというべきである。

▶令和3531日知的財産高等裁判所[令和2()10010]
本件円形表示による氏名表示権侵害の有無
ア ツイート1並びに6及び6’による本件円形表示において,本件写真1,2は,著作者名の表示の付された部分が切除された形でウェブページの閲覧者の端末に表示される。そして,ツイート6若しくは6’のウェブページの閲覧者は,本件円形表示をクリックすることにより,著作者名の表示のある本件写真1を見ることができるが,著作者名の表示のある元の画像は,上記クリックにより,上記ウェブページとは別のウェブページで見ることができるにとどまるし,閲覧者が本件円形表示を通常クリックするのが通常であるといえるような事情もうかがわれない。
また,ツイート1に関しては,プロフィール画像設定行為1により設定・登録された本件写真2’において既に著作者名の表示の付された部分が切除されていたから,ウェブページの閲覧者は,本件円形表示をクリックしても著作者名の表示のある本件写真2を見ることはできない。したがって,被控訴人は,本件円形表示により,氏名表示権を侵害されたことが明らかであるものと認められる。
() 控訴人は,本件円形表示が小さく,プロフィール画像設定行為1,4により設定・登録された画像の解像度が低いことから,本件円形表示において表示された本件写真1,2の画像は,本件写真1,2の著作物としての本質的特徴を感得できないものであり,著作物としての本質的特徴を感得できない態様で本件写真1,2の画像を表示したとしても,そもそも写真を「利用」したとはいえないから(著作権法19条1項の具体的な規定との関係では「公衆への提供若しくは提示」に該当しない。),氏名表示権侵害とならないと主張する。
しかし,本件円形表示が小さく,プロフィール画像設定行為により設定・登録された画像の解像度が原著作物よりも低いとしても,本件円形表示に表示された本件写真1,2は,他の画像に埋没するようなこともなく,それのみ独立の画像として認識し得る態様で表示されており,円形のトリミングにより削られたところは別として,細部はともかく,被写体の形態,性状,色彩の主要部分が原著作物である本件写真1,2と同様に表示されているから,本件写真1,2の著作物としての本質的特徴を感得できるような態様で表示されていると認められる。したがって,本件円形表示により本件写真1,2が表示されるようにしたことにより,著作物としての本件写真1,2を利用したものであると認められ,「公衆への提供若しくは提示」(著作権法19条1項)に該当するものと認められる。
() 控訴人は,本件円形表示において本件写真1,2の画像が表示される際に円形トリミングがされ,氏名部分が表示されなくなるのは,ツイッターのシステムによって自動的・機械的にそのような表示がされるためであり,アカウント保持者は氏名部分の非表示に関して何らの行為も行っていない等の事情に鑑みれば,本件円形表示における本件写真1,2の画像表示は,著作権法19条3項の例外規定に該当し,氏名表示権侵害は成立しないと主張する。
しかし,上記のとおり,ツイート1並びに6及び6’に係るテキストデータ等は侵害情報であり,ツイート行為1並びに6及び6’の行為者はこれをサーバに記録した「発信者」(プロバイダ責任制限法2条4号)であると評価するのが相当であり,ツイート行為1並びに6及び6’の行為者は,本件円形表示によって本件写真1,2について氏名表示権を侵害した主体であると認められるものであり,自動的・機械的に円形表示がされるといい得る余地があるからといって,それだけで直ちに本件円形表示における本件写真1,2の画像表示が著作権法19条3項の例外規定に該当すると認めることはできない。また,その他に,本件円形表示が著作権法19条3項の例外規定に該当する根拠はない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。

[フェイスブックの埋め込み投稿]
▶令和2106日大阪地方裁判所[令和1()7252]
また,原告は,同一性保持権侵害のほか,原告の氏名表示権が侵害され,原告の名誉,声望が害されたと主張する。
本件転載部分は,原告各投稿の全部又は一部が転載されたものであり,本件コメント部分との区別が不明確であり,その出所も明示されていないため,原告各投稿の改変と解すべきことは前述のとおりであり,本件各記事は,原告各投稿を原著作物とする二次著作物の性質を有するから,これを公衆に提供するに当たり,原著作物の著作者である原告の氏名についても,表示すべきこととなる(同法19条1項)。
しかしながら,氏名表示の問題としては,本件転載部分に原告の氏名表示がなかったとしても,これと別にある原告各投稿の埋め込み表示の記載によっては,閲覧者は本件転載部分の原著作者が原告であることを認識し得る可能性があり,現に,原告投稿7の埋め込み表示が存する本件記事7については,そのように考えることもできる。その余の本件各記事については,基本的には下部枠内に埋め込み表示が存在したと考えられるところ,投稿時の埋め込み表示の状態を示す証拠が提出されていない以上,少なくとも本件の証拠から,氏名表示権の侵害が明白とまではいえない。
また,本件の証拠から,原稿の名誉,声望が害されたことが明白であるとまではいえない。
[注:「埋め込み投稿」について
フェイスブック上の「埋め込み投稿」の機能とは,①Facebook ページの投稿,及び②フォロー設定をオンにしている個人アカウントの公開設定になっている投稿を,外部のウェブサイトにおいて,一定の形式で表示させることができる機能である。フェイスブックにログインした状態の利用者は,①又は②の設定になっている投稿記事を操作して,「埋め込み投稿」というメニューを表示させ,これをクリックすることにより出現する小窓に表示された URL をコピーし,任意の外部のウェブサイト等に貼り付けると,当該ウェブサイトにおいて,自動的に,一定の枠内に元の投稿記事のアカウント名,プロフィール写真及び内容の一部が表示される(埋め込み表示)。当該ウェブサイトの閲覧者は,埋め込み表示をクリックすることにより,フェイスブック上の元の投稿記事に移動することができる。]

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