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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

氏名表示権▶侵害性一般

[氏名表示権の意義]
▶平成180227日知的財産高等裁判所[平成17()10100]
著作者人格権としての氏名表示権(著作権法19条)については,著作者が他人名義で表示することを許容する規定が設けられていないのみならず,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名の表示をすることが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。したがって,仮に一審被告と一審原告との間に本件各銅像につき一審被告名義で公表することについて本件合意が認められたとしても,そのような合意は,公の秩序を定めた前記各規定(強行規定)の趣旨に反し無効というべきである。
一審被告は,著作権法19条が氏名表示権の行使の一内容として,明文を以て著作者の変名を表示することや著作者名を表示しないことも認めていることを理由に,真の著作者名を表示することが公益上の理由からも求められていると解することは妥当でないとも主張するが,著作権法は,真の著作者の変名表示や非表示を認めるにすぎず,真の著作者ではない者を著作者と表示することまでも許容する趣旨ではないから,一審被告の上記主張は採用することができない。

▶平成170623日東京地方裁判所[平成15()13385]
氏名表示権(著作権法19条)については,公表権(同法18条)のように,著作者の同意があれば侵害の成立を阻却することを前提とする規定(同条2項)が設けられていないこと,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名を表示することが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。

平成250314日東京地方裁判所[平成23()33071]
被告書籍の第3章は,原告の著作物又はこれを原著作物とする二次的著作物を含むところ,被告らは,被告書籍の発行に際し,原告の同意を得ることなく,被告書籍に原告の氏名を著作者名として表示しなかったことが認められるから,被告らは,原告の氏名表示権を侵害するものと認められる。
被告らは,被告書籍の参考文献欄等に原告の氏名を表示したと主張する。被告書籍において,原告の氏名は,あとがき欄には協力者として,参考文献欄には参考文献である原告書籍の著者として,それぞれ表示されていることが認められるが,氏名表示権は,「著作者名として」表示し,又は表示しないこととする権利であるから(著作権法191項),協力者や参考文献の著者として表示されるだけでは足りない。被告らの上記主張は,採用することができない。

[公衆への提供・提示]
▶令和2721最高裁判所第三小法廷[平成30()1412]
著作権法19条1項は,文言上その適用を,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用により著作物の公衆への提供又は提示をする場合に限定していない。また,同法19条1項は,著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するものであると解されるが,その趣旨は,上記権利の侵害となる著作物の利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。そうすると,同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。したがって,本件各リツイート者が,本件各リツイートによって,上記権利の侵害となる著作物の利用をしていなくても,本件各ウェブページを閲覧するユーザーの端末の画面上に著作物である本件各表示画像を表示したことは,著作権法19条1項の「著作物の公衆への提示」に当たるということができる。

平成250620日大阪地方裁判所[平成23()15245]
原告は,本件動画の「公衆への提供若しくは提示」に際し,原告の変名である「P2」を無断で使用し,原告の氏名表示権を侵害した不法行為が成立する旨主張する。しかし,被告は,本件動画へのリンクを貼ったにとどまり,自動公衆送信などの方法で「公衆への提供若しくは提示」(法19条)をしたとはいえないのであるから,氏名表示権侵害の前提を欠いている。

▶平成27327日東京地方裁判所[平成26()7527]
被告B論文は,そもそも公表されておらず,公衆に提供ないし提示されたものではないから,そこに原告論文の著作者名が表示されていないとしても,それによって原告の氏名表示権が侵害されたということはできない。

平成220226日東京地方裁判所[平成20()32593]
被告らが設置する図書館等において本件韓国語著作物を所蔵する行為は,「著作物の公衆への提供若しくは提示」(著作権法191項)に当たらず,氏名表示権を侵害することはない。

平成31325日大阪地方裁判所[平成30()2082]
著作物又は二次的著作物の「公衆への提供又は提示」とは,特定多数の者に提供又は提示することも含む(著作権法2条5項)が,本件記録ビデオが被告P2らの挙式及び披露宴の様子を収録したものであることからすると,仮に被告らが本件記録ビデオを複製するおそれがあるとしても,被告○○が複製物を提供する相手として現実的に想定し得るのは被告P2らに限られ,3年以上前に挙式等を行った被告P2らが複製物を提供する相手として現実的に想定し得るのも肉親くらいであり,被告P2らが今後SNSサービスに投稿するおそれがあるとも認められないから,被告らが特定多数の者に対してであっても本件記録ビデオを複製し,頒布するおそれがあるとは認められない。
したがって,被告らが原告の氏名表示権を侵害するおそれがあるとは認められない。

平成3082日東京地方裁判所[平成30()8291]
氏名表示権(著作権法19条1項)は,著作者が原作品に,又は著作物の公衆への提供,提示に際し,著作者名を表示するか否か,表示するとすれば実名を表示するか変名を表示するかを決定する権利である。
本件表示[注:被告ホームページに掲載された,Bのプロフィールや活動内容等の表示のことで,当該被告ホームページにおいて,本件各書籍の具体的な表現が掲載されているものではなく,また,その内容が提供されているものではない。]は,Bの活動等を紹介する記事中の「主な著書」との見出しに続けて,本件各書籍等のタイトル及び出版社を表示し,その表示に続けて,本件書籍1については「(全面指導解説)」,本件書籍2については「(全面指導解説,DVD全面出演指導)」と表示するものである。被告ホームページにおいて,本件各書籍の具体的な表現が掲載されたり,その内容が提供されたりしているものではない。被告ホームページのこのような内容に照らせば,著作物である本件各書籍につき,被告ホームページにおいて公衆への提供,提示がされているとはいえないから,本件表示は,著作物(本件各書籍)の公衆への提供,提示に際してされたものということはできない。また,本件表示は本件各書籍の原作品における表示と関係するものではない。
したがって,仮に原告が本件各書籍の著作者であるとしても,本件表示は,本件各書籍に係る原告の氏名表示権を侵害するものではない。

[原著作物の著作者名]
平成140906日東京高等裁判所[平成12()1516]
被控訴人が控訴人Aの意に反して甲曲を改変した乙曲を作曲した行為は、同控訴人の同一性保持権を侵害するものであり、さらに、同控訴人が甲曲の公衆への提供又は提示に際しその実名を著作者名として表示しているところ、被控訴人は、乙曲を甲曲の二次的著作物でない自らの創作に係る作品として公表することにより、同控訴人の実名を原著作物の著作者名として表示することなく、これを公衆に提供又は提示させているものであるから、この被控訴人の行為は、同控訴人の氏名表示権を侵害するものである。

平成27225日東京地方裁判所[平成25()15362]
原告は,被告各番組において原作者として原告の氏名が表示されていないとして氏名表示権侵害を主張するところ,被告各番組のエンドロールで,「参考文献 X著『田沼意次 主殿の税』」,「参考文献 X著『開国 愚直の宰相堀田正睦』」,「参考文献 X著『調所笑左衛門 薩摩藩経済官僚』」と表示されていたことが認められる。
上記各表示は,原告各小説と併せて「X著」と表示して,その著者が原告であることをその実名の表示をもって示しているものと認めることができる。
そして,「参考文献」との記載によって,被告各番組が原告各小説に依拠して制作されたことは明らかであるから,被告各番組は原告各小説の二次的著作物に該当すると認められるところ,上記各表示は,「その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示」(著作権法19条1項後段)に該当するものと認められる。

[その他]
平成130920日東京地方裁判所[平成11()24998]
原告の単独の著作物である本件著作物につき,被告○○との共同著作物であるかのような表示を付して本件出版物として出版した行為は,原告の氏名表示権を侵害したものというべきである。

平成27106日 知的財産高等裁判所[平成27()10064]
氏名表示権を規定する著作権法19条は,著作者の著作物に表現された思想が独創的であることを要件としておらず,独創性の程度によって,著作物との関連が明らかではないような氏名の表示方法が許容されると解すべき根拠はない。

▶平成28623日東京地方裁判所[平成26()14093]
平成23年度及び平成24年度の理科学習ノート・3年生に,原告の作成したイラスト類が使用されていないのに,イラスト作成者として原告の氏名が表示されたことは当事者間に争いがない。これは被告らの過失による原告の氏名権侵害の共同不法行為であり,原告はこれにより無形損害を被ったと認められる。

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