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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

氏名表示権192項の意義と解釈

平成181019日知的財産高等裁判所[平成18()10027]
控訴人は,被控訴人らにおいて,12年度資料を複製した13年度資料及び14年度資料を使用した際,Bの氏名を表示して控訴人の氏名を表示しなかったものであり,控訴人の氏名表示権を侵害した旨主張する。しかし,12年度資料の表紙に講師名として記載されている控訴人の氏名の表示は,あくまでも当該維持講習の講師名を表示するものであって,12年度資料の著作名義を表示するものとはいえない。氏名表示権の,著作者名を表示するかしないかを選択する権利であるという側面からみた場合,控訴人は,12年度資料について,少なくとも,控訴人の氏名を著作者名として表示しないことを選択しているものと解される。そうすると,13年度資料及び14年度資料に講師名としてBの氏名を付するとともに,その他は,12年度資料及び同資料を含む講習資料集と同様の表示をして,平成13年度及び平成14年度の維持講習の講習資料集を作成し,使用することは,著作者名を表示しないこととした控訴人の措置と同様の措置をとっていることになるから,著作者名の表示に関する控訴人の当時の意思に反するものではなく,控訴人の氏名表示権を侵害するものとはいえないと解するのが相当である。したがって,氏名表示権の侵害をいう控訴人の主張は,理由がない。

平成30221日東京地方裁判所[平成28()37339]▶平成30823日知的財産高等裁判所[平成30()10023]
被告は,本件各映像を本件映画に使用するに際し,原告の名称を表示しないことは,「すでに著作者が表示しているところ」に従ってしたものであり,著作権法19条2項により許容されると主張する。
しかし,著作権法19条2項は,「著作物を利用する者は,…その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。」と規定し,著作者名を表示する場合に,その表示として,既に著作者が表示した名称等を用いることを許容するにすぎず,同条3項において著作者名の表示を省略できる場合が規定されていることからしても,著作者名を表示しないことを正当化する規定ではないと解される。
[控訴審同旨]
控訴人は,氏名の不表示は当該著作物を無名のままにするという著作者の積極的な意思表示であり,著作権法19条2項の解釈としても,「無名の著作物については,その著作者において氏名を表示しないこととする権利を行使したものと考えられるから,その著作物を利用するに際しては…無名の著作物として利用すれば足りる。」と解されている(から,本件映画に被控訴人の名称を表示しなくても氏名表示権侵害は成立しない)と主張する。しかしながら,本件においては,そもそも被控訴人が本件各映像を無名の著作物として公表することを選択した事実,すなわち,本件各映像について著作者名を表示しないこととする権利を積極的に行使した事実を認めるに足る証拠はない。したがって,本件各映像が無名の著作物であるとの前提自体が失当であるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の主張は採用できない。

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