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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作者人格権▶法60条の意義と解釈

▶平成150611日東京地方裁判所[平成15()22031]
著作者人格権は一身専属の権利であり,本来,著作者が存しなくなった後においてはその保護の根拠が失われるものであるが(法59条),著作権法は,著作者が存しなくなった後においても,一定の限度でその人格的利益の保護を図っている(法60条)。

[著作者人格権の侵害となるべき行為]/[著作者の意を害しない]
▶平成111018日東京地方裁判所[平成10()8761]
本件各手紙が掲載された本件書籍を出版した被告らの行為は、本件各手紙に係る原告らの複製権を侵害する行為に該当し、また、「Gが生存しているとしたならばその公表権の侵害となるべき行為」(著作権法60条)に該当する。
[控訴審同旨]
▶平成120523日東京高等裁判所[平成11()5631]
本件各手紙が、もともと私信であって公表を予期しないで書かれたものであることに照らせば(例えば、本件手紙⑮には、「貴兄が小生から、かういふ警告を受けたといふことは極秘にして下さい。」との記載がある。右のような記載は、少なくとも書かれた当時は公表を予期しない私信であるからこそ書かれたことが明らかである。)、控訴人ら主張に係るその余の事情を考慮しても、本件各手紙の公表がF[注:原審のGのこと]の意を害しないものと認めることはできない。

▶平成120830日東京地方裁判所[平成11()29127]
被告が本件雑誌に掲載した本件広告は、本件エスキース[注:「エスキース」とは「建築家が建築物を設計するに当たり、その構想をフリーハンドで描いたスケッチ」のこと]が、その色調の濃度を大幅に薄くした上で、A4版の頁全面にわたって下絵として使用され、その上に、本件書籍に関する広告(書籍の題号、紹介文、構成、内容の要約、企画者、監修者の表示、定価、注文方法等)が頁全面にわたって重ねて印刷されていることが認められる。
被告の右行為は、本件エスキースの表現を大幅に改変したものというべきであるから、著作者が存しているとするならばその同一性保持権の侵害となるべき行為に当たる。
[控訴審同旨]
▶平成130918日東京高等裁判所[平成12()4816]
本件エスキースの全面に広告を重ねて印刷して公表する行為は,これが著作者の承諾なくなされた場合,著作者にとって,いわば自己の作品の全面に無断で落書きされたに等しいものであるから,著作者に著しい不快感を与えることは明白であり,著作権法60条ただし書にいう「当該著作者の意を害しないと認められる場合」に該当しないことが明らかである。

▶平成140228日東京高等裁判所[平成12()5295]
本件書籍の160頁には、本文中に、デール・カーネギー自身が読者に直接話しかける形で、「このようなノウハウを皆さんにお伝えして本当にうれしいのは、全国のさまざまな人々から『成功ノウハウ』を家庭や職場で利用して成果をあげている、という手紙をいただくことです。このような私の紹介するノウハウを使って、こんないいことがあったということがありましたら、その経験を手紙でお寄せ下さい〔日本での宛先…SSI D・カーネギー・プログラムス係〕。」との記載があること、上記記載は本件著作物中には存在しないこと、以上の事実が認められる。この「SSI D・カーネギー プログラムス」は、被告○○が本件カセットテープセットの販売事業について使用している名称であり、故デール・カーネギーとは何の関係もないから、かかる者への読者体験談募集のために前記のごとき記載を付け加えることは、故人の意に反する態様でなされた原著作物の改変であり、著作者であるデール・カーネギーが生存しているとしたならば、その著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為(著作権法60条違反)であるといわざるを得ない。

▶平成150611日東京地方裁判所[平成15()22031]
著作者人格権は一身専属の権利であり,本来,著作者が存しなくなった後においてはその保護の根拠が失われるものであるが(法59条),著作権法は,著作者が存しなくなった後においても,一定の限度でその人格的利益の保護を図っている(法60条)。
この場合において,著作権法60条但書は,著作物の改変に該当する行為であっても,その行為の性質及び程度,社会的事情の変動その他によりその行為が著作者の意を害しないと認められる場合には,許容されることを規定している。
そして,著作者の意を害しないという点は,上記の各点に照らして客観的に認められることを要するものであるところ,本件においては,本件工事は,公共目的のために必要に応じた大きさの建物を建築するためのものであって,しかも,その方法においても,著作物の現状を可能な限り復元するものであるから,著作者の意を害しないものとして,同条但書の適用を受けるものというべきである。
したがって,仮に本件工事について著作権法2022号が適用されないとしても,同法60条但書の適用により,本件工事は許容されるというべきである。

▶平成210528日東京地方裁判所[平成19()23883]
本件原観音像は,木彫十一面観音菩薩立像であって,11体の化仏が付された仏頭部,体部(躯体部),両手,光背及び台座から構成されているところ,11体の化仏が付された仏頭部が,著作者であるEの思想又は感情を本件原観音像に表現する上で重要な部分であることは明らかである。
そうすると,本件原観音像の仏頭部のすげ替えは,本件原観音像の重要な部分の改変に当たるものであって,Eの意に反するものと認められるから,本件原観音像を公衆に提供していた被告○○寺による上記仏頭部のすげ替え行為は,Eが存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為(著作権法60条本文)に該当するものと認めるのが相当である。

▶平成230304日東京地方裁判所[平成21()6368]
本件書籍の題号[注:本件書籍は,「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出したもので,その題号は「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」であった]は,「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」であり,「生命の實相<黒布表紙版>」第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の「第1章古事記講義」の篇名及び章名と一致していないが,「甦る」の2文字が加わったこと以外は,使用されている用語も同一で,これを並べ替えたものであることに照らすならば,本件②の書籍1を上記題号とすることは,亡Aが存命であれば,その意に反する題号の改変には当たらないものと認められる。
総合すれば,亡Aを著作者とする「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の中の「第1章古事記講義」の部分について,題号を「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」として本件書籍を出版することは,「亡Aの意を害しない」(著作権法60条ただし書)ものと認められる。

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