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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作者人格権▶法116条の意義と解釈

▶平成130130日東京地方裁判所[平成6()11425]
著作者の死後における人格的利益の保護に関する規定である著作権法116条は、著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を期するため、著作者の人格と親密な関係を有し、その生前の意思を最も適切に反映することができると考えられるその配偶者若しくは二親等内の血族又は著作者の遺言で指定された者が、その著作者人格権の侵害となるべき行為に対し、差止請求権又は名誉回復等措置請求権を行使し得ることとしている。そして、著作者人格権が、もともと著作者の一身に専属し、譲渡することができない権利であること(著作権法59条)からすれば、著作権法116条に定める遺族等以外の者は、著作者の死後において著作者人格権を保護するための措置を執ることはできないことはもちろん、その人格的利益の保護を求めることもできないと解するのが相当である。

▶平成150611日東京地方裁判所[平成15()22031]
著作権法59条においては,「著作者人格権は,その性質上著作者の一身に専属し,譲渡することができない。」と規定され,著作者の死亡とともに著作者人格権は消滅し,著作者人格権は,譲渡や相続の対象とならない性質のものであることが明確に示されており,これを前提とした上で,著作者の死後における人格的利益の保護を可能にするため,同法60条により,著作者の死後において,著作者が生存しているとしたならば,その著作者人格権の侵害となるべき行為が禁止され,かつ,同法116条において,同法60条に違反する行為等の侵害行為に対し,著作者の人格と密接な関係があり,著作者の生前の意思を最も適切に反映し得る者が差止請求権等を行使し得るものとされているのであるから,著作者死亡後における著作者人格権は,同法116条において認められた者が上記請求権等を行使するという限りで保護されるにすぎない。そして,同条1項は,著作者の遺族(死亡した著作者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹)が上記請求権を行使し得るものとし,同条3項には,「著作者又は実演家は,遺言により,遺族に代えて第1項の請求をすることができる者を指定することができる。」と規定されていることからすれば,著作者の遺族以外の者は,著作者の遺言による指定を受けることによってのみ,上記の請求権を行使することが可能になる。

▶平成120512日東京地方裁判所[平成10()16632]
著作者の遺族には著作者人格権侵害による損害賠償請求権は認められないところ(著作権法1161項)、Dの遺族である原告にはDの氏名表示権侵害による損害賠償請求権が認められる余地はない(。)

▶平成120929日東京地方裁判所[平成10()21141] 著作権法は、著作権法60条違反の効果として、差止めと名誉回復等の措置のみを認めており、損害賠償請求は認めていないから、原告は、著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為が存したことを理由として、被告らに対して損害賠償請求をすることはできない。

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