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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

二次的著作物▶二次的著作物性一般②(連載漫画/ストーリー原稿がある漫画/模写作品/復原画/訓読文)

[連載漫画]
▶平成9717最高裁判所第一小法廷[平成4()1443]
連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができるから、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。

[ストーリー原稿がある漫画]
▶平成131025最高裁判所第一小法廷[平成12()798]
本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができる(。)

[模写作品]
▶平成180323日東京地方裁判所[平成17()10790]
「模写」とは,「まねてうつすこと。また,そのうつしとったもの。」(岩波書店「広辞苑」参照)を意味するから,絵画における模写とは,一般に,原画に依拠し,原画における創作的表現を再現する行為,又は,再現したものを意味するものというべきである。したがって,模写作品が単に原画に付与された創作的表現を再現しただけのものであり,新たな創作的表現が付与されたものと認められない場合には,原画の複製物であると解すべきである。これに対し,模写作品に,原画制作者によって付与された創作的表現とは異なる,模写制作者による新たな創作的表現が付与されている場合,すなわち,既存の著作物である原画に依拠し,かつ,その表現上の本質的特徴の同一性を維持しつつ,その具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得することができると同時に新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には,これは上記の意味の「模写」を超えるものであり,その模写作品は原画の二次的著作物として著作物性を有するものと解すべきである。
機械や複写紙を用いて原画を忠実に模写した場合には,模写制作者による新たな創作性の付与がないことは明らかであるから,その模写作品は原画の複製物にすぎない。また,模写制作者が自らの手により原画を模写した場合においても,原画に依拠し,その創作的表現を再現したにすぎない場合には,具体的な表現において多少の修正,増減,変更等が加えられたとしても,模写作品が原画と表現上の実質的同一性を有している以上は,当該模写作品は原画の複製物というべきである。すなわち,模写作品と原画との間に差異が認められたとしても,その差異が模写制作者による新たな創作的表現とは認められず,なお原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在し,原画から感得される創作的表現のみが模写作品から覚知されるにすぎない場合には,模写作品は,原画の複製物にすぎず,著作物性を有しないというべきである。
(略)
著作権法は,著作者による思想又は感情の創作的表現を保護することを目的としているのであるから,模写作品において,なお原画における創作的表現のみが再現されているにすぎない場合には,当該模写作品については,原画とは別個の著作物としてこれを著作権法上保護すべき理由はないというべきである。したがって,原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在する場合には,模写制作者が模写制作の過程においてどのように原画を認識し,どのようにこれを再現したとしても,あるいは,模写行為自体に高度な描画的技法が採用されていたとしても,それらはいずれもその結果として原画の創作的表現を再現するためのものであるにすぎず,模写制作者の個性がその模写作品に表現されているものではない。

[復原画]
▶平成241226日東京地方裁判所[平成21()26053]
原告仏画は,いずれも国宝又は重要文化財として指定されている仏画又は曼荼羅を原図とし,これを復原する意図で制作されたものであり,F氏が,既存の著作物である原図1ないし10に依拠し,各原図においてその制作者により付与された創作的表現を,その制作当時の状態において再現・再製するべく制作したものであると認められる。
そうすると,原告仏画において,各原図の制作者によって付与された創作的表現ないし表現上の本質的特徴が直接感得できることは,当然に予定されているものというべきであるところ,これに加えて,原告仏画に,各原図における創作的表現とは異なる,新たな創作的表現が付加されている場合,すなわち,復原過程において,原図の具体的表現に修正,変更,増減等を加えることにより,F氏の思想又は感情が創作的に表現され,これによって,原告仏画に接する者が,原告仏画から,各原図の表現上の本質的特徴を直接感得できると同時に,新たに別の創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には,原告仏画は,各原図の二次的著作物として著作物性を有するものと解される。その一方で,原告仏画において,各原図における具体的表現に修正,変更,増減等が加えられているとしても,上記変更等が,新たな創作的表現の付与とは認められず,なお,原告仏画から,各原図の制作者によって付与された創作的表現のみが覚知されるにとどまる場合には,原告仏画は,各原図の複製物であるにとどまり,その二次的著作物としての著作物性を有することはないものと解される。
なお,原告仏画の復原画としての性質上,原告仏画において,各原図の現在の状態における具体的表現に修正等が加えられているとしても,上記修正等が,各原図の制作当時の状態として当然に推測できる範囲にとどまる場合には,上記修正に係る表現は,各原図の制作者が付与した創作的表現の範囲内のものとみるべきであり,上記修正等をもって,新たな創作性の付与があったとみることはできない。
原告らは,原告仏画の創作性に関し,F氏の復原手法が独自のものである旨主張する。しかし,原告仏画の著作物性については,上記でみたとおり,原告仏画において,各原図の制作者によって付与された創作的表現とは別の創作性が,具体的表現として表れているか否かによって検討するべきであり,独自の復原手法を採用した結果として,F氏の個性が原告仏画の具体的表現において表出していれば別論,手法の独自性から,直ちに原告仏画の創作性が導かれるものではない。

[訓読文]
▶昭和570308日東京地方裁判所[昭和51()8446]
和臭の変体漢文を訓読するについては、原典が成立した年代、その時代の用語、文法、当時の政治的、経済的、社会的背景、原著作者の地位身分、写本成立の年次、その伝来の系統、写本作成者の学殖等原典の文意を解釈するについての諸条件を考究し、この研究の結果から訓読者が解釈した原典の文意を、あるいは原典の成立した時代の読み方に近付けて書き表わし、あるいは現代人に理解できる文章に書き改めることが必要であるが、この作業の各々について、訓読者各自の諸般にわたる学識、文章理解力、表現力の差異等により、訓読者各自の個性の表現ともいうべき異なつた結果が生じるものであり、本件訓読文は、これに先立つて公表されている「将門記」についての他の訓読文と比較すれば、幾多の点で相違し、原告の学識経験に基づく独自の訓読文として完成されている。
右認定の事実によれば、本件訓読文は、「真福寺本」による「将門記」を原著作物とし、その内面形式を維持しつつ、原告の創意に基づきこれに新たな具体的表現を与えたものであつて、著作権法2条第111号の規定にいう著作物を翻案することにより創作した著作物に該当すると解して何の差支えもない。

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