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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

複製権又は翻案権の射程範囲▶個別例③(編曲の射程範囲)

▶令和498日東京地方裁判所[令和3()3201]▶令和5420日知的財産高等裁判所[令和4()10115]
本件編曲行為による原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)侵害の成否について
(1) 前記のとおり、本件楽曲[注:ロールプレイングゲーム「幻想水滸伝」「幻想水滸伝Ⅱ」に使用されている楽曲をアレンジしたもの]は、被告Aにより、原告楽曲を素材としてその譜面が作成されたものであるから、原告楽曲に依拠して作成されたものと認められる。
また、本件楽曲が原告楽曲の表現上の本質的特徴と同一性を有するものであることは、当事者間に争いがない。
さらに、ゲーム内で利用されている原告楽曲と基本的にオーケストラによる演奏を想定した本件楽曲との性質ないし内容等の相違に照らすと、被告Aは、本件楽曲の譜面の制作に際し、原告楽曲を、その表現上の本質的特徴との同一性を維持しつつもオーケストラ演奏に適した旋律に変更し、オーケストラを構成する楽器の選択やアレンジ手法、演奏人数等に創意工夫を凝らすことで、原告楽曲に新たな創作性を付加したものとするのが相当である。
以上によれば、本件楽曲は原告楽曲を翻案したものであり、本件編曲行為は、原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)を侵害するものと認められる。
(2) これに対し、被告らは、本件楽曲の譜面の作成は「検討の過程における利用」(法30条の3)であることや、その作成作業がCLASSICAL社の用意した日本国外のサーバー上で行われたこと、イスラエル著作権法32条により本件編曲行為は著作権者の許諾を必要としないことなどから、本件編曲行為は原告の翻案権を侵害しない旨を主張する。
しかし、前記認定に係る原告に対する原告楽曲の使用許諾申請の経過に加え、これと本件楽曲のピアノ演奏及びオーケストラ演奏の録音作業が同時進行で行われたこと、その際に録音されたピアノ演奏及びオーケストラ演奏が本件楽曲の演奏として本件CDに収められて譲渡ないし配信されたこと、本件編曲行為は、原告楽曲の再製(複製)にとどまらず、これに新たな創作性を付加したものといえることを踏まえると、本件楽曲の譜面作成が「検討の過程における利用」として行われたものとは考え難い。
また、そもそも譜面の作成作業が日本国外のサーバー上で行われたことを認めるに足りる的確な証拠はない。その点を措くとしても、少なくとも、被告Aは、譜面の作成作業を日本国内で行なったのであるから、本件編曲行為は日本国内で行われたものと見るのが相当である。そうである以上、イスラエル著作権法の規定のいかんにかかわりなく、本件編曲行為は原告の翻案権を侵害するものといえる。
その他被告らが縷々主張する事情を考慮しても、この点に関する被告らの主張は採用できない。
[控訴審同旨]
() 控訴人らは、ピアノの演奏の録音や譜面の検討に、国外のサーバーが用いられたもので、それゆえそれらは国外で行われた旨を主張するが、収録行為や譜面の作成のための機器の操作が国内で行われたと認められる以上、単にそれらの記録に係るサーバーが国外にあったということをもって、本件編曲行為や本件録音・複製行為が国外で行われたということはできないというべきである。

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