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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物の侵害性▶個別事例⑥(おみくじ/ブログ記事/動画テロップ)

[おみくじ]
▶令和3126日東京地方裁判所[平成31()2597]
(1)著作権侵害について
本件文書1,本件文書2及び本件文書3は,それぞれ別紙文書目録記載のとおりであり,いずれも,100種類の個別のおみくじからなり,個別のおみくじは,いずれも,「開運推命おみくじ」との記載の後に,1から100までの番号(数字)の後,運勢全般や注意すべき事項等の説明,金運その他の個別の運勢の説明等が記載されている。いずれの番号のおみくじにおいても,運勢全般(総合運勢)についての説明がある程度の長さのまとまりのある文章で記載されるほか,原則として,金運,事業運,仕事運,学業運,健康運,家庭対人運,異性運等についての簡単な説明が記載されている。そして,本件文書1,本件文書2及び本件文書3において,同じ番号のおみくじに記載されたそれぞれの運勢等の説明は,その内容だけでなく表現もほぼ同一である。他方,文字の字体やおみくじの体裁は異なる。
ここで,本件文書1と本件文書2及び3の作成時期,共通点の程度及び内容に照らせば,本件文書2及び3は,本件文書1に依拠して作成されたものと認められる。
そして,上記の共通する運勢等の説明について,本件文書1と,本件文書2及び3の個別のおみくじの表現は,ほとんどが同一であり,本件文書1における具体的表現に修正,増減,変更が加えられている箇所を見ても,それらは文末の表現を整えたり,ひらがなを漢字に改めたりするなどの軽微かつ形式的な変更にすぎないものか,本件文書1と同じ文章に対して趣旨を分かりやすく伝えるために短い語句等を挿入,付加するなどしたものである。また,本件文書1と本件文書2及び3において,個別の運勢の説明について付加,変更されたものもあるが(本件文書2及び3の20番における学業運を示す説明の追加と本件文書3の86番のおける異性運について反対の内容の説明),これらの付加,変更はいずれもありふれた表現の短いものである。
以上によれば,本件文書2及び3は,本件文書1の創作性ある該当部分を有形的に再製するものであるといえ,本件文書2及び3を作成する行為は,原告の複製権を侵害するものであると認められる。
(2)著作者人格権侵害について
本件文書1の20番の個別の運勢の記載において,学業運に関する記載はないのに対し,本件文書2及び3の20番には学業運についての記載があり,本件文書1の86番の個別の運勢の記載について,異性運として「男性は順調に整います。女性は良縁に恵まれます。」と記載されているのに対し,本件文書3の86番には異性運について,「男性は苦情が生じやすい。女性はまとまりにくい。」と記載されている 。
上記の表現の相違は,本件文書1の20番,86番の表現に改変を加えたものと認められるから,本件文書2及び3の20番,本件文書3の86番を作成する行為は,本件文書1の著作者である原告が有する著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものと認められる。

[ブログ記事]
▶令和3325日大阪地方裁判所[令和2()12433]
原告記事は,不登校となり,また不登校から脱した生徒の体験談,不登校となった生徒らに対応する際の親や教師の留意点や有益な情報その他をウェブ記事,ブログ記事の形式で記載したものであり,思想を創作的に表現した文芸又は学術の著作物にあたると認められる。
(略)
前記で検討したところによれば,本件投稿記事No1は,原告記事No1ないし4よりも後に投稿されたものであるところ,改行の仕方,行間隔の空け方,あるいは写真の挿入の有無といった相違点があることから,外見上異なった印象を生じさせるものであるが,このような点に格別の創作性を認めることはできず,むしろ全体の構成及び論述の順序が同じであり,見出し及び内容となる文章について,若干の差異は存するものの,大部分が同一であることから,本件投稿記事No1は,原告記事No1ないし4に依拠してこれを複製したものと認めるのが相当である。

[動画テロップ]
▶令和396日大阪地方裁判所[令和3()2526]
著作権侵害の成否について
(1) 本件テロップと本件記事の各内容を比較すると,本件記事には本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれる。他方,相違する部分は,句読点の有無や助詞の違い,文言の一部省略等の僅かな相違のほか,例えば,次のような相違部分が存在する。これらの相違部分は,表現の手法等に若干の違いが見られるものの,内容的には,本件テロップの表現を若干修正したり,要約又は省略したり,前後の表現を入れ替えるなどしているにとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものといえる。
① 本件テロップ:「ドイツ出身のヴァレンティンさんは幼い頃からずっと動物を大切に思ってきました。」
本件記事:「この感動のストーリーは2人の人間から始まります。その1人がヴァレンティンさん。ヴァレンティンさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切25 に思ってきました。」
② 本件テロップ:「2人はボツワナで自然保護プロジェクトを立ち上げました。野生動物の保護を目的とするプロジェクトです。」
本件記事:「2人はボツワナで野生動物の保護を目的とする自然保護プロジェクトを立ち上げました。」
③ 本件テロップ:「メスのライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
本件記事:「そのメスの幼いライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
④ 本件テロップ:「けれどシルガにとって,人間に慣れてしまう事は危険な事です。」
本件記事:「しかし,人間に慣れてしまってはいけません。」
⑤ 本件テロップ:「そう決めた2人は決して他の人間をシルガと交流させたりしませんでした。」
本件記事:「他の人間とは交流させませんでした。」
⑥ 本件テロップ:「2人は本当にシルガの為を思い,幸せを願っていたのです。」
本件記事:「2人はシルガの幸せ,野生に戻る事を1番に考えていました。」
⑦ 本件テロップ:「ヴァレンティンさんとミッケルさんは,シルガの世話をするだけでなく狩りの仕方も教えます。」
本件記事:「2人は世話だけでなく,狩りの仕方も教えます。」
⑧ 本件テロップ:「何度も何度も練習を重ね,ようやくシルガが獲物を狩る事が出来るようになった頃,2人は複雑な気持ちに襲われはじめていました。」
本件記事:「狩りの練習を何度も練習を重ね,ようやくシルガは獲物を狩る事が出来る様になった頃,2人は複雑な気持ちになりました。」
⑨ 本件テロップ:「そしてシルガは予想を上回る反応を示します。」
本件記事:「そこで予想を超える事に。」
⑩ 本件テロップ:「ずっとヴァレンティンさんに会えずに寂しく思っていた事が,その表情から伝わります。」
本件記事:「ずっとヴァレンティンさんに会えず,さみしかった事が分かります。」
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解される。また,翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決参照)。
本件記事は,記事中に本件動画が埋め込まれていることや,上記のとおり,本件テロップと完全に一致する表現を多数含み,相違する部分も,句読点の有無等の僅かな形式的な相違のほか,本件テロップの表現の僅かな修正,要約,前後の入れ替え等にとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると,本件テロップに依拠したものと認められると共に,著作物である本件テロップの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。
したがって,本件投稿は,少なくとも原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権を侵害する。

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