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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

賠償額の算定例▶法1143項事例①(アダルトビデオの違法アップロード)

▶平成30123日大阪地方裁判所[平成29()7901]
原告は,被告による上記著作権侵害行為により受けた損害の額を,本件著作物を適法に視聴する場合の最低料金を基準に,原告が本件著作物について利用許諾する場合の料率38%を乗じ,さらに被告アップロード著作物が「FC2アダルト」において再生された回数,すなわち公衆に自動送信された回数を乗じることにより,著作権法114条3項の規定に基づき請求している。
しかし,同項の規定に基づく損害額を算定するに当たり,利用許諾の料率を原告の通常の場合と同様の38%とし,被告アップロード著作物が「FC2アダルト」において再生された回数,すなわち公衆に自動送信された回数を用いることは適切であるが,本件著作物を適法に視聴する場合の最低料金を基準とすることは高きに失するというべきである(なお,著作権法114条3項の趣旨に照らし,被告アップロード著作物の視聴が無料である事情は,その再生回数をもって視聴が有料である本件著作物の損害額算定の根拠に用いることを妨げないものと解する。)。
すなわち,原告も予備的に主張するとおり,被告アップロード著作物はいずれも本件著作物の一部でしかなく,その収録時間は被告アップロード著作物1で本件著作物1の約37%,被告アップロード著作物2で本件著作物2の約14%,被告アップロード著作物3で本件著作物2の約27%にすぎない。また原告の主張する正規の利用料金を負担した場合,ストリーミングで1週間見放題になるというのであるから,正規の利用料金は,1週間という利用期間を前提に設定されているものであって,これを「FC2アダルト」における公衆への自動送信1回ごとの料金の基準とすることは合理的ではない。
したがって,上記事情を勘案すれば,被告の行為が原告に無断でなされたことを考慮したとしても,被告アップロード著作物の自動送信1回の損害額の基準となる額は,正規の利用料金に収録時間の割合を乗じ,さらにこれを3分の1とした額が相当であり,この計算によれば,被告アップロード著作物1については自動送信1回につき49円,被告アップロード著作物2については自動送信1回につき14円,被告アップロード著作物3については自動送信1回につき27円として算定するのが相当である。
以上より,著作権法114条3項に基づき原告の受けた損害の額を算定すると,以下のとおりであって合計85万6546円と認められる。
(被告アップロード著作物1)49円×38%×3万3019回=61万4813円
(被告アップロード著作物2)14円×38%×2万2533回=11万9875円
(被告アップロード著作物3)27円×38%×1万1877回=12万1858円
[控訴審も同旨]
▶平成30629日大阪高等裁判所[平成30()433]
著作権法114条3項は,平成12年の改正により,「通常受けるべき金銭」の「通常」の文言が削除された。これは,使用料額の認定において,一般的相場にとらわれることなく,訴訟当事者間の具体的事情を考慮した妥当な使用料額が認定できることを明確にしたものである。
控訴人は,上記改正の経緯に照らすと,原判決の損害額算定方法は相当でないと主張する。
本件著作物及び被告アップロード著作物はいずれも映画であるが,控訴人が本件著作物の配信を許諾しているサイトでは,本件著作物の一部のみを視聴できるサービスを提供しており,単位時間当たり一定の対価の支払を受けている。そして,原判決のとおり,被告アップロード著作物はその一部であり,その収録時間は,被告アップロード著作物1で,本件著作物1の約37%であり,被告アップロード著作物2では,本件著作物2の約14%,被告アップロード著作物3では,本件著作物2の約27%にすぎない。
以上によると,本件著作物を自動公衆送信により得ることのできる金銭は,視聴できる時間(上映時間,ストリーミングの時間)に大きく影響されることが推認される。法改正の経緯は上記のとおりであるものの,被告アップロード著作物の配信1回につき,これに対応する本件著作物の1回分の使用料額をそのまま,本件著作物にかかる著作権等の行使につき受けるべき金銭とすることは相当とはいえない。
以上によると,配信した著作物の収録時間に応じて使用料相当額を算定するのが相当である。
また,本件の場合,本件著作物の利用者は,ストリーミングで1週間見放題になるというのであるから,本件著作物の配信を受ける対価は,1週間という利用期間を前提に設定されているものであって,これを「FC2アダルト」における公衆への自動送信1回ごとに対応する対価とすることは合理的でない。本件著作物の利用者が,1週間に数回視聴することを前提とし,更に3分の1を乗じるのが相当である。
以上のとおりで,著作権法114条3項の文言が改正された経緯を踏まえても,本件著作物にかかる著作権等の行使につき受けるべき金銭は,原判決に記載のとおり算定するのが相当である。

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