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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

賠償額の算定例▶法114条の5事例

▶令和3114日大阪高等裁判所[令和1()1735]
前記認定のとおり,原告作品は,平成12年から平成30年まで,美術展等で何度も展示された実績のある美術作品であるから,その展示について利用料が発生し得る著作物といえる。しかし,これらの展示において控訴人にいくらの利用料が支払われたのかに関する客観的な証拠は提出されておらず,また,原告作品に類する美術作品の利用料に関する証拠も一切提出されていない。一方,控訴人の著作権を侵害する被告作品が展示された期間は平成26年2月22日から平成30年4月10日まで4年以上の長期間に及ぶが,原告作品に類する美術作品が,所蔵品の展示とは異なり,利用料の発生する状況下で,このように長い期間に渡って同じ場所で展示されることはまれであると考えられるし,その場合の利用料がいかなるものであるかも,個々の事情によって大きく異なると考えられる。
また,前記認定のとおり,被告作品の展示方法について,控訴人と被控訴人らとの間で協議され,一旦は,平成29年8月21日以降,「金魚の電話ボックス『メッセージ』」と題する書面を掲示するようになったものの,納得のいかなかった控訴人から,同年12月28日,改めて,被控訴組合に対し協定書案を提出したところ,被控訴組合が上記提案を拒否し,平成30年4月10日,被告作品を撤去するに至ったという経緯がある。このような経緯に照らすと,協議の期間中,控訴人は,権利行使を控えていたということがいえる。
以上のことからすると,原告作品の過去の展示についての利用料に関する客観的な証拠が提出されたとしても,それに基づいた計算により本件における利用料相当額を認定することは困難である。
したがって,本件は,原告作品の利用料相当額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難な場合に当たるから(著作権法114条の5),原告作品の内容,性格を中心に,本件における全ての事情を考慮し,上記期間全体を通じた著作権(複製権)の侵害による利用料相当損害額を25万円と認定する。

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