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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

コンテンツ契約紛争事例コンテンツ契約の一般的留意点

[コンテンツ契約の非要式性]
▶平成180228日知的財産高等裁判所[平成17()10110]
少なくとも,控訴人主張の肖像権,プライバシー権,名誉権,著作権,パブリシティ権等に係る契約であれば,当事者の合意によって契約は成立し,契約書等の書面の作成は,契約成立の要件ではない。

[契約の成否]
平成28217日知的財産高等裁判所[平成27()10115]
本件共同事業は,本件合意書に基づくものであるところ,本件合意書に控訴人及び被控訴人のいずれも押印していない。したがって,控訴人と被控訴人とは,本件合意書の締結には至らなかったものと認められる。
そして,本件証拠上,ほかに,本件共同事業に関し,控訴人と被控訴人との合意の存在を直接裏付ける書面等の客観的な証拠は,存在しない。
(略)
このように,被控訴人は,当事者双方の捺印のある契約書に基づき,本件各作品を含むコンテンツを提供する契約を締結している。この点に鑑みれば,被控訴人において,それらのコンテンツ提供契約とは異なり,本件商品に関する著作権等の権利を共同で所有するという重要な事項を含む取引につき,それに関する合意の事実を明示する両者の捺印がされた書面等を取り交わすこともなく,合意に至ることは,考え難い。

[相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務]
▶平成140415日東京地方裁判所[平成13()22066]
被告○○は,本件出版契約において,被告△△から,「被告△△は,本著作物が他人の著作権その他の権利を侵害しないことを保証する。」との保証を得ていること(から),被告○○には,著作権侵害についての過失がない旨主張する。
しかし,被告○○が,被告△△との間に,上記のような保証を内容とする契約を締結していても,原告らが転載を許諾したか否かを調査,確認する義務を免れるものではないというべきであ(る。)

▶平成230711日東京地方裁判所[平成21()10932]
第三者が著作権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有しないのであれば,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできないのであるから,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用したときには,当該第三者に対する不法行為責任を免れないというべきである。

平成28216日東京地方裁判所[平成25()33167]
第三者が著作権や著作隣接権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有していなければ,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできない。
したがって,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用した場合,当該第三者に対する不法行為責任を免れないと解される。
これを本件についてみるに,被告○○は,本件再委託契約の締結時において,被告△△がレコード製作者及び実演家の各著作隣接権を有しないことを認識していたと認められるところ,被告○○らは,被告△△の利用許諾権限に疑義等を抱かしめるような事情はなかったと主張するのみで,被告○○において,著作隣接権者に問い合わせ,又は本件契約書を確認するなどの方法によって,本件CD及び本件楽曲についての被告△△の利用許諾権限を確認した等の主張はないし,証拠上もこうした事実を認めることはできない。
そうすると,被告○○は,本件CDの無断レンタルや本件楽曲の無断配信について少なくとも過失があると認められるから,原告に対し,被告△△らとの共同不法行為が成立する。

[不安の抗弁権]
▶平成190405日知的財産高等裁判所[平成18()10036]
継続的取引契約により当事者の一方が先履行義務を負担し,他方が後履行義務を負担する関係にある場合に,契約成立後,後履行義務者による後履行義務の履行が危殆化された場合には,後履行義務の履行が確保されるなど危殆化をもたらした事由を解消すべき事由のない限り,先履行義務者が履行期に履行を拒絶したとしても違法性はないものとすることが,取引上の信義則及び契約当事者間の公平に合致するものと解される。いわゆる不安の抗弁権とは,かかる意味において自己の先履行義務の履行が拒絶できることであると言うことができる。そして,後履行義務の履行が危殆化された場合としては,契約締結当時予想されなかった後履行義務者の財産状態の著しい悪化のほか,後履行義務者が履行の意思を全く有しないことが契約締結後に判明したような場合も含まれると解するのが相当である。

[違約金合意]
▶令和3324日東京地方裁判所[平成30()38486]▶令和31129日知的財産高等裁判所[令和3()10035]
本件違約金合意の公序良俗違反による無効の成否について
ア 被告会社は,本件違約金合意は,著しく高額な違約金を定めたものであり,公序良俗に反するものとして無効であると主張する。
しかしながら,当該合意がされた経緯を検討すると,前記のとおり,被告会社は,本件平成20年契約に違反して,ライセンス数を上回る多数の医師会の業務において継続的に本件プログラムを使用しており,前記のとおり,平成30年3月の本件新プログラムへの移行作業の際に,上記の被告会社の使用状況が原告に発覚したことで,本件平成30年契約においては,府中市医師会に加えて,契約の対象とする医師会が追加され,それとともに,本件違約金合意が締結されたものである。そうすると,本件違約金合意は被告会社による過去の不正使用を踏まえて,それを抑止するために設けられたものと解されるから,前記のとおり,被告会社による継続的な不正使用が長期間発覚しなかったことも考慮すれば,本件違約金合意を設ける必要性は高かったといえる。
また,本件違約金合意は,いずれも事業者である原告と被告会社とが,レンタル契約書において,被告会社が本件プログラムを使用できる医師会名を明示した上で,それ以外の医師会の利用については違約金支払義務が発生する旨を記載したものであって,合意内容とその違反の範囲は明確である。さらに,本件平成30年契約においては,前記前提事実のとおり,本件プログラムの使用に係る医師会を1か月単位で増減させることが可能であったから,被告会社において,本件違約金合意に反しないように本件プログラムを使用することに特段の障害はなかったといえる。
このような事情からすれば,本件違約金合意における違約金額が通常のライセンス料の10倍という額であったことを考慮しても,本件違約金合意が公序良俗に反するとはいえず,被告会社の上記主張は理由がない。
イ 被告会社は,被告会社が原告から提示された本件違約金合意を含む本件平成30年契約を締結するほかない状況にあったから,本件違約金合意は公序良俗に反するものであると主張する。
しかしながら,被告会社は,本件平成30年契約の内容に従って,必要とするライセンス数の契約を締結し,そのライセンス料を支払えば,本件プログラムを継続して使用することができたのであるし,被告Aは,本人尋問において,平成30年当時に本件プログラムと同様の機能を有するプログラムを外部に委託して開発することは可能であった旨も供述している。
これらに照らせば,被告会社において,本件違約金合意を含む本件平成30年契約を締結する以外に取り得る手段がなかったとは認められない。
したがって,被告会社の上記主張に係る事情は,前記アの結論を覆すに足りるものではない。
[控訴審同旨]

[印刷製本業者の印刷用データの再利用]
平成29112日大阪地方裁判所[平成27()718]
一般に,印刷・製本契約を締結した出版社と印刷業者との間では,印刷業者は,出版社の許諾を得ない限り,印刷用データの再利用をすることができないとの商慣行が存在していると認めるのが相当である。(中略)
以上を踏まえると,原告と被告○○印刷との間の原告書籍に関する印刷・製本契約では,上記の商慣行にのっとり,被告○○印刷は,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの黙示の合意がされたと認めるのが相当であり,そうでないとしても,被告○○印刷は,印刷・製本契約に付随して,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの義務を信義則上負うと解するのが相当である。

[キャラクター商品化における使用料率]
▶昭和510526日東京地方裁判所[昭和46()151]
漫画その他のキヤラクターを商品に使用することを許諾する契約において、その使用料はキヤラクターが使用される商品の販売価格の少なくとも3パーセントを下らない額で定められているのが業界の慣行であることが認められる(。)

[その他]
令和2220日知的財産高等裁判所[平成31()10033]
本件事案は,長期間にわたり契約関係にあった当事者が,必ずしも明確に定めてこなかった事柄が問題となり,それが原因となってパブリシティ侵害行為,著作権侵害行為及び不正競争行為(いずれも法的性質としては不法行為)として損害賠償等が請求されている,というものである。
そうすると,権利侵害の成否や損害額の算定の判断に当たっても,契約関係にない権利者と侵害被疑者との間の訴訟におけるものとは異なり,契約関係にあった当時の事情を踏まえた合理的な意思解釈が必要とされる。

平成26827日知的財産高等裁判所[平成25()10085]
一般に,作成者等の権利者において,プログラムを公開して誰もが無償でアクセスして使用できる状態にすること,すなわち,当該プログラムを無償で配布していわゆるフリーウェアとすることはあり得るものの,通常は,著作権についてまで放棄するものではなく,意に反して同プログラムが使用されることを防ぐために,変更や再配布の制限など同プログラムの使用等について何らかの条件を付すことが多いと解される。

平成30824日東京地方裁判所[平成27()34338]
原告会社は,被告会社が本件競業避止義務条項(本件ライセンス契約6条①)に基づき,競業避止義務を負う旨主張する。
しかし,本件営業譲渡契約は本件ライセンス契約に代えて締結されたものであるから,本件営業譲渡契約の締結に伴い本件ライセンス契約は合意解約されたものと解するのが相当であり,本件営業譲渡契約5条においても本件ライセンス契約を解約する旨が明示的に定められている。そして,本件営業譲渡契約が終了する場合の規律は,同契約終了時の当事者間の合意又は原状回復義務の範囲の問題であり,本件営業譲渡契約の終了に伴い,既に合意解約された本件ライセンス契約の効力が復活し,同契約16条の競業避止義務の規定が適用されると解すべき理由はない。
これに対し,原告会社は,本件ライセンス契約は,本件営業譲渡契約及び本件顧問契約という形態に変容したが,その実質は同一であるから,当事者の合理的な意思解釈として,本件営業譲渡契約が終了した場合には,本件ライセンス契約に基づく競業避止義務を負うと主張する。しかし,本件ライセンス契約と本件営業譲渡契約とはその法的性質を異にする別個の契約であり,実質的にみても,営業権や知的財産権の権利主体の変更を伴うものであるから,同一であるということはできず,また,本件営業譲渡契約が終了した場合に本件ライセンス契約と同一内容の効力が発生する旨の当事者間の黙示的な合意が存在したことをうかがわせる証拠も存在しない。
したがって,原告会社の本件ライセンス契約上の競業避止義務条項に基づく請求は理由がない。

▶令和348日大阪地方裁判所[平成30()5629]
被告会社による著作権侵害の成否
ア 被告会社原稿1~5及び7は,いずれも被告会社がリクルートに対して入稿して広告として掲載されたものである。
別紙原稿目録の各「原告原稿」欄記載の原告原稿の表現と,これに対応する「被告会社原稿」欄記載の表現とを対比すると,原告原稿1~5及び7につき創作性が認められる部分について,被告会社原稿1~5及び7は,原告原稿1~5及び7と同一又はほぼ同一の表現がされているものといってよい。このような同一性に加え,原告原稿1~5及び7が公刊物であるリクルート媒体に掲載されるものであることを踏まえれば,被告会社原稿1~5及び7は,上記原告原稿に依拠して作成されたものであると認められる。
したがって,被告会社による被告会社原稿1~5及び7の作成は,原告の著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)を侵害するものといえる。
イ これに対し,被告会社は,本件パートナー契約15条[(注)リクルートは,原告親会社及び被告会社等広告代理業務を行う広告代理店との間で販売パートナー契約(「本件パートナー契約」)を締結し,本件求人サービスに係る販売委託業務等を委託している。※著作物利用許諾(15条):受託業者は,受託業者又はその再委託先が,リクルート発行の求人情報誌の原稿及びその販促物を作成した場合,それらの原稿及び販促物について,リクルートが,上記求人情報誌,その転載先及びリクルートが作成する資料等に使用することについて了承する。]に基づき,ある広告代理店が他の広告代理店作成の求人広告原稿を流用してリクルートに入稿し,リクルートが当該原稿をリクルート媒体に掲載した場合でも,リクルートには著作権侵害行為が成立しないことを理由に,流用した側の広告代理店にも著作権侵害が成立しない旨主張する。しかし,上記規定の定める著作物使用許諾は,本件パートナー契約の当事者である広告代理店によるリクルートに対する許諾であって,他の第三者に対する使用許諾については何ら定められていない。また,その許諾によってリクルートの行為が著作権侵害とならないことと,流用した側の当該広告代理店の責任とは全く無関係の問題である。したがって,この点に関する被告会社の主張は採用できない。

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