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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

コンテンツ契約紛争事例▶紛争事例(専属的マネージメント契約(マネージメント専属契約))

令和41226日知的財産高等裁判所[令和4()10059]
1 前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(1) 本件契約書の記載
平成30年1月1日付けの本件契約書には、次の記載があり、末尾に一審被告会社代表取締役として一審被告Yの記名押印があり、「実演家グループ「A」」の記載があるとともに各実演家として一審原告らの署名押印がある。
「有限会社○○(以下「甲」という)と、実演家グループ「A」(各実演家:X1、X2、X3、X4、以下併せて「乙」という。)とは、以下のとおり専属契約を締結する(以下「本契約」という)。
第1条 乙は、実演家として、本契約に定める各条項に基づき甲の専属である事を約し、甲以外の為に、いかなる実演の為の交渉及び実演(以下「実演活動」という)を行わないものとする。
第2条 前項に定める「実演活動」とは以下のものをいう。
テレビ、ラジオ、映画等への出演、実演
コマーシャルフィルム、コマーシャルミュージックへの出演、実演
レコード(CD、MD、その他あらゆる音の固定物及びその複製物をいう)
及びビデオグラム(DVD、VHS、LD、ブルーレイディスク、その他あらゆる音及び映像、または映像の固定物及びその複製物をいう)への実演、出演
興行、コンサート、イベントへの出演、実演
出版物、書籍の出版を含む出演、執筆
作家としての活動(日本音楽著作権協会の規定に基づく)
乙関連のキャラクターグッズへの出演、名称、肖像等の使用
乙関連のファンクラブ、ファンサイトへの出演、名称、肖像等の使用
その他、上記各号に付帯する一切の芸能活動
第3条 甲は、本契約期間中、乙のマネージメントの一切を引き受け、その芸能活動が成果を収めるよう努力するものとする。」
「第5条 甲は、本契約期間中、広告・宣伝及び販売促進のため、乙の芸名、本名、写真、肖像、筆跡、経歴、音声等、その他の人格的権利を、甲の判断により自由に無償で利用開発することができる
第6条 本契約期間中に制作された原盤及び原版等に係る乙の著作権上の一切の権利(複製権、譲渡権、頒布権、上演権、上映権、送信可能化権、著作隣接権、二次使用料請求権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権を含む著作権上の一切の権利、所有権を含む)ならびに、乙に関する商標権、知的財産権、及び商品化権を含む一切の権利はすべて甲に帰属する。」
「第9条 契約期間及び解約期間終了後の措置は以下のとおりとする。
(1)本契約の有効期間は、平成30年1月1日より2年間とする。
(2)甲または乙が、本契約満了3ヶ月までに相手方に対して契約終了の意思表示をしない限り、本契約は自動的に2年間延長継続しその後も同様とする。
 ・・・
(5)実演家は、契約期間終了後6ヶ月間、甲への事前の承諾なく、甲以外の第三者との間で、マネージメント契約等実演を目的とするいかなる契約も締結することはできない。」
(略)
2 争点1(一審被告Yが本件要請をしたか)について
前記のとおり、一審被告Yが本件要請[注:一審被告Yは、ヴィジュアル系ポータルサイトに、本件グループが一審被告会社との間の本件専属契約を解除し、音楽活動を再開する旨を記載したニュースが掲載されたことに関し、同サイトを運営する株式会社の代表者である訴外Bに対し、電話で、「商標の話をまだしているところだから、とりあえず、一回取り下げてくれない」と強めに述べた(本件要請)]をし、これを受けて、訴外Bが、本件グループに係る記事の掲載を取りやめたことが認められる。
一審被告らは、前記の一審被告Yの発言について、一審原告らに関する発言ではないなどと主張するが、証拠によると、一審被告Yの発言は、本件グループの記事が掲載された後、同日中に訴外Bに対してされたものであり、訴外Bが、その時期や内容から、一審被告Yの発言が本件グループに関するものであると認識して一審被告Yと会話をしたこと、その上で、本件グループに係るニュース記事の掲載を取りやめたことが認められることからして、一審被告Yの上記発言は一審原告らに関するものであったと認めるのが相当である。
3 争点2(本件各通知及び本件要請は不法行為に該当するか)について
(1) 本件各通知及び本件要請について
本件各通知及び本件要請は、前記のとおりのものであって、これらの内容に、前記の本件専属契約終了前の一審被告Yの言動及び前記の本件専属契約終了後の一審被告らの行為を総合すると、一審被告Yは、本件条項により、本件専属契約終了後6か月間、一審原告らが本件グループとして活動をするためには一審被告会社の承諾が必要であり、本件グループ名について商標権又は排他的使用権を一審被告会社が有しており、本件写真の著作権は一審被告会社に帰属すると理解しており、本件専属契約終了の翌日である令和元年7月14日から同年11月11日までの間、一審原告らが本件グループとして活動することや、本件グループ名を使用することを禁止しようという強い意思を有し、その実現のために、本件各通知及び本件要請を含む一連の行動により、一審原告らの取引先又は取引先となる可能性のある関係者に対し、上記を伝えて、一審原告らの実演等の実現を妨げようとし、また、一審被告らの要望に従わない取引先に対しては、損害賠償請求をする意思があることまで示して、一審被告らの要望に従わせようとしていたものと認められる。
もっとも、一審被告らの理解による上記が事実であれば、その行使方法が相当性を超えるものでない限り、一審被告らの行為は正当な権利行使に当たり得ることから、以下、上記理解が事実といえるか検討する。
(2) 本件条項の有効性について
ア 前記(1)「本件条項により、本件専属契約終了後6か月間、一審原告らが本件グループとして活動をするためには一審被告会社の承諾が必要」であるとの理解は、本件条項が有効であることを前提とするものであるから、本件条項の有効性について検討する。
イ 本件条項は、前記のとおり、「実演家は、契約期間終了後6ヶ月間、甲(一審被告会社)への事前の承諾なく、甲以外の第三者との間で、マネージメント契約等実演を目的とするいかなる契約も締結することはできない。」とするものであり、一審原告らが、本件専属契約終了後6か月間、一審被告会社以外の者との間で実演を目的とする契約を締結することを、実質的に禁止するものである。本件専属契約における「実演」は、前記の本件契約書の第2条に規定されるもので、演奏活動以外にも、コマーシャルフィルムへの出演や、執筆、キャラクターグッズ関連の活動、ファンクラブやファンサイトに関する活動も含むものであって、一審原告らの実演家ないしアーティストとしての活動一般を広く含むものと認められる。
ウ 本件専属契約は、実演家である一審原告らと一審被告会社との間において、一審被告会社が一審原告らのマネージメントを行うことを目的として締結されたものであり、本件専属契約中の各条項は、当事者間で合意されたものとして特段の事情がない限り有効と考えらえるところである。しかしながら、前提事実及び前記のとおり、本件グループは、平成22年12月以降、シングルやアルバムを発売したり、単独ライブを開催したり、雑誌の表紙を飾るなど精力的な活動をしていたものであり、特に平成24年7月以降は一審原告ら4名ともが構成メンバーとして、長期間にわたり本件グループとしてバンド活動をすることにより実演家としての活動を行ってきたところ、本件条項は、本件専属契約の終了後において、上記のような一審原告らの実演家としての活動を広範に制約し、一審原告らが自ら習得した技能や経験を活用して活動することを禁止するものであって、一審原告らの職業選択の自由ないし営業の自由を制約するものである。そうすると、本件条項による制約に合理性がない場合には本件条項は公序良俗に反し無効と解すべきであり、合理性の有無については、本件条項を設けた目的、本件条項による保護される一審被告会社の利益、一審原告らの受ける不利益その他の状況を総合考慮して判断するのが相当である。
エ そこで検討するに、一審被告らは、本件条項について、先行投資回収のために設けたものであると主張しているところ、一審原告らの需要者(一審原告らのファン)に訴求するのは一審原告らの実演等であって、一審被告会社に所属する他の実演家の実演等ではないのであるから、本件条項により一審原告らの実演活動を制約したとしても、それによって一審被告会社に利益が生じて先行投資回収という目的が達成されるなどということはなく、本件条項による一審原告らの活動の制約と一審被告会社の先行投資回収には何ら関係がないというほかない。また、仮に、一審被告会社に先行投資回収の必要性があり、それに関して一審原告らが何らかの責任を負うような場合であったとしても、これについては一審原告らの実演活動等により生じる利益を分配するなどの方法による金銭的な解決が可能であるから、上記必要性は、本件専属契約終了後の一審原告らの活動を制約する理由となるものではない(加えて、本件専属契約の合意解約がされた令和元年7月13日までに、本件専属契約が締結された平成22年8月1日から約9年間、一審原告ら全員が本件グループに加入することとなった平成24年7月からでも約7年間が経過しており、また、本件専属契約も数回にわたり更新されてきたものであることからすると、本件においては、一審被告会社による先行投資の回収は当然に終了しているものと考えられるところである。)。
そうすると、その余の点につき検討するまでもなく、本件条項による制約には何ら合理性がないというほかないから、本件条項は公序良俗に違反し無効であると解するのが相当である。
オ したがって、前記(1)はその根拠とする本件条項が有効ではないから、事実であると認めることができない。
(3) 商標権及び本件グループ名について
ア 前記(1)の「本件グループ名について商標権又は排他的使用権を一審被告会社が有して」いるかについて検討する。
イ 一審被告らが、本件要請及び本件各通知当時、本件グループ名に係る商標権を有していなかったことについて、当事者間に争いがない。
ウ 次に、本件グループ名の排他的使用権の根拠としては、いわゆるパブリシティ権が考えられる。
人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解され、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる(最高裁平成24年2月2日第一小法廷判決)。そして、実演家団体に付されたグループ名についても、その構成員の集合体の識別情報として特定の各構成員を容易に想起し得るような場合には、芸名やペンネーム等と同様に、各構成員個人の人格権に基づき、グループ名に係るパブリシティ権を行使できると解される。
本件では、前記の本件グループの従前の活動状況等に照らすと、本件グループは一定の顧客吸引力を有すると認められるというべきであり、また、一審原告X1及び同X2は平成22年8月1日から、一審原告X3及び同X4は平成24年7月14日から、本件専属契約が終了する令和元年7月13日までの相当期間にわたり、本件グループの構成員として活動していたこと、本件グループの構成員が一審原告ら4名であることや一審原告らの肖像及び芸名は一般に広く公表されており、本件グループとしてライブ等に出演する際には一審原告ら4名ともが出演していたこと、本件グループとして雑誌等に掲載される際には一審原告らの写真や芸名が掲載されていたこと、その他前記の一審原告らの活動内容等に照らすと、本件グループ名は、その構成員である一審原告らの集合体の識別情報として、その構成員である一審原告らを容易に想起し得るものであったと推認される。
そうすると、一審原告らは、本件グループ名についてパブリシティ権を行使することができる。
ところで、パブリシティ権は人格権に基づく権利であって一審被告会社に譲渡できるとは考え難い上、本件契約書をみても、一審原告らが一審被告会社に対してパブリシティ権を譲渡する旨の記載はなく、また、本件専属契約終了後において、一審原告らによるパブリシティ権の行使を制限する根拠となるような記載もない。本件契約書5条は、「甲(一審被告会社)は、本契約期間中、広告・宣伝及び販売促進のため、乙(一審原告ら)の芸名、本名、写真、肖像、筆跡、経歴、音声等、その他の人格的権利を、甲の判断により自由に無償で利用開発することができる。」と規定するが、これは、一審原告らが、本件専属契約期間中、一審被告会社に対し、パブリシティ権を行使しないことを約束したものと解するのが相当であり、上記規定をもって、本件専属契約終了後のパブリシティ権の行使について何らかの合意がされているということはできない。また、本件契約書6条によって、人格権に由来するパブリシティ権の帰属を、一審被告会社に定めたなどということはできない。
そうすると、一審被告会社には、本件専属契約終了後、本件グループ名についてのパブリシティ権を行使する権原がないというべきである。また、本件契約書の記載やその他の事情を総合考慮しても、一審被告会社が、本件専属契約の終了後において、本件グループ名の排他的使用権を有すると認めることはできない。
エ なお、このことは、実演家人格権である氏名表示権(著作権法90条の2)についても同様であり、本件専属契約終了後において、一審被告会社に、一身専属権である実演家人格権としての氏名表示権、すなわち、本件グループの実演時に本件グループ名を表示するか否か等を決定する権利が帰属することはないから、一審被告会社は、本件グループ名について氏名表示権を行使することもできない。
オ したがって、一審被告会社は、本件グループ名について、商標権及びパブリシティ権、実演家人格権(氏名表示権)その他の排他的使用権を有していないから、前記(1)は事実ではないというほかない。
カ 一審被告らは、本件各通知において一審原告らが本件グループ名を使用することができないと記載したことについて、本件専属契約に違反する旨を告知したものであり、本件契約書6条により、一審原告らと一審被告会社との間で、本件グループ名について、商標登録がされていない場合であっても、商標法上の商標権と同様の排他的利用権を一審被告会社に認める合意をしたと主張する。
しかしながら、本件契約書6条は、「本契約期間中に制作された原盤及び原版等に係る乙(一審原告ら)の著作権上の一切の権利(省略)ならびに、乙に関する商標権、知的財産権、及び商品化権を含む一切の権利はすべて甲(一審被告会社)に帰属する。」というものであって、その文言及び本件専属契約が一審被告会社による一審原告らのマネージメントを目的とするものであることからして、本件専属契約期間中の一審被告会社によるマネージメントの便宜のために、同期間中に取得された著作権等の財産的権利について一審被告会社に帰属すると合意したものと認めるのが相当であるところ、同条において、本件専属契約終了後における本件グループ名に係る取決めは存在しない。
以上によると、本件契約書6条により、一審原告らと一審被告会社との間で、本件専属契約終了後における本件グループ名の使用について何らかの合意がされたということはできず、本件契約書のその余の記載をみても、一審原告らが、本件専属契約終了後に本件グループ名を使用することが、本件専属契約に違反すると認めることはできない。
そうすると、一審被告らの上記主張は採用できない。
(4) 本件写真について
前記(1)の「本件写真の著作権は一審被告会社に帰属する」について検討する。
証拠によると、訴外Cと○○Music代表一審原告X1との間で、令和4年9月28日に著作物使用許諾同意書が作成されたこと、同同意書は、訴外Cが、本件写真について著作権を有することを確認し、その使用を○○Musicに対して許諾することを内容とするものであることが認められる。そうすると、本件写真の著作権は訴外Cに帰属すると認めるのが相当であるから、前記(1)の「本件写真の著作権は一審被告会社に帰属する」は事実ではない。
なお、上記同意書は、本件各通知から約3年が経過した令和4年9月28日に作成されたものであるものの、その成立の真正自体には争いがないところ、本件訴訟で本件写真の著作権の帰属が問題となったことから、一審原告X1において、著作権の帰属を明らかにするために新たに作成したものと考えられ、その作成経緯や内容に不自然なところはなく、これによると、本件写真は訴外Cが撮影したものであって、訴外Cは、その著作権が自らに帰属していると認識しているものと認められる。そして、本件写真の著作権は撮影者である訴外Cに原始的に帰属するものであって、訴外Cから一審被告会社に譲渡しない限り一審被告会社に帰属することはないこと、一審被告らの認識においても、本件写真の帰属について、どのような内容でその撮影をしたカメラマンと契約していたのか明らかではないことを考慮すると、訴外Cの認識するとおり、本件写真の著作権は訴外Cに帰属すると認めるのが相当である。
(5) 本件各通知及び本件要請の不法行為該当性
ア 以上によると、前記(1)はいずれも事実ではないというほかない。
そうすると、前記のとおり、一審被告Y又は一審被告会社が、㋐商標権の問題があるなどとして本件要請をして、訴外Bに本件グループに係るニュース記事の掲載を取りやめさせたこと、㋑***に対して、本件グループ名及び本件写真を削除しないときは1日10万円の損害賠償請求をする旨通知したこと(本件通知3)、㋒***に対して、一審被告会社が本件グループ名に係る商標権を有しており、一審原告らは本件グループ名の使用やライブ活動をすることができない旨通知したこと(本件通知4)、㋓本件公演の開催を予定していたライブハウスに対し、一審被告会社が本件グループ名に係る商標権を有しており、一審原告らは本件グループ名の使用やライブ活動をすることができないことを伝え、本件公演に係る契約を解除するよう催告したこと(本件通知1)、㋔***その他の関係者に対し、商標が一審被告会社に帰属し、一審原告らはライブ活動や本件グループ名の使用ができないと通知したこと(本件通知2)、㋕***に対し、本件公演を実施することは本件専属契約に違反するものであって、***に対しても損害賠償を請求せざるを得ないと通知したこと(本件通知6)、㋖***に対し、本件公演を実施することは本件専属契約に違反し、本件グループ名は当事者間では一審被告会社に帰属するとして、本件公演のチケットの販売を中止するよう催告したこと(本件通知7)、㋗***を含む関係者らに対し、本件公演の実施に同調したライブハウスに損害賠償を請求すると通知したこと(本件通知8)は、いずれも、前記(1)の一部が事実であることを前提としたものであって、事実と異なる言動や記載により一審原告らの活動を妨げようとしたものというほかなく、これらにより、一審原告らの取引相手は、一審原告らと取引をすることについて躊躇し、委縮することとなったものと容易に推認され、一審原告らは、ライブの開催や出演を含む営業を円滑に進めることが困難となったものと認められる。そうすると、本件要請及び本件各通知は、実演家である一審原告らの活動を不当に妨害するものであって、一審原告らの営業権を侵害するものというべきである。
イ また、前記のとおり、本件通知5及び7には、一審原告らについて、「立場の悪くなりそうな申立ては突如取下げをし、さらには今回のツアーに限り出演名義を「A」とすると発表するなど、一般常識からは到底許されない行動を繰り返し、自分勝手なやり方を強引に押し通そうとしています。」との記載があり、同記載は、一審原告らが本件公演を実施することは、本件専属契約に違反する行為であるという事実を前提として、一審原告らの行為が「一般常識からは到底許されない行動」であり、「自分勝手なやり方を強引に押し通そう」とするものであると論評するものであるところ、これらの記載は一審原告らの社会的評価を下げ、業務上の信用を損なうものであって、一審原告らの名誉及び信用を毀損するものといえる。ところが、一審原告らが本件公演を実施することは本件専属契約に違反するものではなく、上記記載の前提となる事実は真実ではない。
ウ 加えて、本件各通知は、一審原告らが本件専属契約に違反している旨を通知するものであり、契約違反をしているとの事実を指摘することは、一審原告らの社会的評価を下げ、また、取引相手をして一審原告らとの取引を躊躇させ得るものであって、一審原告らの業務上の信用を損なうものであるから、本件各通知はいずれも、一審原告らの名誉及び信用を毀損するものである。
エ そして、音楽事務所である一審被告会社の代表者としてこれを経営する一審被告Yにおいては、本件条項を設けた目的と考え得る先行投資の回収と、一審原告らの実演を禁止することとの間に何ら因果関係がないことは明らかであって、本件条項が無効であることを認識し得たといえ、また、一審被告会社が本件グループ名に関する商標権を取得していないことを認識するとともに、本件グループ名についてのパブリシティ権等も一審被告会社に帰属しないものであり、さらに、本件写真の著作権も一審被告会社に帰属するものでないことを認識し、又は認識し得たといえる。
そうであるから、一審被告らには、本件要請及び本件通知1~4、6~8が真実でないこと、また、本件通知5及び7の前提となる事実が真実ではないことについて、少なくとも過失があるというべきである。
オ したがって、本件各通知及び本件要請は、一審原告らの営業権を侵害し、名誉及び信用を毀損するものであって、一審原告らに対する不法行為に当たると認めるのが相当である。
この点、一審被告らは、正当な権利行使であると信じており、本件却下決定を踏まえると過失がないと主張する。しかしながら、前記エのとおり、一審被告らは、本件条項が無効であることについて認識し得たということができるし、商標権を有しないことや本件写真の著作権を有しないことについても認識していたか、少なくとも容易に認識し得たのであるから、本件要請及び本件各通知について、一審被告らに過失があるのは明らかである。そして、本件却下決定は保全手続において疎明に基づいて判断されたものであるが、本件却下決定は抗告審において取り消されて一審原告らが本件グループ名を使用することの妨害の禁止が命じられているところ、保全手続が疎明に基づいて仮の処分をするものであることに照らすと、一審被告らが、本件却下処分を信用したことをもって、同人らに過失がないということはできない。
カ そして、一審被告Yは、一審被告会社代表者として、本件各通知を自ら又は代理人弁護士を通じて送付、送信し、又は自ら本件要請をしたものであるから、一審被告らは、連帯して、上記不法行為について責任を負うと認めるのが相当である。

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