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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害とみなす行為▶法1131項の意義と解釈

[1号関係]
▶平成30531日東京地方裁判所[平成28()20852]
前記前提事実によれば,被告は,原告らに無断で,韓国において,原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声をその映像とともに複製して,被告商品を製造し,日本国内で頒布する目的で輸入し,これを販売している。原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声を複製することは本件著作物(台詞原稿)を複製するものであるところ,被告は,国内において頒布する目的をもって,輸入の時において国内で作成したとしたならば複製権侵害となるべき行為によって作成された物である被告商品を輸入しているため,上記輸入行為は原告らの著作権を侵害する行為とみなされる(著作権法113条1項1号)。また,被告商品を国内で販売する行為は原告らの譲渡権(同法26条の2)を侵害する。 よって,被告は,本件被告行為により原告らの著作権を侵害しているものと認められる。

令和498日東京地方裁判所[令和3()3201]▶令和5420日知的財産高等裁判所[令和4()10115]
本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否について
(1) 前記認定のとおり、本件CDは、外国で製作され、VGM社名義で日本国内に輸入されて、日本国内に所在するAmazonの物流拠点に送付されたものである。また、本件輸入行為の前提となる本件録音・複製行為のうち、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は、日本国内で行われていたとしたならば、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権。法28条、21条)を侵害するものである。
したがって、本件CDは、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作権の侵害となるべき行為により作成された物といえることから、本件CDを輸入した本件輸入行為は、原告の著作権を侵害するものとみなされる(法11311号)。
(2) これに対し、被告らは、VGM社が外国で製作された本件CDを日本に送付する行為は輸出であって「輸入」ではない旨や、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は、【そもそも日本の著作権法及び司法権の管轄にない】旨を主張する。
しかし、前記のとおり、本件輸入行為は、【控訴人ら自身の行為に含めて評価するのが相当なもの】であり、また、外国で【製作】された本件CD を日本国内で頒布する目的をもって行ったものである。そうである以上、本件輸入行為をもって本件CDの「輸入」(法11311号)に当たるものと見るのが相当である。また、【ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は日本の司法権の管轄にないとの控訴人らの主張が、国際裁判管轄についていうものであるとすると、そもそも本件訴えでは応訴管轄が認められるとともに、控訴人Yは国内に住所があり、控訴人会社はその主たる事務所又は営業所が国内にある上、後記のとおり、控訴人らによる本件編曲行為、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為は控訴人らによって実行された相互に関連した一連の行為であって国内において本件譲渡・配信行為の結果が発生しているものであるところ、本件訴えは、これらの行為につき、不法行為に基づく損害賠償請求をするともに、違法行為により権利利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあることを理由とする差止及び廃棄請求であることからして、我が国の裁判所に裁判権が認められる(民訴法3条の2第1項、2項、3条の3第8号)。さらに、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は我が国の著作権法の管轄にないとの控訴人らの主張が、準拠法についていうものであるとすると、上記のとおり、控訴人らによる本件編曲行為、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為は控訴人らによって実行された相互に関連した一連の行為であって国内において本件譲渡・配信行為の結果が発生しているものであって、我が国よりも明らかに密接な関係がある他の地があるともいえないことに照らすと、我が国の著作権法が適用されるものである(法の適用に関する通則法17条、20条)。】
その他被告らが縷々主張する事情を考慮しても、この点に関する被告らの主張は採用できない。
[控訴審同旨]

[2号関係]
▶平成120523日東京高等裁判所[平成11()5631]
著作権法11312号は、著作権侵害行為、著作者人格権侵害の行為や著作権法60条の規定に違反する行為によって作成された物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者を全部権利侵害とすることには問題があるために、その場合に限って「情を知って」との要件を付加しているものと解すべきであり、控訴人らは、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版した当の本人であって、物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者ではないから、控訴人らの行為は、同法11312号にいう「頒布」の問題として扱われるべき事柄ではないというべきである。
控訴人らは、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版行為をすること自体が許されなかったのであるから、右違法な行為によって自らが作成した物を自ら頒布することもまた許されないことは、むしろ自明である。すなわち、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版したうえで頒布するという控訴人らの一連の行為全体が、全部であれ一部であれ、複製権を侵害する行為及び著作権法60条の規定に違反する行為に該当するというべきである。

▶平成130621日東京高等裁判所[平成12()750]
著作権法11312号は、著作者人格権侵害の行為等によって作成された物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する行為を全部権利侵害とすることには問題があるために、その場合に限って「情を知って」との要件を付加しているものと解すべきであり、被控訴人会社は、被控訴人写真を(本件)カタログに掲載して発行した当の本人であって、物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者ではないから、被控訴人会社の行為は、同法11312号にいう「頒布」の問題として扱われるべき事柄ではないというべきである。被控訴人会社は、被控訴人写真を(本件)カタログに掲載して発行すること自体が許されなかったのであるから、その違法な行為によって自らが作成した物を自ら頒布することもまた許されないことは、むしろ自明である。すなわち、被控訴人写真を被控訴人カタログに掲載して発行及び頒布するという控訴人会社の一連の行為全体が、全部であれ一部であれ、同一性保持権侵害の行為に該当するというべきである。

平成150718日東京高等裁判所[平成14()3136]
控訴人学院は,遅くとも,一審判決正本が送達された平成144月中旬ころまでには,本件書籍が本件複製権を侵害する行為によって作成された物であることを知ったから,これを販売,頒布する行為は,本件著作物の複製物の知情頒布行為として本件著作権を侵害する行為とみなされる。控訴人らは,本件訴訟において本件著作権の侵害が争われている以上,判決確定前に一審判決正本の送達により著作権法11312号所定の「情を知って」の要件が充足されるものではないと主張するが,本件書籍の印刷,出版が本件複製権の侵害に当たるとする一審判決が送達されれば,遅くともそのころまでには,控訴人学院について「情を知って」の要件が充足されたと認められる。

▶平成200730日知的財産高等裁判所[平成19()10082]
控訴人による頒布の差止めについては,著作権法11312号の適用があるとしても,遅くとも控訴人に対し原判決書が送達されたことにより同号の「情を知つて」の要件を満たすことになると認められるので,被控訴人は,著作権法11312号,1121項に基づいて,その頒布の差止めを求めることができる。

▶平成220804日知的財産高等裁判所[平成22()10033]
著作権法11312号の「情を知って」とは,取引の安全を確保する必要から主観的要件が設けられた趣旨や同号違反には刑事罰が科せられること(最高裁平成744日第三小法廷決定参照)を考慮すると,単に侵害の警告を受けているとか侵害を理由とする訴えが提起されたとの事情を知るだけでは,これを肯定するに足らず,少なくとも,仮処分,判決等の公権的判断において,著作権を侵害する行為によって作成された物であることが示されたことを認識する必要があると解される(。)

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