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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

プログラム著作物▶プログラム著作物性一般

▶平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]
小説,絵画,音楽などといった従来型の典型的な著作物と異なり,プログラムの場合は,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法21102)であって,元来,コンピュータに対する指令の組合せであり,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,プログラムの著作物に対する法による保護は,「その著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約及び解法に及ばない。」(法103項柱書1文)ところから,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどといったところに,法によって保護されるべき作成者の個性が表れることとなる。したがって,プログラムに著作物性があるといえるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するものであって,プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地もなくなり,著作物性を有しないことになる。そして,プログラムの指令の手順自体は,アイデアにすぎないし,プログラムにおけるアルゴリズムは,「解法」に当たり,いずれもプログラムの著作権の対象として保護されるものではない。

平成26827日知的財産高等裁判所[平成25()10085]
プログラムの表現物についてみると,プログラムとは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」であること(著作権法2条1項10号の2)に鑑みれば,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ及び表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れていることを要するものと解される。

平成28427日 知的財産高等裁判所[平成26()10059]
プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,プログラムの具体的記述が,表現上制約があるために誰が作成してもほぼ同一になるもの,ごく短いもの又はありふれたものである場合においては,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。他方,指令の表現,指令の組合せ,指令の順序からなるプログラム全体に,他の表現を選択することができる余地があり,作成者の何らかの個性が表現された場合においては,創作性が認められるべきである。

▶令和21028日知的財産高等裁判所[令和1()10071]
著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プログラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であると解される。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れていることが必要であると解される。

平成29629日東京地方裁判所[平成28()36924]
著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものは,著作権法による保護は及ばない。
プログラムは「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同項10号の2)である。著作権法は,プログラムの機能やアイデアを保護するものではなく,その具体的表現を保護するものであるところ,プログラムにおいては,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピューターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて作成者の個性が表れることになる。
したがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることが認められる必要がある。
原告は,本件プログラムは,画像処理に基づく表示機能や処理機能,通信機能などの各種機能を備えていること,性質の異なる2種類の機能を同時に備えるという特徴や開発効率及びメンテナンス性の向上などの特徴があることを挙げて,本件プログラムには創作性があると主張する。
しかし,著作権法はプログラムの機能そのものを保護するものではないから,本件プログラムの機能についての原告の主張は,本件プログラムが著作物性を有することの根拠となるものではない。また,本件プログラムの特徴についての主張も,それらの特徴に係るコンピューターに対する指令について,上記の選択の幅等やそれがありふれた表現でないことを主張するものではなく,本件プログラムが著作物性を有することの根拠に直ちになるものではない。なお,原告は,本件プログラムの創作性に関し,本件プログラムの構成や本件プログラムに用いられている理論に関する証拠を提出しているが,これらも本件プログラムの構成や内容に関するアイデアを記載したものであり,コンピューターに対する指令の表現に創作性があることを立証するに足りるものではない。
また,原告は,本件プログラムには,①クラス,関数,変数などは全て小文字を使用すること,②クラスメンバ変数名の先頭には「_(アンダースコア)」を付することなど,表現上の特徴があると主張するが,これらの表記方法は,関数その他の指令単体の表現の特徴であって,その組合せに係る表現の特徴ではない上,いずれもありふれた表現ということができるから,本件プログラムに著作物性があるということはできない。
本件においては,本件プログラムの著作物性の有無が争点となり,原告は,本件プログラムの著作物性につき主張立証の機会を与えられていたにもかかわらず,上記のとおり主張立証するほかは,本件ソースコードを証拠として提出し,また,本件プログラムの処理の内容を述べたのみであり,本件ソースコードの具体的な表現につき,その表現自体や表現の組合せ,表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを主張立証しなかった。 したがって,本件プログラムが著作権法により保護される著作物であると認めることはできず,その余を判断するまでもなく,著作権侵害についての原告の主張は採用することができない。

▶平成150131日東京地方裁判所[平成13()17306]
プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。仮に,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又は極くありふれたものである場合においても,これを著作権法上の保護の対象になるとすると,電子計算機の広範な利用等を妨げ,社会生活や経済活動に多大の支障を来す結果となる。また,著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が,極くありふれたものである場合に,これを保護の対象になるとすると,結果的には,機能やアイデアそのものを保護,独占させることになる。したがって,電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が,このような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。

令和元年521日大阪地方裁判所[平成28()11067]
プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピューターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組合せ,どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者の個性が表れることになる。
したがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成24年1月25日判決)。

平成241218日東京地方裁判所[平成24()5771]
プログラムにおいて,コンピュータ(電子計算機)にどのような処理をさせ,どのような機能を持たせるかなどの工夫それ自体は,アイデアであって,著作権法による保護が及ぶことはなく,また,プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であるが,プログラムは,その性質上,プログラム言語,規約及び解法による表現の手段の制約を受け,かつ,コンピュータ(電子計算機)を効率的に機能させようとすると,指令の組合せの具体的記述における表現は事実上類似せざるを得ない面があることからすると,プログラムの作成者の個性を発揮し得る選択の幅には自ずと制約があるものといわざるを得ない。

平成220428日東京地方裁判所[平成18()24088]
プログラム言語においてはその命令数が限定され,自ら命令語を作出する余地はなく,文法においても厳密に定義されたものに機械的に従うほかないこと,そして,プログラムが機能的な表現であって,だれがその作成に当たっても効率性という方向に必然的に向かうことなどにかんがみれば,プログラムの表現には自ずと一定範囲の常識的な実用的慣用的表現というものが生じるのであり,その部分はありふれたものとして独占を許すべきではないから,プログラムの創作に当たっての表現の選択とは,上記の要請からくるありふれた表現の範囲があることを考慮して判断すべきものである。

平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]
プログラムの表現は,所定のプログラム言語,規約及び解法による制約がある上に,その個性を表現できる範囲は,コンピュータに対する指令の表現方法,その指令の表現の組合せ及び表現順序というように,制約の多いものである。したがって,あるプログラムの著作物について,OSやプログラム言語を異なるものに変換したからといって,直ちに創作性があるということはできず,OSや言語を変換することにより,新たな創作性が付加されたか否かを判断すべきである。

▶昭和620130日東京地方裁判所[昭和57()14001]
本件著作物は、ベーシツク言語によつて、本件パソコンに入力された命令またはプログラムを逐語的に処理して、命令を入力した者が意図した結果を出力するように、プログラムの構成、ルーチン、サブルーチンの活用、組合わせに至るまで、プログラム言語に関する高度な専門的知識を駆使して作製されており、プログラム作製者の学術的思想が表現されたものであることが明らかであり、したがつて、学術の範囲に属する著作物に当たるということができる。 []本件は、著作権法に「プログラムの著作物」が明記される以前のものである。

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